結局アスナ君は街の入り口を過ぎ、宿屋の前まで行っても起きて来なかった…
「…別に、宿屋の代金二人分くらいは払えなくは無いけど…」
「コルの無駄だろ…」
アスナ君は今現在も爆睡中…中から鍵をかけるのは不可能…
「…このまま出てって、放置したら不味いかな?」
「いや不味いだろ…他のプレイヤーにも今日のあんたの姿見られてるんだぞ…俺たちと同じくこの街を拠点にしている奴だって相当数いる…もっと言えば、あんたらが良く言い争いしてるせいで顔見知りなのも知ってる…放置して何か起きた場合、正体バレるまでも無くあんたの評判最悪だぞ…」
「しかし…眠ったままの少女を部屋に連れ込んだと言うのも…」
「それこそ今更だ…さっきも言った通り、アスナを背負うあんたの姿はもう他のプレイヤーに見られてるんだ…本当に何か起きた場合…最悪、あんたがアスナを殺したって疑われる…」
「……やっぱり僕が中で様子を見るしか無いと…?」
「……夜中か、明け方くらいまでにはアスナも起きるだろ、その時…こっそり出て行けば良い。」
「……やっぱりそれしか無いか…分かったよ。」
「じゃ、悪いけど俺は先に休むからな。」
そう言ってキリト君が部屋を出て行く…やれやれ…せめて徹夜にならない事を祈ろう…正直今日も疲れてるけど…仕方無い…最も、こんな事するのは本当に今日が最初で最後にしたいけどね…
……全く。彼女はこんな世界に来ても僕に迷惑をかけてくれる…ま、彼女はまた余計な事をしただの、何だの言い始めるんだろうけどね…
「っ!?」
僕は顔を上げた…どうも何時の間にか寝ていたらしい…一つしか無いベッドの上に目を向ければ…
「未だお休み中か…本当に良いご身分だよ…」
アレから数時間経った様だが、彼女は未だに寝ている…彼女はまだ十代の少女だし、この世界に来て色々あった事だけを考えるなら多少は同情しなくも無い…ただ…
「普段からこう大人しいなら僕もここまで嫌わないんだけどね…」
リアルでは会う度に只管に見当違いな罵倒…何処までも世間知らずのお嬢様はこんな仮想世界くんだりまでやって来ても、僕に相当溜まっているのだろう鬱憤を晴らす為の八つ当たり…
正直大人を舐めるのもそろそろいい加減にして貰いたい…本人自覚は無いだろうし、認めないだろうけど…彼女は何処までもワガママなお嬢様でしか無い。
「もう夜も明ける筈だ…護衛の任も果たしたって事で良いだろう…残念だけど僕はキリト君の様にお人好しって訳じゃないから。」
部屋のドアを開け、廊下に出る…そのまま階段を降りて下に来てみれば…NPCはいる様だけどプレイヤーはいないようだった。
「何処かでもう少し睡眠を取るかな…」
僕は宿屋のドアを開け、外に出る事にした。