「えっと…じゃあお二人が僕たちに色々レクチャーしてくれると…?」
……いや、何でそうなる?確かに僕が気になって仕方無いから声を掛ける話にはなったとは言え、そこまでしてやるとはこの時点で一言も言ってない…僕は取り敢えず一旦タイムを掛ける。
「ごめん…ちょっと待っててくれるかな?」
「あ、はい。」
彼らのリーダー格らしき少年に声を掛けて、僕はキリト君の手を引いて彼らから離れる…
「……何だ?」
「…本当に彼らの面倒を見るのかい?」
僕がそう聞くと彼は溜め息を吐いた…
「ここまで来たらしゃあないだろ。まぁろくな自己紹介も済んで無い内からあんな事を言い始める辺り、どれだけ危機感が無いのかと思うけどな…」
彼らに一応僕たちの名前は告げた(最も、ここではそもそもプレイヤーネームは表示されるから自己紹介の意味はあくまで形式的な物だ)とは言え、それだけで僕たちの話を聞く理由は無い筈だ。
「…まぁ行き詰まってたのは確かなんだろうけどな、今はどのプレイヤーにもこの世界での実績どころか、知識すら無いに等しい……テスターを除いてな。」
僕たちの事はテスターだと伝えている…多分彼らが僕らの話を真面目に聞いてるのはそのせいだ…そうでなかったら、さすがに僕たちの事をもう少し疑っていただろう…
「ちょっとアドバイスでもするつもりが…これじゃあ最低限一人前になるまで面倒見ないとならなくなるね…」
「そう言うお前はまだまだ半人前だけどな。」
「…一応、僕は君より歳上なんだけど…」
と言うか彼は子供で、僕はれっきとした大人だ。
「何だ、今更敬って欲しいのか?」
「…いや、遠慮しておくよ。」
ムカつかないとは言わないけど…今になって敬語なんて使われ様ものなら、それはそれでむず痒いだろうな…
「まぁ、俺にも目的が無い訳じゃない。」
「それは…何だい?」
「……あんたは変だと思わなかったのか?」
「?…何がだい?」
「…あんまり偉そうに言いたくは無いけど…あんた仮に初日に俺に会わなかったら、今日まで生きていたと思うか?」
それを言われて考えてみる…そうだな…
「いや、多分何処かで死んでいただろうね…」
「そこだ。」
「え?」
「あんたが俺に会って俺からレクチャーを受けたから生きていた様に…最低限あいつらに戦い方を教えた奴がいる筈だ、だから今日まであいつらも生きて来れたんだろう…」
「…仮に彼ら全員、あるいは彼らの中にテスターがいたなら…そもそも今になって僕たちの助言は必要としない、そういう事か。」
「そうだ、あいつらにレクチャーした奴…俺はそれが誰なのか知りたいんだ…後々、こっちの助けになるかもしれないからな…」
「手を貸してくれる可能性は…」
「新しいゲームのテスターなんてやる奴は大半が廃人クラスのゲーマーだ、あいつらは絶対に無償で手は貸さない。だが、会っておく価値は有る。」
「このゲームのクリアには多くのテスターの力がとにかく必要…君はそう考える訳だね。」
「…元テスターの俺が断言する…仮にプレイヤーがどれだけ居ても…全員が初心者だったらノーミスでのこのゲームのクリアは絶対に不可能だ。そもそも明らかにβテストの時より難易度は上昇している節が有る…それでも誰もいないよりは、遥かにマシな筈なんだ。」
このゲームでのミスは現実の死を意味する…やり直しは無い。
「しかし、当然頭数も必要なんだろう?」
「そうだ…何せこのゲームのボス戦は元々レイド戦だ、それは…複数のプレイヤーが団結しなければボスを倒せない事を意味している…だから初心者にも強くなって貰わないと困る…だが、俺一人だけで初心者を鍛えて行くのは無理だ…知識だけでなく俺自身レベルも上げなきゃ、為す術もなくやられるだけだからな…」
「だから同じテスターと少しでも交流を持つ必要が有る、と。」
「テスターが真面目に新規プレイヤーにレクチャーするなら確実に生存率は上がる…生き残りが多ければ多い程、クリア出来る確率も上がるからな…」
「…つまり、クリア自体出来無い可能性も有ると考えてる訳だね。」
「…まぁそもそも茅場晶彦や開発チームの奴が妙な細工でもしてたら無理かも知れないな…でも、それはこの場で議論する意味が無い。」
無駄になるかはやってみないと分からない事だ…やる前から諦めるくらいなら…僕もキリト君も今この場に立ってはいない。
「ま、とにかくそろそろ戻るぞ。あいつらを待たせてるからな…」
「うん、そうだね…」