「何故あんな提案をしたんだい?」
早歩きで姿が見えなくなったとは言え、万が一また遭遇するなんて気まずい事にならない様にキリト君とゆっくり歩きつつ、そう聞いてみた。
「…そう不機嫌そうな顔しないでくれよ、確かにどっちかって言うと俺の為だけどさ。」
「……君の為?」
「ああ…と、先ずはこいつらを片付けてからにしようか。」
僕たちを囲む様にmobが数体出現する。…やれやれ…もう少し空気を読んで欲しいものだね…
そう考えながら僕は向かって来たmob…槍を持ったコボルドの顎を蹴り上げた…
「…で、何で彼女をパーティに誘う事が君の為になるんだい?」
しつこいコボルドたちを何とか退け、安全地帯に辿り着いた所で僕はそうキリト君に聞いた。
「ん?ああ…あのさぁ、先ず聞きたいんだけど…あんたらが顔を合わせる度に俺がどういう気分だったか…分かるか?」
「……うん、不快な気持ちにさせてすまないね…」
何だかんだ僕と良く一緒にいるキリト君は仮に彼女自身にその気が無いとしても、彼自身も間接的に彼女に罵声を浴びせられてたり嫌味を言われてる様な物だからね…
「正直、こればっかりはここが仮想の世界で良かったと思ってるよ…多分、リアルだったら確実に胃に穴が開いてる。」
「いや…本当にすまない…」
…と言っても別に僕が悪いわけじゃない…会う度に僕に突っかかって来てる彼女が全部悪い…とも、言えないか…彼女のやっかみに時折年甲斐も無くキレて言い返してしまう僕にも問題は有るのだろう…仲裁してるのも彼だしね…
「本当は僕も分かってるんだ…一々彼女の挑発に乗るのが良くない、と言うのはね…」
彼女自身、こんな状況で色々抱えてる物は有るのだろう…彼女は多分、僕に当たる事で自分の問題に向き合わずに済むようにしている…
「毎回毎回…俺の前で不毛な言い争いされるとはっきり言って挟まれる形になるこっちがもたない。パーティ組んで一日過ごせば少しは状況も変わるかと思ったんだよ。…もちろん、あいつの腕を当てにしてるのも本当だけどな。」
「……でも、あの通り彼女は頑なだからね…僕は初めから彼女が断るだろうと踏んでいたよ。」
まぁ…元々そうしてくれた方が僕も気が楽なのは確かだ…とは言え、不思議なのは…彼女と僕はあの最悪の出会い以外接点は無いも同然。僕の正体に気付いてるって事はさすがに無いと思うんだけど…何故ああまで僕は彼女に嫌われているのか…
「マジで不思議なんだよなぁ…アスナは正体に気付いて無いんだろ?あんた何であんなに嫌われているんだよ?あんた最初に会った時、本当に何を言ったんだ…?」
……心を読んだって訳じゃないんだろうけど、ちょうど僕の疑問に被せる様にキリト君がそう聞いて来る…
「そう言われてもね、前も言った通り…あの時僕はかなり本気で怒っていたからね…正直何を言ったのか良く覚えていないんだ…」
「……あんたが開発メンバーに嫌われてたのって…実は茅場晶彦の小間使いやってたせいだけじゃないんじゃないか?」
「…どうだろうね、顔合わせた初日から険悪だった気がするんだけど…」
思い出すと本当にムカついて来る…彼らは初めから僕を受け入れる気は明らかに無かった…最も、売り言葉に買い言葉って感じで彼らの嫌味や直接的な嫌がらせに色々言ったかも知れないけどね……実際、僕は覚えてないけど。