宿屋内にプレイヤーはいなかった…しかし、街中に出てしまえば意外にもプレイヤーが数人固まっていた。まだ暗い今、何処へ行くのかと思っていたら彼らはやがて会話を切り上げ街の出口に向かって歩いて行く…
……どうやらフィールドに出る様だ…プレイヤーの一人と目が合いそうになり、反射的に何故か隠れてしまった僕は物陰から出る…プレイヤーたちの背中は遠くなって来ているが、今ならまだ追おうと思えば追える距離だ…
このまま近付いて声をかけて、今フィールドに出るのは止めた方が良いと忠告するなら今なら出来る……そこまで考えた所でふと気付く…
「何で僕がそんな事しなきゃならないんだ…?」
トラップに引っかかったあの男を助けたのはあくまで恩の有るキリト君に付き合っただけで…今回僕にそんな事をする理由は特には無い…ま、顔は知っている程度の面子では有る…会話した事は特に無いけど…
そんな事を考えてる内にそろそろ追い付くのは難しいくらいにまで彼らとの距離が離れている事に気付いた…
「ハァ…」
結局僕はその背中が見えなくなる直前で走り出した…進んで人助けなんてする程お人好しじゃない…でも、見て見ぬ振りも出来無かった…キリト君と同年代、良くても少し上くらいの歳の彼らをただ放っておいて眠るのは…何となく嫌な気分だった…と、自分への言い訳もそこそこに僕は走るスピードを上げて行った…
「何処だ…?」
フィールドに出たものの彼らの姿はもう無い…動き出すまでが遅かったし、向こうの敏捷が高いならもう近くには居ないだろう…僕は敏捷にはあまり数値を割り振ってはいない事だし…あ…
「…今はあまり相手する気分じゃないんだけどね。」
間の悪い事に僕の周りを囲む様にフィールドに光が満ちて行く…やれやれ…さっさと…片付け…
「…コレは…合流は無理かな…」
そこに居たのはフレンジーボアとコボルトの群れ…この世界に来てから何度か一人でフィールド、迷宮区に出入りする事も多くなりもう慣れて来たかな …何てやさきにコレだ…夜の攻略は危険度が上がる事は身に染みて分かっていたものの、コレはさすがに無い…
「人の事を言えないな、全く…」
他人を気にしてこっちが危機に陥るなんて…慣れない事をするもんじゃないな…本当に。向かって来た猪をすり抜ける様にして躱し、同時に切り裂く…痛みに反応したのか猪は雄叫びを上げるが、ソードスキルは使っていない…大したダメージでは無いだろう…
「コレは本当に不味いかな…?」
この頭数をそのまま相手にしたら、せっかくのアニールブレードがもたない…予備の剣を出す時間が…いや。
「武器なら…有るじゃないか。」
突き出されたコボルトの槍を身体をずらして躱し、掴んで力を込めて引っ張る…向こうも取られまいと必死な形相で力を入れ始めたのが分かったが僕はそこで力を抜いた。
「ギイッ!?」
獣地味てはいるが明らかに驚いた様な声を発してコボルトが後ろに倒れ込む…僕はそいつに近付くと腹を踏み付け、槍を掴み…両腕を切り落とした…
「ガアッ!?」
「…耳障りだな、とにかくこいつは借りるよ?」
mobが死んだ場合…持っていた武器等はドロップ品に含まれていない限り、そいつが死ねば消えてしまう…最も殺す前に奪ってしまえば…その限りでは無い筈だ。
…とは言え…
「!…おっと。」
別のコボルトが突き出した槍を片手に持った槍で何とか弾き、後ろに下がる…どうやら装備を切り替える暇は無そうだね…僕はアニールブレードをキリト君の真似をして背中に着けていた鞘にしまった。
「…ふぅ。正直槍なんて、剣以上に自信が無いんだけど…やるしかないか。」
しつこくぶら下がるコボルトの手を槍から外しながら思う…作りも粗末でどう見てもすぐに壊れそうなそれは…不思議と今はとてつもなく頼りになる気がした…