取り敢えずお試しで…そんな感覚で彼らとフィールドに出た僕らは、想定以上に見積もりが甘かった事を知る…
「おりゃあ!」
前衛役のテツオ君がメイスを振り回し、盾で相手の攻撃を防いでいる所に他の面子が前衛後衛も無くただ只管にモンスターにぶつかって行く…それが彼らの戦法(?)だ。
「アルベリヒ、俺が見てる物は現実か…?」
「…彼らがバーゲンセールに群がる主婦宜しく、モンスターに突っ込んでいる光景が君に見えているなら…大丈夫だ、僕も同じ物が見えてるよ、キリト君…」
更に彼らは最低限ソードスキルの使い方は分かる様で時折使って硬直し、その後にやって来た新手のモンスターの攻撃を硬直が解けた瞬間に広大なフィールドを走り回り逃げると言う…見てるこっちが本気でヒヤヒヤする状況も僕らの眼前で展開している…
「…どうするんだい?」
「…俺としては見込み無しと告げて、このまま匙を投げたい気分だ…」
そもそも何とか戦えている彼らはまだ良い、問題はサチさんだ…
「サチさんの攻撃、当たらないね…」
「そりゃそうだろうな…完全にビビって目を閉じてる上、モンスターとの距離も遠い…」
槍と言うのは長い…正直彼女が槍を選んだ理由は見当が着いた。彼女はモンスターに近付くのも怖いから目一杯距離を取れる、という理由で長物を選びたかったのだろう…ただ、それでも槍の穂先が当たるか当たらないかと言うギリギリまでしか近付く事が出来ていない…
「取り敢えず誰かを盾持ち片手剣使いにでもしてしまおう…前衛を増やしてスイッチ戦法を取れる様にしないと話にならないし、それなら俺も色々教える事が出来る。」
「ふむ…それじゃあ誰にする?」
「…第一候補はダッカーだな。間合いに違いは出るだろうけど、短剣なら多少は使い方も似て来るだろう…残念ながらソードスキルは全然動きが違うけどな。」
「…僕からも意見を良いかな?」
「何だ?言ってみろ。」
「…ササマル君も決して槍の扱いが上手い様には見えない…距離の取り方から見ても、片手剣の方が使い易そうに見える…彼にも転向を提案しないかい?」
「…確かに、その方が良いか…それで、だ…」
「後はケイタ君はまぁ良いとして…問題はサチさんか…やっぱり戦力外通告すべきだと思うかい?」
「戦い方がなってないとかじゃなくて、アレは元々戦うのに向いてないタイプだな…生産職に回ってもらった方が良い。」
「生産職って言うと…鍛冶師とかそう言う?」
「そうだな、このパーティー専属の鍛冶師に転向して貰うのが良いだろうな。」
「……彼らは納得してくれるかな…?」
「して貰わないと困るな、まぁどうしても言う事が聞けないなら俺からあいつらに出来る事は無いな…その場合は俺はあいつらを見限る…後は好きな様にしたら良い。」
リアルなら冷たい…と言われそうな意見だが、ちょっとしたミスが死に繋がりかねないこの世界では妥当か…
「…そろそろ撤退させるかい?これ以上は無駄だと思うけど。」
いよいよ消耗して来たのか、彼らはもういつ総崩れになっても可笑しくない状態に見える…
「そうするか。」
そう言って彼らの方に向かって走って行くキリト君を僕は見送る…まぁ僕に手伝える事は正直無さそうに見える…僕は何か彼らに出来る事は有るのかな…?