エロゲの世界のテロリストさん   作:メンタル豆腐だから匿名

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第一話 プロローグ

「……」

 

 揺れる振動で目が覚めた。

 たまにある事だ。仕事に疲れてついつい帰りの電車で眠ってしまう。

 そして起きると、学生時代に居眠りしていたことなんかを思い出してしんみりしてしまうんだ。

 

 ……ん?

 なんだ、ここ?

 

「どうしたジョニー、顔色が悪いぞ」

 

 向かいの男が俺に話しかけてくる……いや待て、今の英語か?

 違和感がないくらいスッキリと言ってる事が伝わるが、よくよく思い返してみるとやっぱり英語だった。

 おかしい、俺は生粋の日本人で頭も悪い。

 英語なんかできるはずもないのだ。

 

 そもそもコイツら日本人ですらないな。

 暗めな重武装にカラシニコフ小銃、顔は全員目出し帽で覆っているけど白人系なのは分かる。

 

「失礼、手鏡を持っていないだろうか?」

「手鏡? ハハッ、んな華奢なモンはねぇよ。自分のマガジンでも見てな」

 

 俺の声よりも幾分か低い声が口から出る。

 自分が文字通り自分でないような気がしてならなく、冷や汗が肌を伝う。

 

 とにかく俺は言われた通りにカラシニコフ小銃に挿さっているマガジンを見てみた。

 現代の銃はよく合成樹脂を使われていたりするものだが、これは金属製だ。ロマンはあるがそれまでだろう。

 そこに映った俺の顔は、まぁ同じような白人であった。

 

 しかし、なんかこの顔を見ていると不思議な感覚に襲われる。

 懐かしい、とはまた違う、何かを忘れているような――

 

「――ッアア゛!!」

 

「おいどうした!?」

「なんだってんだこんな時に」

 

 いってぇ……頭痛か止まらねぇ……

 

 あぁ、でも思い出した。

 そうだ、俺はジョニーだ。

 

 ジョニー・ロッド。

 ここは名前も覚えていないエロゲの世界で、剣や魔法がある現代と近未来の境目みたいな文明力を持つところだ。

 そして俺は、いわゆるテロリストって奴だな。

 それも主人公の踏み台でしかないモブ。

 

「落ち着いたか? 薬はねぇがとりあえず水飲んどけ」

「ああ、ありがとよ」

 

 装甲車が揺れるごとにガチャ、と音が鳴る。

 目の前の彼らはなんともない顔をしているが、俺にはここの空気が物々しくて仕方なかった。

 

 

 


 

 

 

「そういえば娘さんには連絡したのか?」

 

 最初に目覚めた時、俺を気遣ってくれた目の前の男――アイクに尋ねた。

 ジョニーの記憶ではコイツには奥さんと娘が一人おり、テロリストに加担した時点では別居していた。

 だが娘さんも俺らと同じような『被差別者』であり、そんな中で男手がいなくなるというのはかなり痛いはず。

 死地に赴くならせめて一言くれてやってもいいんじゃないか、というのが俺の考えだ。

 

「ああ、あいつは俺のことが嫌いだからな」

「俺はそうには思えないが、せめて一つ連絡を入れても――」

「――いいんだよ、これで」

「……」

 

 二週間くらい前にジョニーとアイクの他、この場にいるメンツもちらほらいるが、そのメンバーで酒場に飲みにいったのだが、そこで娘自慢をしていた記憶があった。

 恐ろしいくらいに、楽しく輝かしい記憶だ。

 こんな経験を俺はしたかったな。

 

 だがこれ以上掘り下げるのは無粋だ。

 大人しく静かにしていようか。

 

『アルファー準備完了、ブラボー配置に着いた。チャーリー、そちらはどうだ』

『チャーリー、今到着した』

 

 車両の通信機と通信兵のものから聞こえてくる。

 装甲車が停止したので、もうすぐあのイベントが始まるのだろう。

 

 俺は何百本ものエロゲをプレイしてきた。

 だからか基本的には名作以外の名前は覚えていなかった。

 会話に出てきたり、パッケージを見ればなんとなく思い出せるがその程度。

 

 そしてこのエロゲは確かありふれたものであったはずだ。

 異能バトル学園ADV、魔法至上主義のこの世界でも舞台となる学園に集まる学生たちは【異能】などと呼ばれる特異なアドバンテージを持っていた。

 やることは他のエロゲと変わらずたまに適当な敵が出てきたり、他の学園と対抗戦したり。

 あとは恋愛して、しっぽりするだけだ。

 ハーレムもない、本当に普通のエロゲ。

 

『アルファー、チャーリー行動開始。ブラボーは予定通りアルファーの支援をしろ』

『了解、チャーリー全隊行動を開始しろ』

 

 分隊長の「ウェポンズフリー」の掛け声で安全装置を解除する。

 そして装甲車と扉が開き、後ろから次々と降りていった。

 

「降車、降車」

 

 口々にそう告げながら皆後ろへと詰めていき、降りていった者たちは同じ方向へ走って行く。

 外は緑の多いところで、少し離れたところに住宅街が広がっていた。

 その反対には宮殿を思わせる巨大な建物が佇んでいる。

 あれが舞台となる学園だろう。

 

 俺は前の奴について行く形で走る。

 そして学園の塀に張り付いた。

 

 ジョニーの記憶の保管は今の俺にかなり影響しており――というかこの状況では俺の存在が異物のように感じるほどのものだった。

 効率的な歩行方法や銃の扱い、今も塀に張り付いて無意識に、すぐに隊列を整えている。

 重そうな装備も気にもならない。

 身体の扱いは完全にジョニーのそれに偏っていた。

 

 と、学園の裏門から侵入が始まった。

 この時間は授業中なので、校庭で体育を行なっている生徒以外に校舎外を歩く者はいない。

 警備や清掃関係は手を打ってあり、結果テロリストが跋扈しても見つからないわけだ。

 

 しかしまぁエロゲだと俺たちには不都合しか起こらない。

 

 名前は覚えていないが、確かサブヒロインが授業をサボって校舎外を散歩していたはずだ。

 そこにテロリストの集団と遭遇して戦闘が起こる。

 すぐにサブヒロインは逃げ、教師は生徒に自習を命じて確認を取りに行く。

 

 確かそんな流れだったと思う。

 ああ、遭遇する奴らは確かカラシニコフにサプレッサーを付けていた記憶もある。

 

 最前列の先遣隊は一応サプレッサーを付けていた。

 アルファーはそれぞれ明確な目的が築かれた精鋭部隊の集まりで、基本的にサプレッサー以下余計なアタッチメントを装備していない。

 となるとブラボーかチャーリーだが、ブラボーはアルファーの支援で偵察に回っており露骨に校舎付近には近づいたりしないのだ。

 

「サルハン、最前列に行っちゃあダメか?」

「……なにを言っているんだお前は、隊を崩す気か?」

「やっぱダメか」

 

 分隊長に提案するも、一蹴される。当たり前だ。

 

 だって俺らは【異能】どころか【魔法】すらまともに使えないのだから。

 作中で語られたかは憶えていないが、ジョニーの記憶ではこのテロ組織はそういう社会的に地位のない奴等の集まりであった。

 だからこうして効率に効率を重ねた方法でしかここの生徒には対応できないのだ。

 

『……チャーリーコンタクト! クソッ、生徒と戦闘になった! 被害はゼロだが、異能を使われた!』

 

「聴いたか? 前の奴らが接敵したそうだ。足が早くなるだろうが警戒は怠るなよ」

 

 分隊長が促してすぐに前の隊が走り出した。

 ここから校舎までは100m前後か。

 

 流れに流されてここまで来たが、仕方ない。

 さぁ学校襲撃イベントの始まりだ。

消化不良とのお声をいただきましたが、続き要ります? (個人的にはこれ以上書くと復讐劇みたいになるのでオススメはしませんが、続きに繋げられる部分もあるにはあるので一応書けます) 7:3の割合以上で書こうと思います。

  • 続けて、どうぞ
  • もうやめてくれよ…
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