「…いや、一瞬納得しそうになったけど…それならそもそも放っておいてもどうにかなるって言うのは可笑しくないかい?」
「…ま、確かに不安要素がかなり占めるのは間違い無いしね…」
「実際、誰も死なずにチームが空中分解の方がマシ…と言っても良いくらいに瀬戸際に有るのは確かだな…ただ、俺も改めて考えたが…問題そのものについては正直放置するしか無いより、結局そのままにしておいても勝手にどうにかなる可能性の方が高い様に感じるな。」
「…キリト君もそう思うのか、何故だい?」
「…あんたは確か、学生の頃とかはレトロゲームに手を出してたんじゃなかったか?それも、かなり難しいやつ。」
「そうだね…」
まぁ、あれらのゲームは今の基準だと難しいと言われても…発売当時の頃だと正直、それが普通。今なら結局はレベル上げれば誰でもクリア出来るなんて言われるRPGでもキツい(いや、実質それしかやってない僕でも難しいと感じるしモノによっては投げた事も有る…)
「…なら分かるだろ?先ず、あいつらそもそもテスターじゃない。てか、実質いきなりリアルに帰れないって言う事を言われるだけのふざけた…最早チュートリアルにもならないチュートリアル…このゲームはアクション性は有るけどRPGだ…分かるのは、とにかくレベル上げないとどうにもならないって事だ…ところが、このゲームの売りにしてもキモ…必殺技とも言えるソードスキル…そいつの使い方はろくに分からず、ソードスキル使えないとその辺の雑魚にもとてもじゃないが勝てない。」
まぁ、確かにソードスキルにはかなりクセがある…アレは何の説明も貰わずいきなりやるのは本当に難しい…僕だって出会ったのが教えるのがあまり上手いと言えないキリト君とは言え、使い方を教えて貰えなかったら…仮に僕が今日まで生きていたとしても、未だにソードスキルは使えな……いや、正直どう考えても初日に死んでる気がするな…
「ま、要するに…ここに来たテスター経験の無い一般プレイヤーは…例えばタイトル画面でスタートボタン押したらいきなり何の説明も無くフィールドの一角にプレイアブルキャラ配置されて…何をしたら良いのか、これから何処に行ったら良いのか分からないまま、これまたいきなり尋常で無く強い敵に遭遇して…結果倒されてそのままタイトル画面に戻る…今だと確実に、普通にクソゲー呼ばわりされる様な…そう言う昔のRPGの世界に来た様なもんって事になるだろ?」
……実際、その手のゲームやった時の事を思い出してしまった…まぁ、言われてみれば正しくそうかも……ちなみに、コペル君の方にチラッと視線を向ければ苦い顔をしている…どうやら彼も経験が有る様だ。
「…まぁ、確かにそうかも知れないね…あー…成程、そう言う事か。」
僕はやっと二人の言いたい事が分かった…感情面の話になって来るから、だいぶ不確定要素の大きい事では有るけど…
「そんな訳の分からない状態でこの世界で活躍したいってのは所詮夢物語だ…俺からしたら現実見てないとしか思えない。…ただ、それでも…サチはともかく、他のあいつの仲間は今日まであいつに付いて来た。HPがゼロになったら文字通り…"死ぬ"。それが事実だと思ってなかったにしても、中々出来る事じゃない。」
「僕も…彼らの間には確かな絆が有ると思う。皆が今のケイタ君を見て戸惑っているのは多分、今までそんな姿を見せた事が無かったから…とは言え、元々仲は良かった状況で彼は初めて本音を見せた…他のチームならまだしも彼らなら…あるいは、乗り越えるのかも知れない。」
…そう、僕もそう感じた。彼らならお互い声を掛けあい解決するのでは無いかと……ただ…
「でも、僕は結果拗れる様な気もしてる…チームメンバーを巻き込んで取り返しのつかない事するのも"勇気"と言うなら…不和の解決の為、お互いの事情に踏み込んで行くのも結局"勇気"なんだよ。」
今言った言葉は、比較的純粋な人に言えばきっと反発されるだろう…でも、結局は"同じ"なのだ…
「上手く行かないなら仕方無い。迂闊に手出し出来無いのも確かだからな…ま、やらかさない様にケイタとサチに関しては見張らないとならないだろうけどな…」
そう言って面倒臭そうに頭を搔くキリト君に続いて、コペル君も口を開いた。
「…まぁ、その時は大変になるだろうけど…責任持って、僕が何とか彼らをはじまりの街までは連れて行くよ。ハァ…見張るだけで済むなら楽なものかな…これから先向こうで活動するとしたら多分…もっと厄介な事にも直面するだろうしね…」
理想論と言うのは聞いていて大抵の人は心地好さを感じるものだ……大抵はほぼ、理想の完全な実現は不可能と言う事実さえ無視出来るならね…とは言え、理想そのものの姿を実現出来無くても…だから何も変えられない、そうとは…限らない。そこに少しでも近付け、再現したいのなら…現実を見据えて行動するべきでは有る。そう言う意味では、僕は彼らが仲間で良かったのだろうと思う……柄じゃないし、面倒だけど…一人でやる事になるよりマシだ……いや、一人でとか思う辺り僕も相当変節して来ているな…いやはや、本当に僕は…一体いつからこんなに面倒見が良くなったんだか…