「まぁ教えるって言ってなんだけど…見ての通り、確かに僕とキリト君は今の君たちと同じ片手剣使いでは有るけど…盾は使ってないんだ。なので申し訳無いけど…盾ありきの片手剣の基本的な使い方を教えるのは…ちょっと厳しい…」
キリト君にも改めて確認したけど…確かにベータテストの頃、初めの内は盾を使っていたものの…元々盾を持たない剣道をリアルでやっていた事も有って、寧ろ盾を利用しての戦い方がしっくり来なかったらしい…(本人曰く…キリト君は元々目が良かったらしく攻撃に関しては基本躱すし、何なら受け太刀も余りしないとか…)
盾をぶつける所謂シールドバッシュ何かも一応やってはみたとの事だけど…片手剣と言う武器はナイフよりは長いが、それでもリーチがそこまで長い訳じゃなく…且つこのゲームの判定上の問題か盾をぶつけると敵が意外と遠くまで飛ぶ事が多い為に、突っ込んで来た敵にせっかくカウンターを取っても盾をぶつけると相手を剣の届かない距離まで飛ばしてしまい、上手い事追撃に繋げれないと言う問題に直面しやきもきさせられる事になったと言う…
結果、相手を怯ませる目的なら盾での攻撃は過剰(おまけに肝心のHPにはダメージを与えた形跡すら無かったと言う…)結局盾を使わずに空いた左手でぶん殴るか…何なら蹴ったり、それこそ素直に剣を持ったままの右手で殴れば済むという結論に達してしまったと(しかもその方法だと少しではあるが何故かHPは減る…)そして、盾本来の使い方で有るガードに使う事も基本無いから使い道は本当に無い…なので思い切って盾を使うのを止めたら凄く戦い易くて、以来…ずっと盾無しの片手剣士スタイルで戦い続けて来たと言う…
……この言い分だけ聞くとあまりにも脳筋としか言い様が無いんだけど…実際キリト君の勧めと、教えを受けてやってみたら僕自身もとても戦い易く感じてしまったので…そこについて僕から言える事なんて無い…
まぁとにかく、僕もキリト君も…盾を使っての片手剣士としての戦い方は本当に良く分からないのだ…
だからと言って、彼らにソレをそのまま勧めると言うのは良くない…あくまで僕は何故か、この世界だと現実では考えられない程高い身体能力を発揮出来て…敵の動きも最初からある程度目で追えたから…彼と同じやり方が出来ただけだ…
動きにとにかく無駄が多く、どうやら、敵の動きもろくに見えていないと思われる彼らにソレをやらせる訳には絶対に行かない…
現状の彼らでは敵の攻撃を確実に躱せない以上、防御させるのは必須事項なのだ…そして、受け太刀をさせるのは剣の耐久度が下がるから論外…鎧などの身に付ける防具の耐久度に物を言わせて突っ込ませると言う事も考えたが…そもそも今の彼らなら攻撃をその身で受けた場合…確実に恐怖で足が止まるか、脇目も振らずしかも敵に背中を向けて逃げ出すかの二択になるのでこの案も使えない。
結局、どうにかして彼らに盾の扱いを覚えさせる以外には無いのだ…もちろん盾にだって耐久度は存在するが、それでも身体に攻撃は当たらないから間違い無く、精神的負荷はマシになる…と言うか、元々盾持ちだったテツオ君ですら素人の僕から見てもあまり盾を使いこなせていない様に見えるから本当にどうしようも無い…
「え~!?じゃあどうするんですか!?」
ダッカー君が抗議の声を上げる…まぁ事前に一応説明したとは言え、結局納得してなかった彼らに半ば強引に片手剣装備に変えさせた上、一番文句を言っていたのは彼だからね…
「慌てないでくれ。だから特別講師を着ける事に…いや、アスナ君…君は呼んでないよ?」
何故かコペル君と一緒に彼らの後ろに居たアスナ君が僕らの方までやって来て僕を睨み付ける…やれやれ…
「……用があるのは僕かな?…仕方無いな…キリト君、一旦この場を頼んで良いかな?」
僕は横で相変わらず胸の前で腕を組んで、カッコつけて立っているキリト君に声を掛ける。
「良いけど…何をやれって言うんだ?」
その場でガクッと崩れ落ちそうになる…いや、話を聞いてなかったのか…?
「…彼らも一応面識は有ると思うけど、改めてコペル君の紹介と…これからの説明だね…」
「だから…これからって言われても何をやれば良いんだ?」
……こりゃダメだ…普段は頭の回転が早い癖に、彼は突然バカになる病気か何かなんだろうか…?いや、まぁ…さすがに失礼か…
「コペル君と一緒に練習メニューを決めて、彼らに伝える…まぁ具体的な練習方法はコペル君なら分かるんじゃないかな…コペル君、大変になると思うけど頼んで大丈夫かな?」
「う~ん…まぁ大丈夫だとは思うよ?…でも、今日は初日だよね?何処までやったら良い?」
うん、コペル君が居てくれて助かるよ…話が早い。
「先ずは剣と盾の基本的な持ち方や戦い方、次に扱い方……ここは圏内だ、ある程度徹底的にやっていいんじゃない?あー…圏内では確か装備の耐久度は減るんだっけ?まぁ彼らの装備は店売りの安物だし、壊れても何とかなるでしょ。」
要は初日の内に盾の扱い方と戦闘への恐怖への克服…両方やってしまおうって事だ……申し訳無いけど、僕らもさっさと前線に戻りたいから…あまり時間は掛けてあげられない…
「ああ、圏内戦闘までやれって事かな…でも、良いのかい?」
「ついて来れないなら…彼らもここまでとしか言い様が無いかな…サチさんにはあまり無理をさせたくないけど…ある程度はレベル上げないと生産職への転向も出来無いしね…」
何ならここで恐怖を克服出来たらその必要も無くなるかも知れない…
「まぁ、そう言う事なら了承したよ……その…頑張って?」
うん、僕は何を頑張ったら良いのかな?……あ、キリト君が明らかに話を聞いてない…他に発言力の有る人が居たら何も言わないどころか、話も聞かなくなるのが彼の悪い癖だね、本当に…僕は取り敢えずジェスチャーでコペル君に耳を近付ける様に言う。
『…キリト君の事、頼めるかな?』
『あー…了解。』
近づいて来た彼に一応小声で伝えておく事にする……もう彼もキリト君がコミュ障なのは分かってるらしく、察した顔になる…さてと。
「じゃ、申し訳無いけど僕は少し席を外すよ…後は二人に従ってくれ。」
「はい…」
ケイタ君が代表して答えてはくれるが、戸惑ってる事を加味してもどうも頼りない…まぁ後は二人に任せるか。
「じゃあ…待たせたね、アスナ君」
僕が声を掛けて今居る町の広場を離れ店の裏まで向かう……途中で振り向いたが、彼女はちゃんとついて来ていた…全く、今更何の用が有るんだか…そろそろ本当に、いい加減にして欲しいね…