結局その後はアスナ君はさっさと攻略に向かい(一人で行かせる形にはなったが…正直もう彼女のお守りをしたいとは思わない。仮に一人で行って彼女が死ぬなら、それはもう自業自得と言う奴だろう…)
コペル君は宿の一室に入って行った(これからどうするか、ゆっくり考えたいそうだ)
……そして、僕とキリト君はと言えば…
「…アレがあんたが気にしてた奴らか?」
「ああ、そうだよ。」
例の一団が帰って来るのをこうして待ち伏せしていた。
「確かに…何処となく危なかっしい感じがするな…」
「君もそう思うのかい?」
「…一人を除いて、心底この世界をゲームとして楽しんでるってのが見た感じ伝わって来る。夜中に出てってこうして戻って来るんだから実力は有るんだろうけど…ハッキリ言ってこの世界を嘗めてる様に俺からは見えるな。」
確かに、一人だけ少女が暗い雰囲気を醸し出している以外…残りの面々には笑顔が見られる…
「多分、死ぬって事を理屈では理解してても『所詮はゲームだから大丈夫だ』って言う論理で自分を誤魔化してるんだろうな…」
「思い込む事で恐怖を感じない様にしてるのか…」
「…一応一人は『このゲームでHPがゼロになると死ぬ』って言う、茅場晶彦の言葉をちゃんと信じてるみたいだけどな…」
HPがゼロになったらナーヴギアからマイクロウェーブが発生し、脳を焼かれ死に至る…あいつはそう言った。それが可能か不可能かと言えば……十分に可能だ。
今思えば…結局は外部電力を使用するのに何の為に必要なのかと不思議に思う位…高用量のバッテリーがナーヴギアには使われていた。仮に停電の際、いきなり電源が落ちた時のプレイヤーの混乱を無くす為だとしてもそこまで長く動かす必要は無い筈だ。このゲームは一応オートセーブシステムが有るんだから、フィールドやダンジョンから宿に一旦戻る時間を加味するにしても…バッテリーは二、三時間分も有れば良いんだ…マッピング機能まで備えている事だし。
だが、あのレベルのバッテリーなら…少なく見積もっても優に四、五時間分は有る事だろう…明らかに過剰だ。
そうだ、本当に何故気が付かなったんだろう…アレは脳を焼くマイクロウェーブを発生させる為と、一度外部電力から切り離し、病院に運ぶ時間を稼ぐ為に有ったんだろう…そして、電源が切れないとナーヴギアはそもそも外せない仕組みになっている…外部電力から切り離されて、内蔵バッテリーに切り替わり…早々にバッテリーが切れて…そのままゲームから無傷で逃れるなんて事も無い様に考えていた筈だ…仮に、あいつが生きていれば遠隔でマイクロウェーブが流せる様にきっと細工もしていたに違いない…
そこまで考えて漸く気付く…仮にもし、僕をここに送ったあいつらがその仕組みにも気付いていたとしたら…僕をいつでも殺せるって事じゃないのか?
「……リヒ…おい……おい!」
「っ!…どうしたんだい、キリト君?」
急に耳元で大声を出されて僕は我に返る…耳の中でキーンと不快音が聞こえる…耳鳴りか、全く…こんな所まで再現しなくても良いのに…
「どうしたじゃない…あんたが急に黙りこくったんだろう?」
「……いや、悪かった…ちょっと考え事をね…」
「…まぁ良い、取り敢えずあいつらに早く声を掛けるぞ。そろそろ引き上げそうだ…」
そこでキリト君の言葉に違和感を感じる…声を掛ける、だって…?
「どうしてそんな事をする必要が有るんだい?」
「…あのな、あんたがあいつらの事を気にしてたからだろ?」
「……それで、何故君が声を掛ける必要が有ると?」
「…一々あいつらの事を気にしてて攻略中に足を引っ張られたらフォローするこっちが疲れる…憂いは断った方が良いだろ?それに、あいつらが育って来たらこっちの攻略も楽になる…」
……既に当面、僕と共に攻略に向かうだけで無くフォローする事が前提になってる辺り…相変わらずお人好しだなぁ…と言う感想を抱いたがそこは口には出さない…こっちも彼を利用出来るなら利用しようと決めたしね。
「分かったらとっとと行くぞ。」
「ああ。そうだね…」
最も、話すにしても彼の人柄を知らないと色々誤解を招きそうな物言いをするのが彼の短所でも有る…面倒だけどそこら辺はこっちがフォローしないとならないだろうね…
……そう考えてキリト君と歩きながら、さっきの考えに戻る…が、すぐに考えるのを止めた…
恐らく奴らは僕を今すぐにでも殺そうと思えば殺せる…にも関わらず殺らないのは、何の理由が有るのか?…何て疑問を僕が一人で追求してもどうしようも無い話だ…なら、僕はこの問いを先送りにするしか無い…僕は気付かなかった事にするしか無いんだ。
…良いさ。道化でいろ、と言うならそうしてやる…どうせ僕にはもう…向こうに戻ったって何もやりたい事は無いんだ…足掻けるだけ足掻いて、それでも結局死ぬなら…それも仕方の無い話さ。