後…二体…そろそろヤバいな…ついさっきまで有った身体のキレも頭の冴えも消えて行くのが分かる…それどころか…もうそろそろ意識ももたなそうだ…
「誰かを守って死ぬ…か…ハハハ…昔の僕なら到底考えもしなかった事だね…」
脳裏に死の一文字が過ぎり、ついそんな事を口にしながらも身体は動き、振った右手の片手剣の一撃は…目の前の猪を消滅させていた…途中意識が僅かに途切れ、気付いた時には目の前にいた猪の突進を受け止めた際に…店売りの耐久値の決して高くない片手剣が消滅した…咄嗟に猪の顎を蹴り上げ、向こうが怯んだ隙に通常の片手剣装備に戻し発動させたソードスキルが、そいつを消滅させた…
あの時でさえもう残りは三体…今二体の内、また一体倒したから既に残りは一体…今更、二刀流にする必要も無い…
「あれ…?」
こちらに突っ込んで来る猪の突進を見つつ…呼吸する必要が無いのに、酸素を求めるかのように喘ぎながらも改めて構えようして……身体の何処かからプツンと…糸が切れた様な音が聞こえた…やがて視界に入ってくる…コレは地面?何故地面が目の前に…いや…僕が倒れているのか…?
「っ!…クソ…!待て…待って…くれ…!後…後は目の前にいるあの一体だけなんだ…!その後なら…!」
倒れ込んだ衝撃が身体に遅れて伝わって来て、薄れかけていた意識が戻る…現実を認識し、僕の口から悪態が漏れるが…身体はびくともしなかった…
「動いて…くれ…!頼む…!頼むから…!」
実は睡眠をとる必要なんてそもそも無いだろうこの世界…だが、目蓋は徐々に下がって来る…震える手で胸の辺りを只管に叩き、何とか意識を保とうと試みる…何で…何で僕はこんなに…必死になっているんだ…?
「後少し…後ほんの少しなんだ…頼むから動いて「いや…もう大丈夫だ」…え?」
「後は任せてくれて良い…あんたは取り敢えずそのまま休め…良かったな、あんたのお陰で…サチも無事だ。」
何とか顔だけを地面から上げると、そこには見慣れた、小柄だけど…確かな力強さと頼もしさを感じる背中が有った…
「僕は…守れたのか…?」
「ああ…ちゃんと、な。…ククク…色々言ってた癖に、あんた誰かの為に命なんて張れたんだな。」
「……気まぐれさ…本当は柄じゃない…」
「はいはい…分かったからもう休め…サチもどうやら気絶してるみたいだし、事情は後で聞くよ。」
目蓋が重い…だけど…最後にこれだけは…彼に伝えないと…
「…キリト君。」
「ん?」
「助かった、ありがとう…」
「…気にするな、良いからもう寝ろ。」
僕は上げていた顔を下ろし、そのまま…目を閉じた…