「アルベリヒ。」
……ん?
「…何だい?」
「…あんた、今自分のプレイヤーネーム忘れてなかったか…?」
「…それは君にも原因が有ると思うけどね…」
前からそうだけども…最近は彼には特にあんた、とか呼ばれる事が多いから一瞬反応出来無かった……ま、このゲームでの知り合いは今の所、キリト君とアスナ君しかいないけどね…
「それは…まぁ、悪かったと思うけどな…」
「…ふぅ。良いよ…で、何だい?」
「いや時間。全然見てないだろ?そろそろ日が暮れる…今日は帰ろうぜ?」
「…夜になるとmobも凶暴化するしね、分かったよ。」
野生の本能を表現したのか知らないが、夜はmobが本当に強い…最初はキリト君を付き合わせる形で、無理な攻略してた事もあったけど…あのトラップ部屋に閉じ込められた時に本当に懲りた…正直、あの強さだとこの場で囲まれたら今度は生き残れるか分からないからね…
そして道中…
「アスナ、まだいたりしてな…」
「さすがにそれは無いと思うよ?別に寝心地が良いって訳でも無いし…」
彼女にとって息が詰まる事もあった様だが、リアルでは割と裕福な生活していた彼女が、仮に疲労が溜まっていたとしても野宿で爆睡し続ける事も無いだろう…
そう…思っていたんだけど…
「……キリト君…君は…予知能力でも有るのかい…?」
「……いや…生まれてこの方…そんな能力が有ると思った事は無いな…」
来た道を引き返し、安全地帯に差し掛かった僕たちの目の前に非常にデジャブ感の有る光景が…
「…結構…アウトドア派だったりするのか…?」
「いや…多分彼女、キャンプの経験すら無いと思うよ…典型的なお嬢様育ちだから…」
「……それもリアル事情だな…?一応聞かなかった事にしとく。」
二人でそう言いながら近付くが、残念ながら幻覚とかでは無いらしい…いや…二人揃って見えてる時点でその確率も低かったけど…やっぱり彼女は…静かな寝息を立てて今も爆睡中だった…
「……どうするんだ?」
「ハァ…分かったよ、このまま僕が街まで運ぶ。」
結局今日は二度も多大な迷惑をかけてくれたよ…最初に運んだせいで時間も無駄にしたし…
「それにしても、良くトラブルに巻き込まれなかったね…」
彼女を背負って歩きながらふと頭に浮かんだ疑問を口にする…
「…誰も入り口からそう遠くないここを通ってない訳も無いだろうしな…多分、あんたが置いて行ったポーションのお陰じゃないか?」
「あんな安物一本でトラブルを避けられたと…?」
「安物って言うけど…ピンチならあんな物でも欲しいって事は有るだろ。たかが安物でも…結局ポーション切らしてりゃ回復出来無いんだしな…」
「…何と言うか、君たちゲーマーの考えって良く分からないよ…」
「…一応聞くけど…それっていっそ襲われてくれた方が良かったって意味か…?」
「…彼女には良い薬だよ…最も、実際にそうなったら多分生きてても心折れて…攻略の役には本当に立たなくなるだろうけどね…」
ただ…それでくたばってたらそれはそれで良い…とは、ちょっと思う…僕が彼女を嫌いな事は結局これから先も多分変わらないだろうし、彼女が僕に歩み寄るなんて事もまた無いだろうから。