「ごめん!僕は君たちを騙すつもりだったんだ!」
そう言って宿の一室で土下座するコペル君を見て、僕と同じく微妙な顔をするキリト君と顔を見合わせた。
僕の後に入ったキリト君が出て来た後、僕たちは取り敢えず、そのままホルンカに宿を求めた…キリト君、コペル君…共にここで宿を取った事は無いらしく、最悪野宿を覚悟していたものの…幸い一軒見つかり、取り敢えず金に余裕も無いけど僕ら三人共それぞれ別の部屋に泊まる事にし、部屋が決まったところでコペル君が待ったをかけ、そこでようやく彼から時間が欲しいと言われていた事を思い出したのだった…
そして三人でキリト君の部屋に入ってすぐこういう展開になった…
頭を床に着けたまま一向に上げようとしないコペル君に溜め息を吐きたくなりながらも、小声でキリト君に話しかける…
『どうしようか?』
『…そう言われてもな…そもそも俺たちはそうだろうな、と思って話を受けたんだし…結果的に何も無かった訳だし…良いんじゃないか?俺は許す、と言うか許すも何も無い気はするけどな…』
正直僕も同意見だ…さてと。
『……声、かけないのかい?多分このままだと彼…ずっとこのままだよ?』
『……あんたに任せるよ。正直俺はこういうシチュエーションはちょっと…』
……まぁ…良い、か。と言うかこのままだと僕も休めないし…彼の中でどんな心境の変化があったのかは分からないけど…このまま頭を下げさせたままと言うのは仮想の世界である事を差し引いてもさすがに可哀想だろう…これが嘘だとも思えないしね。
「…顔を上げてくれないかい?」
僕がそう言い、コペル君が顔を上げるとそこには涙でグチャグチャになった顔があった…あー…うん…これが話に聞く、感情が表に出やすいと言うこの世界の弊害なのかな?彼、普段は多分ここまで酷くならないだろうし…僕は正直少し引きながらも、言葉を続ける事にした。
「君は反省したんだろ?なら、僕たちは良いよ…と言うか一つ良いかな?」
「え…?」
「実を言うとね、僕たちは君が初めからそう言うつもりだったんじゃないかと気付いていたんだ。その上で話を受けたんだよ…君だってそれは分かってたんじゃないかな?かなり露骨に警戒していたと思うしね…」
「それは…うん、確かに…」
「でも結局君は何もしなかった…しようと思えば出来たのに、だ…」
「!…でもそれは…!」
「分かってるよ。僕たちは君が先に目的の物を手に入れられる様にしたんだ…でもだからって別に裏切らなくても良いって事にはならないよね?だってただでさえ手に入れるのに手間のかかるリトルネペントの胚珠だ…でも、何せこれが一つあるだけで強力な武器が手に入るんだ…コルをいくら積んでも程欲しい奴は多い筈さ。つまり君は胚珠を手にした僕たち二人を殺す理由があったんだ…でも君は何もしなかった…」
そこで言葉を切り、僕の事を目を丸くして見詰めるコペル君に苦笑を浮かべながら更に言葉を紡ぐ…
「だからさ、良いんじゃないかな?君は何もしなかった…君は僕たちと共に自分の胚珠を手にした…それで良いんじゃないか?」
「でっ、でもそれだと…!」
「君はただ僕たちに手を貸しただけ。それ以外は何もしなかった…と言うかそもそも考えもしなかった…そう言う事さ。」
「そんな…それじゃあ僕は…」
「ありがとう、コペル君…本当に君のお陰で助かったよ。いやぁ…何せ二人だけだと何時終わるか分からなかったからねぇ…ねぇ?キリト君?」
「ん?…ああ、そうだな…正直かなり助かった。ありがとな、コペル。」
その後僕は見た目よりずっと幼い子供の様に泣きじゃくるコペル君を宥め、部屋に帰した。
「なぁ?さっきのは何だよ?急に話振って来て…」
「ん?だってもう一人の被害者である君が一言も発しないんじゃ彼が不安になるじゃないか。」
「……意趣返し、とかじゃなくてか?」
「まさか。僕はそんなに心の狭い人間じゃないよ。」
ただ、人に面倒な事させるなら少し手伝って欲しいと思っただけさ…
「しかし…あんたえげつないな?」
「ん?何がだい?」
「何がって…よっぽど不義理な奴じゃない限りああ言う言い方したら逆に許されたとは思わないだろ?」
「自分で自分を責め続けるのが結局一番辛い罰さ。叱られたいなら一人で勝手にやれば良い…僕の知った事じゃない。大体、この方が僕たちの溜飲も少しは下がるじゃないか。」
「……ま、騙されかけたのも事実だから俺はもう何も言わないけどさ…」