妖精王のSAO   作:三和

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「あ!戻って来た!」

 

僕とサチさんが戻って来た辺りでコペル君が文字通り血相を変えて駆け寄って来る。

 

「何か有ったのかい?」

 

「それが、キリトが…!」

 

まぁ、何となくは予想が付く…彼もストレスが溜まってる様だし、少々やり過ぎたのだろう…まぁ、でも…

 

「コペル君、やり過ぎなくらいでちょうど良いんだ。」

 

「え?」

 

「君だって分かってるだろう?彼らの中で現実が見えてるのは…ここに居るサチさんだけだと…」

 

僕自身、半ば無意識に横に居たサチさんの肩に手を置いていた…ビクッと身体を硬直させたのが分かったけど、すぐに身体から力が抜けて行った……いや、僕に対して何をそんなに安心出来る部分が有るんだ…?ま、僕も今回はらしくない事をしたと思うけどね……良識な大人を演じるにしても、コレは少し逸脱している…

 

「ごめん。」

 

「いえ、良いんです…」

 

手を離したら離したで、寂しそうな顔にならないで欲しいね…元々、人に依存しやすそうな雰囲気は有ったけど…何で僕はこんなに懐かれてるんだ?

 

若干うんざりしつつも、そんな彼女の姿に少し既視感を感じた……いや、こう言う性質の女性に知り合いは居ない筈だ…少なくとも見慣れる程、付き合いの有る女性の中にこんな性格の女性は居なかった筈……と、今はコペル君と話してる最中だったね…

 

「寧ろ、彼らは彼女並みの恐怖を抱いた上で…それと戦えるくらいの精神性が望ましい……もうほとんどバレてる様な物だから言うけど…彼らと同じビギナーで有りながら、実質初めから素質も有って…スタートダッシュに成功したアスナ君や、そもそも多少なりとも情報…と言うアドバンテージを持っていた僕らと…彼らはまるで違う…彼らは文字通り、この世界ではゼロからのスタートだ…おまけに、スタートした時には最早周回遅れと言っても良い状況…幸い、圏内では何回攻撃受けようがHPは減らないんだ…ならば恐れを捩じ伏せ、且つ…生き残る為の戦い方を覚えるタイミングはもう今しか無い…実戦では、やり直しは聞かないからね…」

 

このゲームにCONTINUEは無い、HPがゼロになればその場でGAME OVERだ…僕の様な昔のゲームをやった人間なら、一回死んだ時点で普通にタイトル画面に戻されるゲームは良く見る系統だ…だから、HPがゼロになれば終わる…と言う事自体は普通に受け入れられる筈だ…もちろん、それでプレイヤーで有る自分がこの世から追い出されるのは納得出来る筈も無いだろうけど。

 

ただ…キリト君とその手の話を雑談としてした事も有るから分かるけど…最近のゲームは残機を消費してその場復活出来たり 、何ならせいぜいレベルが下がったり…所持金が半分になるDeath Penaltyさえ受け入れられるなら寧ろ罰はそれだけでゲームにすぐ復帰出来てしまう…

 

ところで、僕からするとこのDeath Penaltyと言う言葉を安易に使う意味が分からない…何故ならこの言葉は普通…死の際に生き返るのと引き換えに与えられる罰、と言う意味では無く…死そのものを罰と定義する際に使う言葉だからだ。そう、Death Penaltyを日本語に直訳すると死刑と言う意味になるのだ。

 

つまり、この世からの退場がこのゲームでのDeath Penaltyという事なら…それはある意味正しい。

 

ちなみにこの話を聞いたキリト君は笑っていた。まぁ、あの男はここまでのゲームシステムを実質一人で作ってるからね…間違い無く筋金入りのゲーマーだろう。つまり、この言葉についても良く知ってる筈だ…その上でHPゼロのプレイヤーに与えられる罰をこの世からの退場…つまり実際の死、として定義したのは…あまりにも皮肉が利き過ぎている。

 

……ま、脱線したけど要は…現代のゲームに慣れている彼らは…どうせこのDeath Penaltyを単純に理不尽だと文句を言う癖に、信じる事は無いだろうと言う事だ…非情な現実に対して、多くの人間が真っ先に取る手段は逃避だからね。

 

「彼らは先ず現実を受け入れないと話は進まないからね…『これは、ゲームであっても遊びでは無い』…もちろん彼らに限った話じゃない、あのローブの人物によるチュートリアル…真面目に話を聞いていたプレイヤーはどれくらい居るのかな?」

 

そう言う意味では、今もはじまりの街に引きこもっているプレイヤーを僕は否定しない。何故なら彼ら、彼女らはあの説明をちゃんと理解し…その上で、死に対する恐怖を持った正常な人間だからだ…こちらに迷惑を掛けない分には、好きにしたら良いとさえ思う。

 

「君は…貴方は…彼らをどうする気なんですか…?」

 

……いや、コペル君…そんな畏怖を込めた目で見ないで欲しいな…別に僕は彼らに対して、意地悪をしようとしてる訳じゃないんだけど…

 

「僕もキリト君も、別に彼らに対して理不尽を強いるつもりじゃないさ。」

 

まぁ…キリト君は多少の憂さ晴らしを兼ねた、苛烈な扱きをしているだろうけどね…

 

「じゃあ何を…?」

 

恐る恐る僕に質問をするサチさん…それでもちゃんとその瞳は僕の事をしっかり捉えており、揺らぎは無い…控え目では有るけど…彼女からは嘘も誤魔化しも許さないと言う意志を確かに感じる…やはり、彼らの中で一番成長が早いのはサチさんだろうね…もしかしたらこれから先…ケイタ君では無く、彼女が月夜の黒猫団と言うチームを率いて行くのに相応しいのかも知れないとさえ思う……と、思ったより強い瞳に少し気圧されたのかな?言葉が出なかったよ。もちろん、ちゃんと考えた上で僕はキリト君の行為を推奨している…

 

「彼らが目指すのは…言わばこの世界の勇者なんだろう?なら、この程度の逆境は捩じ伏せるだけの勇気は必要じゃないか…少々臭いセリフにはなるけど、昔から言うだろう?勇気を持って悪を打倒する…そう言う存在を人は勇者と呼ぶんじゃないか?」

 

彼らが目指し、踏み入ろうしてるのは前人未到の領域…テスターですら出来無かったゲームクリアの道だ…この世界の道理を身体に叩き込まれた程度で心が完全に折れるなら、はなからその役目は務まらない…元々志も所詮そこまでと言うなら、寧ろ…粉々に砕かれた方が彼らの為とも言えるだろう…

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