妖精王のSAO   作:三和

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彼女は一度叫んだ後は、時折相槌を打ちながら…特に質問を挟んだりはせず僕の話を聞いていた…そして、僕の話が終わった後…

 

「…ハァ…キー坊、今更になるけど…チョット部屋の外を確認してクレ…」

 

「ん?…ああ、成程な。」

 

キリト君が部屋のドアに向かい、開いた…廊下に顔を出し、左右を見渡した後…ドアを閉め、こちらに戻って来る。

 

「…大丈夫だ、誰も居ない。」

 

「…マァ、取り敢えずはイイカ。」

 

「…今のは何の真似だい?」

 

「…キー坊、コレでテスターって言うのは無理がナイカ?」

 

「んー…つっても、テスターだってこの世界の事を全部知ってる訳じゃないんじゃないか?」

 

「マァ、そうだけどサ「と言っても、コイツには話した事有るんだけどな」…ヤッパリダメじゃナイカ。」

 

何となく、彼女が呆れてるのは分かった…とは言え、僕には理由が分からない…

 

「…結局、今のは何だったんだい?」

 

「…ウン、この素直な感じ…確かに逆に悪人じゃないとは信じられるカナ~…」

 

「まぁな…でも、皮肉な事に…と言うか、だからこそだな…俺はコイツを信頼出来るんだよ。」

 

「……」

 

「…ああ、悪い…要はさ、アルベリヒ…今のは一連の話を聞かれる事をアルゴが警戒してくれたんだよ…一応、お前の為にな。」

 

「…部屋に居ると、ノックされたりとか…外から何らかのアクションを起こさない限りは、基本的に外からは中の声が聞こえないんじゃなかったかい?」

 

「…そこはちゃんと覚えてるんだな…まぁ、今のは忘れててお前に正体話すように言った俺も悪いけど…ただ、俺は以前言った筈だ…聞き耳スキルを取ってたら外からでも聞こえる事が有るってな…尤も、相当レベル上げてないと無理だから…今の段階でそんな奴が居る可能性は低いけどな。」

 

……言われてみれば、確かに聞いた覚えが…

 

「…マァ、多少なりともアドバンテージの有るテスターですら、今は自分の命が掛かってるからネ…マァ、先ず今の段階で戦闘関連以外のスキルをそこまで上げてる奴は少ないとオレっちも思うヨ…でも、結局可能性はゼロじゃないし…その気になればこれから先色々と悪い事を企む奴は出て来るだろうから…アルベリヒ、キー坊もそうだケド…もっと気を付けてクレ…つまんない理由で死にたくないダロ?」

 

「ああ、分かった…と、悪かったなアルベリヒ…今回は俺の認識が甘かった…」

 

「いや、良いよ…僕も事前に聞いてたのに忘れてたのが悪いんだから…僕も、これからはもっと注意する…」

 

「サテ、オレっちももう…マァ、ある程度は受け入れてるつもりだケド…まだ飲み込みきれてないからもう一度確認させてクレ…先ずアルベリヒ、アンタはあの須郷伸之で…現実世界では槍玉に挙げられてそうだし、何ならこっちでも恨まれてるのは確かだろうケド…結局は、全部押し付けて自殺した茅場晶彦と…他の制作チームのやっかみのせいで実質嵌められてしまった被害者…と、言う事で良いんダネ?」

 

「…まぁ、最後の詰めをやったのは僕だからね…こんなとんでもない仕掛けに気付かずに発売してしまった責任は…確かに、僕にも有ると思ってる…」

 

「…けど、アンタは自分のすべき事はちゃんとやった筈だ…アンタだけ責められるのは可笑しいだろ?」

 

「……」

 

「…マァ、押し付けられた結果とは言え…メディア露出が多かったのは須郷伸之だし…何処まで行ってもアンタが犯人って言われるだろうネ…本来、一番疑われる筈の茅場晶彦はもう死んでるんだし…いくら、こっちの世界ではあのローブの奴が茅場晶彦を名乗ってるって言っても…アンタも共犯か、死者を貶めてるだけで実際は主犯扱いされるのが自然って言えばそうだしナ~…」

 

そう言って二人は色々と言ってくれるけど…僕としては思う事が有った…

 

「…その、僕の事を信じてくれるのかい?」

 

「…俺としては今更だな…アンタが信じられないなら、今日まで一緒に行動してないよ。と言うか、アンタ色々危なっかし過ぎる…俺でさえ…まぁ、悩んでる事は有るけど…そんなの丸っきり吹っ飛んじまうくらい、とても放置出来無いヤバさが有る…」

 

「オレっちとしてはまだ半信半疑だケド…でも、さっきの事と今のアンタの顔見てたらサ…マァ、アンタが全ての元凶とは…オレっちもチョット思えないカナ~…」

 

「僕の、顔…?」

 

「…そうだな、ちょっとそこの鏡見てみろよ…今にも泣きそうな顔してるからな。」

 

「…僕が、本当に…?」

 

この世界では自分の感情がすぐに顔に出てしまうんだったかな…恥ずかしくて、ちょっと確認出来無いけど…

 

「…結局さ、その表情もそうだケド…これでもオイラは向こうでそれなりに色々な経験して来たし、こっちでもテスター時代に色んな奴を見たからサ…だからカナ、分かるんだヨネ…アンタが嘘を吐いてない、そもそも…こんな大それた事出来る様な悪党にはとても見えないヨネ~…」

 

「……」

 

僕は、別にそんなに善人じゃないけどね…

 

「何て言うか、多分自分では捻くれ者とか思ってるんだろうけど…実際は俺の見てる限りアンタはさ、割と自分で思ってるより素直なんだよな…結局アンタがなれるのは、せいぜい小物も小物な小悪党くらいだろ…まぁ、その辺は変なプライドとか価値観とか…上位互換な茅場晶彦に全部ぶっ壊されたせいも有るんだろうけど。」

 

「マ、とにかくサ…オレっちも出来る事はそう無いケド、一応…アンタの味方ダヨ、アルベリヒ。」

 

「…ありがとう「マァ、デモ…代わりに一つ言わせて貰うけどサ、アルベリヒ?」…え?」

 

「オイラはプレイヤーの情報だってコル次第で容赦無く売る泣く子も黙る情報屋、鼠のアルゴ!サ、オレっちに口止めを頼むナラ…当然出す物がアルダロ?」

 

思わず、キリト君の方を見てしまう。

 

「考えても見ろ、結局アンタとアルゴは初対面…何よりコイツは情報屋で…今俺たちが居るのも現実の法なんて通用しない世界だぞ?下手な口約束より…遥かに、信用出来るだろ?」

 

「…まぁ、確かに…」

 

微妙に釈然としないものは有るけど、それでも…言われてみれば確かにそうかもしれない。

 

「マ、安心シロ…今はアンタもコルがあまり無駄に出来無いのは分かってるヨ…ウン、ソウダナ…アンタがもう少し強くなったらオレっちから一つ、仕事を頼もうカナ。」

 

「……仕事?」

 

「そう身構えるなよ。ま、そう大した事じゃない…アレだろ、アルゴ?」

 

「ウン、キー坊は知ってるヨナ~…要はサ、アンタにはクエストの攻略をして貰いたいんダヨ。」

 

「そして、アンタが攻略したらその情報をアルゴが買って…その後、他のプレイヤーにアルゴが売る…って言う流れだな。」

 

「…情報を買うんだったら、口止め料にはならないんじゃないかい?」

 

「オレっちはあくまで情報屋…つまり商人だからナ、正当な働きにはちゃんと報酬を払う主義ダヨ。何よりサ、アンタの秘密をオイラは握ってるんダ…アンタが持ち帰った情報を変に出し渋ったり、他の情報屋に売ったりなんて事は当然無いって事になるダロ?もちろん、ちゃんと値段の交渉には応じるヨ…マ、要はサ…オレっちはあくまで情報屋としてステータスを割り振ってるから

ナ…戦闘系のクエストは相性が良くないんダヨ…だから信用出来て、何より腕の立つプレイヤーと繋ぎが欲しいんダヨ…テスター時代から知ってるキー坊はともかく、現状…今オレっちの言った条件を全て満たしたプレイヤーの知り合いが少ないんダヨ…キー坊一人だけだとこれから先心元無いし、アンタは先の事情からオレっちを裏切る事も無いし…もちろん、断らないヨナ?」

 

改めて考えてみる…後々僕が強くなってからの話だし、あくまで成功報酬になるとは言え…タダ働きじゃないなら決して悪い話じゃない…いや、と言うか…この秘密の内容を考えれば、寧ろ僕にとって良い話過ぎる…ついまだ、何か裏が有るんじゃないか?そんな風に考えてしまう…

 

「…オレっちが何か企んでるんじゃナイカ、今そう思ってるダロ?」

 

「…ああ、そうだ…ごめん…」

 

「謝る事はナイヨ、寧ろそれが自然と言うか…素直な様で、警戒すべき所はしてるんだなってサ…こっちの評価が上がってるヨ…ま、後々アンタに仕事をして貰った時にちゃんと証明するつもりだケド…一応もう一度言うヨ、オレっちはあくまで商人…正当な仕事には、正当な報酬を…何より、割と命懸けにもなる仕事を頼むんダ…危険手当も含めて、ちゃんとそれなりの対価を払うつもりサ。もちろん、仮に途中で逃げ帰ってもそこまでの情報は…さすがに全額とは行かないケド、それなりに勉強して買わせて貰うヨ。」

 

「何故、そこまで…」

 

「マァ、疑う気持ちも分かるケド…先ずサ、オレっちにとってはネ、コレは…一人の人間脅迫出来る材料を手に入れた、とか…そんなゲスい話じゃないんダヨ。」

 

「…つまり…?」

 

「今のオイラの感想はネ、決して裏切らないし…腕も信用出来そうで…何より、テスターの頃から信頼してるキー坊からの御墨付きの…そんな、最高のビジネスパートナーを一人手に入れたって感覚ダヨ…マ、要はサ…オレっちがアンタの秘密を知ってるからオレっちが上とかじゃないんダ…そうだな、オレっちとアルベリヒ…それにキー坊…三人でこれからは、言わば秘密を守る共犯って事ダヨ。」

 

「成程、言い得て妙だな…確かに、俺にとってもアンタは単なる仲間じゃない…そうだな、俺はアンタの秘密を握る代わりに…このゲームの製作に関わったアンタなら、今でこそ何も聞けてないけど…何れ、このゲームに関する重要な秘密を聞けるかも…てか、それが無理でも…ここまで強いプレイヤーから今更離れる理由もないからな…寧ろ、現状は仮に嫌って言われても…共犯として、俺はアンタに付きまとってやるさ。」

 

…ああ、成程…確かに、そう言う話なら僕にも納得出来るね。

 

「そう言う事なら分かった…アルゴ、キリト君…改めて、これから宜しく頼むよ。」

 

「にひひ…じゃ、交渉成立ダ…何れうんとこき使うから、覚悟してくれヨナ?」

 

「俺にはそんなに畏まらなくて良いぜ?俺たちの間柄は、結局は今までとほとんど同じ…腐れ縁で有る事以上に共犯って言う、アルゴを含めたもう一つ…新しい呼び名の関係性が増えるだけだからな。」

 

ホント、この二人とは長い付き合いになるだろうけど…そうだな、歳も離れてるけど…もし、このゲームをクリアして…現実に戻れたらその時も、三人共に…友人の様な間柄でいられたらと…不思議と僕は、そう思った…

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