妖精王のSAO   作:三和

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「いや、待たせたね…」

 

「ああ、それは構わないけど…ところで、例の彼女は?」

 

「さぁね…」

 

別に今さっきの話の内容を目の前のコペル君に伝える必要は無い…彼は少しの間黙ってこっちを見ていたけど、やがて何かを察した様な顔になると僕から目を逸らした。

 

「…で、今はどんな感じだい?」

 

「…取り敢えず今は…剣と盾の基本的な使い方は僕が教えたからキリトを相手に、順番に1体1の組手の最中さ。」

 

コペル君の言葉に頷きつつ、僕は改めてその光景を見る…

 

 

 

「だから一々目を閉じるな、動きも止めるな…と言うか、その間合いじゃお前の攻撃も届かないだろ?」

 

「ひっ…ヒィ…!」

 

盾を前に突き出し、その中に身を隠す様に(いや、騎士盾の様な大型な物じゃなく…丸い小型のアレなんだから無理だけど…)身体を縮こまらせていたダッカー君の方に、キリト君が一気に距離を詰める…

 

「ほら、足元がお留守だ。」

 

「ギャッ!」

 

丸盾では隠せない足に向けてキリト君が足払いを掛け、ダッカー君が何の対応も出来無いまま地面に背中を打ち付け、そこにキリト君が剣を突き付ける…

 

「ひゃっ…!」

 

「気持ちは分からなくも無いが、盾で顔を隠したら敵の動きは見えないだろ?……と言うか、とっとと立てよ…一応言っておくと、お前らはサチにこう言う事をやらせようとしてたんだぞ?…女に断れない空気を作っていて自分はあくまで好きな武器を使いたいし、危ない目にも遭いたく無いとか…虫の良い話だと思わないか?」

 

 

 

 

「……ずっとこの調子でさ…正直、僕はやり過ぎだと思うんだけど…アルベリヒ、君はどう思う?」

 

「いや、あれで良いと思うよ。彼らは…初対面の僕らにすら戦うのを怖がってると分かるサチさんに、片手剣と盾持たせて前線で戦わせようとしてたんだから…普通は盾持ちの時点で前線から絶対離れるな、と言う意味だからね…」

 

「あー…それは確かに…」

 

そもそも少数チームなんだから、状況に応じて役割を切り替えるのは…ゲームへの知識が浅い僕からしても当たり前だろうと思う…人にやらせようとしといて、自分は絶対やりたくないなんて言う…ふざけた理屈が通る訳も無い。

 

「敵と近くで相対する事の意味すらろくに分かってない彼らには良い薬だよ。大体…あの人数で戦うんなら何が起こっても対応出来る様に、皆いつでも同じ事を出来無いと不味い…個性を貫ける程人数も居なければ、技術も無いんだからね……ソロなら、話も別だけど。」

 

「まぁ、ソロなら別に好き勝手やっても良いだろうね…ほとんどの場合、別に誰にも迷惑掛けないんだし…」

 

「とは言え、あれじゃまともに戦える様になるまで相当時間が掛かるだろうね…一応、今の所期限は設けて無いけど…僕らは何れ攻略に戻るつもりだ。最悪、彼らの事を頼んでも良いかな?」

 

「分かった、どうしても駄目なら…はじまりの街まで僕が責任持って連れて行くよ。」

 

「悪いね…」

 

「いや、これが僕の選んだ役割だからね…何とか頑張ってみるよ。」

 

つまり、彼は…ビギナーの育成に回る事を選んだのか。

 

「大変だよ、下手したら攻略に参加する方がまだ楽なんじゃないかと思うくらいにね…」

 

「それなんだけど、実は…僕みたいに攻略に出たくないテスターが結構居るのが分かったんだ…最悪、彼らにも声を掛けようと思う。」

 

また妙な話が出て来たな…

 

「ん?それはリアルの友人とかかい?」

 

「う~ん…多分違うんじゃないかな…」

 

……違う?

 

「何故、赤の他人のテスターの状況が分かったんだい?」

 

「……君には言っても良いかな。実は…ベータテスト時代、一人の情報屋が居たんだ…攻略には基本的に参加せず、それでもこのゲームの表から裏まで多くの情報を持ってるプレイヤーがね…結構有名だったんだけど、聞いた事無いかな?」

 

……。

 

「それは…本当にプレイヤーかい?」

 

「……そうじゃない可能性も有るかもね…ただ彼の場合、基本的には僕たち一般プレイヤーから情報をコルで買っていて…それを別のプレイヤーに売るスタンスだったよ。」

 

「その人に、会えたと?」

 

「うん、まぁ…ちょっと驚いたんだけど…」

 

つまりその情報屋に他のテスターの安否を聞く事が出来たと…微妙に歯切れが悪いけど、彼はその驚きの理由に関してはこの場で、語る気は無い様だ…

 

「その情報屋、ここに呼ぶ事は出来るかな?」

 

「かの…いや、彼は基本的に…ある程度交流を持ったプレイヤーとしか取り引きはしないんだけど…」

 

「構わないさ、繋ぎを着けてくれるだけで良い。」

 

「まぁ、そう言う事なら…後で連絡してみるよ。」

 

「すまないね…」

 

もしかしたら…そのプレイヤーは僕の知ってる人物で…何より、僕をここに送り込んだ奴かも知れない…確かめる必要は有る……まぁ良い…全ては会ってから考える事にしよう…

 

「さて、そろそろ僕も参加しよう…コペル君、先に僕が行っても大丈夫かな?」

 

「あー…一応僕は、あくまで片手剣と盾の使い方を教える役割だけに回されてるから…」

 

「成程ね、つまり次は僕でも問題無い訳だ。」

 

僕は意外にも真面目に彼らを鍛えようとしてるキリト君に、交代を告げに行く事にした。

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