半ば当然の話にはなるが、現在彼らの持ってたコル…このゲームの通貨は実は全部こっちで取り上げている…まぁ、極端な話…彼らの場合今、中途半端にお金が有ってもすぐに無駄に使い込むのが目に見えてる…まさか現代人、それも最低でも高校生くらいの子たちにお金の使い方から教えないといけないとはね…で、その辺が彼らがこっちに不満タラタラな理由の一つでも有ると思う…最も…
「あの…本当に私で良いんですか…?」
「三人で話し合ってね、これから先君たちがどうなってて行くにしてもだ…小規模では有るがチームと言うのは組織…それなら、会計責任者の存在が絶対条件だ……まぁ、君も…彼らにこのまま好きにお金使わせてたら、どうなるかも想像は付いてるんだろう?」
「その…はい…」
僕は朝になってからサチさんだけを呼び出していた……既にキリト君、コペル君にはメッセージのやり取りで話を通している…だからこうして二人きりになる事が出来た……まぁ、ケイタ君が昨夜の事も有り…疑いを持って僕を睨み付けるのは分かってたけど…ふぅ…駄目だね…守ると言ったんだから、先ずは強くなる事に集中して貰わないとね…もちろん、キリト君にはケイタ君を本気でボコボコにする様頼んである……まぁ、本人は何故かニヤニヤしながら…『了解…普通なら再起不能になるくらい、心をズタズタにすれば良いんだろ?』…とか言ってたから正直、引いたけど…ま、昨夜も彼には言ってある…気概だけではどうしようも無いと。
前を見れるってだけじゃ駄目なんだ…文字通りに後ろや足元も見ていなければ…この世界じゃ、何処に不確定要素が転がってるか分からないからね…
「とにかく、オンラインのゲームだとギルドを作るのが定番らしいけど…この世界ではシステム的にそれが存在するのかは分からない…システム的に資金をロック出来無いなら、真面目な人が管理するのが一番良い…君はあの中で一番真面目だ……出来るかい?」
「はい…何とかやってみます…」
「ま、あの時話した様に、君には生産職転向も勧めようと思ってる…フィールドに出る事が無くなる訳じゃないが大幅に回数は減るし、そうなると君は生き残り易い…尚更、金庫番にはピッタリの人材だ。」
「でも、皆に伝えてないの…申し訳無くて…」
「いや、これはあくまで彼らの為の貯金だ…そう思えば、少しは気が楽なんじゃないかい?」
「それは…確かに…」
詐欺師めいた事を言ってる気分になるけど…別にこっちははなから使い込む気も無い…けど、持ってると僕らも目が眩む可能性は有る…ま、僕以上にゲームの事に疎そうな彼女に持たせれば使い込みは有り得ないだろう。
「うん、話は終わり……何か有るかい?」
「え?」
「いや、悩みが有るって感じの顔だからね…」
今までの彼らの態度見る限り彼女がいくら悩もうと気付く事は無いだろうけど…まぁ、僕には分かる…とは言え、多分キリト君もコペル君も分かる筈だ……寧ろ何故彼らは分からないのか…実際、彼女の事をちゃんと見ていれば彼らと彼女の間に溝が出来る事も無かっただろうけど…正直、今回前線に出されそうになった事で、彼女の中に僅かばかり彼らに対する不信感が募ってるのは間違い無い筈だ…ま、危ういとは思うけど正直僕にどうにか出来る筈も無い…ただ、それでも長い付き合いの彼らに悩みの一つも話さずずっと溜めておく、なんて選択肢を選ぶなら…まぁ、僕から声を掛けても良い…僕にも聞くくらいは出来るからね……最も、答えを出せない問題の方が多いだろうけど。
「その…聞いて、くれますか…?」
「聞くだけなら。少なくとも解決策が出るとは、限らないよ?」
「それでも良いです…取り敢えず、聞いてくれたら…」
「分かった…それで、どんな悩みかな?」
こう言う役目はキリト君に任せたいんだけどね…ま、彼は今忙しいだろうし…このタイミングで呼び出す訳にもいかない。
「その…ケイタの事で…」
あー…成程ね…この場で聞いたのは僕だけど、まさか僕にその話をするとは思わなかったな……当然と言えば当然か…彼のサチさんに対する想いを聞いていて、そしてそれをサチさんが聞いていた事も知っているのは僕だけだからね…(サチさんの中では。多分彼女は…実はキリト君もあの場に居たのに気付いて無いだろうし)
「彼の想いにどういう答えを出すか決めかねている…そんな感じかい?」
「はい…」
ケイタ君とサチさんは恐らく、それなりに長い付き合いだろう…仮にもし…ここが現実世界で、彼女の中に彼に対する蟠りが無ければ…あるいはあの時点で彼の前に姿を現して、OKの返事をしたかも知れない…だが、あの場では何も聞いてなかった事にした様だ…
「その…嬉しくなかった訳じゃない筈なんです…でも、今…私はどうしたら良いのか…」
彼女自身は恐らく、自分の中に有る不信感にハッキリ気付けてる訳じゃない筈だ…そして加えて、守ると言うケイタ君の言葉を実力面から疑っている…
「じゃ、選択肢は三つかな?」
「え…」
「一つはこのまま保留にする事…そして二つ目…残りの選択肢の話をする前に…先ずは今、君がケイタ君に対して持ってる気持ち…何だか教えようか?」
「えっと、はい…お願いします…」
「そうか…君はね、疑っているんだ…実質君に対して死ねと言ったケイタ君を…そして、君は現在…彼自身の実力をも疑っている…今の彼には、君一人すら守れない…君は、その点に気付いている…」
「どう、したら…」
「残りの選択肢だ…二つ目、ハッキリ断る…三つ目…彼の事を君が支える……まだ無理だろうけどね。」
それをするなら、彼と行動を共にしないといけなくなる…今の彼女には、不可能と言って良い…
「ま、所詮僕は選択肢を提示するだけ…選ぶのは君だ。」
「私が…」
「……さて、そろそろ戻ろう…何にしても先ずは、君も最低限の力を手に入れる所から始めないと駄目だ……分かるね?」
「はい…」
命があまりにも軽いこの現実を一番理解しているのは彼女の方だ。僕から見れば、ケイタ君はまだ甘い夢を見てると言える…この温度差が埋まらない限り、ケイタ君とサチさん…二人が上手く行く可能性は、ゼロだろうね…