「!…漸く止まったか。」
しばらく走っていたサチさんは町の入り口近くで足を止めた…一人でフィールドに出る程無鉄砲じゃなくて何よりだ…いや、単に怖いだけか…
「さて、行く…あんた何してるんだ?」
「来といてなんだけど…良く考えたら僕が行くべきじゃないでしょ。君の方が歳も近いし適に…何故僕の手を掴んでるのかな…?」
踵を返し、彼らのフォローでもしようとか考えながら戻ろうとした僕の手をキリト君が掴んだ。
「……いや…俺こう言うの苦手なんだよ、分かるだろ…?」
「分かる…とかじゃなくてここは歳の近い君が行った方がだねぇ…」
「いやだから…俺口下手なんだって…!」
ああ…一応自覚有ったんだね…まぁ口下手どころか、最早コミュ障の部類だと思うけど。
「つまり、君のフォローの為にこの場に僕にいて欲しい…と。」
「フォローって言うか…やっぱりそのままあんただけで説得してくれると助かる…的な?」
その場でガクッと崩れ落ちそうになった…いやいや…
「君、ここに何しに来たの…?…いや、先に帰ろうとした僕が言う事じゃないのは分かってるけどね…」
「…取り敢えずあいつらのフォローは俺がするから…あんたにあいつを説得して貰えたらな…と。」
「…ハァ…分かった、そっちは君に任せるよ。」
「……話、出来そうか?」
「さてね…あんまり自信無いけど、何とかやってみるよ。」
「…まぁ…あんたどう考えても将来有望なのに、最愛の女性を頭が良いだけのダメ男に取られるくらいだからな…」
くっ…!痛みは無いけど何でか傷を抉られてる気がする…!
「キリト君、誰にでも言っちゃいけない事って言うのは有るんだよ…?」
「…悪かった。まぁこの世界でも女性はいる様だから誰か…と、コレも駄目か…」
「…まぁ良いよ。…と言っても特に出会いを探す気は無いかな…僕にとってはあれ以上の女性は居なかったから…そろそろ良いかな?彼女を見失ったら面倒だ。」
「そうだな、じゃああんたに任せるよ…それじゃ、後でな。」
そう言ってキリト君が踵を返し、走って来た道を戻って行く…やれやれ…じゃあ大人として仕事をしようかな…何となく彼と行動してから面倒に巻き込まれる事が多くなって…いや、どちらかと言うと茅場晶彦…あの男と関わってからが最初か…そう考えてたら燻っていた怒りがまた戻って来るのを感じた…ふぅ…一旦落ち着こう…この世界は顔に出るからね、落ち着かないと彼女を怖がらせて…!
「なっ…!?」
町の入り口で止まっていた彼女は僕の見ている前で走り出し、フィールドに出て行ってしまった…
「くそっ!何でよりによって…!」
モンスターが怖いのに何で一人でフィールドに出る!?意味が分からな…いや!
「僕たちのせいか…!?」
彼女にとって戦力外通告はパーティーを離れて一人でどうにかしろと言う意味に取った!?だから強くなろうと!?
「悠長に分析してる場合じゃない!早く追いかけないと…!」
何でも一々考えてからでないと動けないのは間違い無く僕の悪い癖だろう…分かってるんだ!僕だって考えるより先に動いた方が良い場合が有るのは…!こう言う時無意識に身体の方が先に動くキリト君が羨ましいよ、本当に…まぁ反省は後だ…彼女を早く連れ戻さなければ!
僕は既に姿の見えない彼女を追って走り出した…間に合ってくれよ!