「…あら、アルベリヒさんじゃないですか?今日は早いんですね。」
宿屋に入ればすっかりお馴染みになってしまった少女の顔…やれやれ…
「…何時帰るかなんて、僕らの自由だと思うけど?大体、君だって今ここにいるじゃないか?」
「ええ、そうですね…」
「ほら、アルベリヒ…部屋に入ろうぜ。俺はクタクタなんだ…」
「ああ、そうだね…じゃあ、アスナ君…また…」
「……」
取り敢えずキリト君の部屋に入り、ベッドに腰掛ける…
「ふぅ…」
モヤモヤした物を吐き出す様に息を吐けば、しかめっ面をしたキリト君から小言が飛んで来る。
「溜め息吐きたいのはこっちだ…何であんたら、顔合わす度に険悪になるんだよ…」
「…そう言われてもね、毎回突っかかって来るのは彼女の方だよ?彼女に言って欲しいね…」
「…もうあんたがいない時に何度も言ってるよ…聞いてくれた試しが無いけどな…」
……彼女との出会いは迷宮区の中…その日はたまたまキリト君とは別行動だった…後ろ姿だけだったけど、まだ初心者の域を出ない僕の目から見ても余りにも危なっかしい感じだったから…正直面倒ではあったけど…最低限、様子を見るかと思って後をつけた…全く…僕も面倒見が良くなった物だね…最も積極的に助ける気は最初は無かったんだけど…
ある程度まで進んで、襲って来たモンスターを片付けたところで…彼女はいきなり、うつ伏せで倒れた…それこそ今の様に溜め息を吐きながら彼女を起こしたところで…正直、心臓が止まるかと思った…
「…前にもチラッと聞いたけど、リアルでの知り合いだって? 」
「まぁね…最も、その時も一方的に嫌われていたんだけどね…」
彼女の両親から紹介された…しかし…歳も離れてる僕との結婚の画策とは…余りにも馬鹿げてるとしか思えない…お陰で彼女からは理不尽過ぎるやっかみを向けられた…はっきり言って僕は全く乗り気じゃなかったんだけどね…お金目的扱いなのもかなりムカついたし…
「…見捨てるのも目覚めが悪いからね…仕方無く宿まで引っ張って来たんだ…」
「…で、散々詰られたんだよな?」
「本気で、助けない方が良かったと思うくらいにはね…」
開口一番、『何で助けたんですか…本当に余計な事をしてくれましたね』……そりゃもうキレた。リアルでのやり取りの事もあったけど、この世界に来てから僕も鬱憤が溜まっていたらしく、色々普段なら言わない様な事も言った。……よりにもよって宿の入口で。…僕と同じく攻略に出ていて、ちょうど戻って来たキリト君が仲裁に入らなかったら僕は何時までも文句を言い続けていたと思う…
「あのさ…何度も言ったけど、リアルで面識があるならもうちょい慎重になるべきだ…あんた自分の立場を認識してないのか?」
「……あの時の事ならちゃんと反省はしているよ…大体、僕はちゃんと謝ったよ?何時までも僕を目の敵にしている彼女の方が問題だと思うけど?」
「だからさ…あんた全然謝ってる様に見えないんだって…そうでなくても相性悪いのはあのやり取りだけで良く分かったけどさ…」
「自覚はあるよ…正直、茅場晶彦に会って、それからこの世界で君と会わなければ多分…彼女以上に僕は荒れていただろう…分かるんだよ、彼女は昔の僕と同じくらいプライドが高い。」
「…あいつと合わないのは同族嫌悪の類だったりするのか?」
「的を射てるね、多分そうだと思うよ…」
「…ま、あんたの方が歳上どころか大人なんだからもうちょい緩く構えてろよ…一々あいつの突っかかりに反応するな、あんたが毎回反応するから言い争いになるんだろ?今日だって俺がいなかったらそうなってたんじゃないのか?」
「……分かっているよ。」