エロゲの世界のテロリストさん   作:メンタル豆腐だから匿名

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第二話 襲撃

「全員動くなッ!! もう一度言う、全員動くなッ!!」

 

 前の小隊が教室に突入して、声を荒げて抑圧する。

 言語はもちろん日本語だ。

 

 まず前から三人、室内の安全を確保する。

 その後すぐに壁を叩き、廊下の後ろの扉の前に待機していた二人がさらに侵入し、前と後ろから生徒を監視する。

 それを廊下の端と端から挟み込むように順に行っていく。

 後続の制圧部隊、支援部隊は、まだ突入していない教室から廊下に出てくる者などがいないか警戒する。

 

 これが一連の手順。

 そして俺は突入部隊に当たる。

 

 さて、もし俺の分隊が主人公のいるクラスの担当だったとしよう。

 その場合待ち得るであろう運命は「死」だ。

 具体的に言えば同じクラスのヒロインとサブヒロインがヤバかったか。

 どういうスペックをしていたかは忘れたが、なにか主人公に不都合な状況が起こり動けないでいる窮地をその二人が無双して脱し、その足で支援部隊までもを蹴散らす展開だったはずだ。

 

「小隊、突入隊形」

 

 肩あたりに置かれていた後ろの奴の手が離れる。

 俺は前から突入する組の隊列の中では最後尾だな。

 こういうのは緊張するものだが、俺は冷静だった。

 俺は、というよりジョニーは、だろうな。学舎に侵入してテロ活動をしているのに困惑しないのは明らかにジョニーの側面に引っ張られている証拠だろうよ。

 

 一番前の投擲兵が壁に張り付いて小銃を構え、続いて小隊長が及び腰で扉の前を潜っていき、その向こうに張り付いた。

 

 手順としては俺が扉を蹴破り小隊長が室内に照準を向けている隙に、一拍置いて俺と小隊長が突入する。

 最後に投擲兵が入ってひと段落だ。

 

 つまり俺は突入の花形ってわけだな。

 

 え、なんでスムーズに行かなそうな突入の仕方するのかって?

 だって既に三つか四つの教室を制圧してるんだから、まだ制圧してない教室の連中が警戒するのは当たり前じゃんwww

 普通に扉を開けてハイ突入、なんてやって魔法や異能使われたら目も当てられないだろwww

 

 扉を蹴破って俺が殺されたら、その隙に小隊長が教室を発砲でもって制圧。

 両方殺されたら投擲兵がグレネード投げ込んで、同時に後ろの二人も行動すると。

 

 花形にしては随分と物騒な感じだよね。

 ジョニー曰く、戦争なんてそんなものらしいけど。

 

「オラァ!! 全員動くなぁ!! もう一度言う、全員動くなよ!!」

 

 んー主人公は……おっ、いないな。

 

 あっヒロインはいるな。

 てことは主人公確実にここ来るじゃん、やっべどうしよう……。

 

 

 


 

 

 

 突入は無事成功。

 誰かが反抗することもなく、皆怯えた表情で小隊長の演説を聞いている。

 なおその演説は作戦とかには入っていない、完全な私的行為だ。

 だいぶ長く偏った話でツッコミ所も沢山あるが、部隊の人間からしてみれば慣れ物だろう。

 何も起きないことに「退屈」と感じるよかは俄然マシらしい。

 

 もっとも、小隊長は【異能】によって息子娘共々惨殺されている。

 決定的な事だ。だからこそ部隊の誰も止めやしない。

 

 壊れず、物事を考えて考えた結果を口に出しているだけだなのだ。

 長ったらしい演説の中に生徒らを批判する内容は一切なく、意外にも多角的にかつ実直的に社会を評論している。

 自分の環境なんかには触れず、出来るだけ生徒の目線に合わせて。

 

 それを遮るのは残酷な行為と言えよう。

 

「あの……」

 

 ああ、いかん。

 ブチギレそうだ。

 

 手を上げながら話を遮ったのは某ヒロインであった。

 クリームのように柔らかい白髪を肩から前に出して机の下まで流しているなっがい髪の持ち主。

 弱々しい目に空色の瞳を下に向けながら、白い肌をより一層白くしている。

 

 後ろの方に座っている彼女の近くにいたテロリストーーアイクは額に青筋を立てながら銃口を彼女に向けて近づいて行こうとしている。

 

 ああ、確かこの後このヒロインがいくつか反論して、アイクが撃とうとする寸前で主人公が来るんだった。

 

 主人公が放った【魔法】の攻撃エフェクトで一人のテロリストが悲鳴を上げてフェードアウト。

 直接的な死の描写はなかったが、それでも【魔法】を俺らに向けられたら基本的には死ぬのだ。

 

《ダメだ、死なせるな》

 

《アイツにはまだ家族がいる。組織でも数少ない家族持ちだ》

 

《だったら俺が死ぬ方が良い、部隊の誰かが死ぬ方が良い。本望だ》

 

「待て、俺がやる」

 

 俺は手でアイクを制して、机と机の間の通路に足を運ぶ。

 自然と身体が動いていた。動きたかったのだ。

 

「おい小娘、武装した相手が話をしているのに口を挟むとは良い度胸だな」

 

 エロゲの中でアイクが喋っていたセリフ通りの言葉だ。

 俺はヒロインの前に立っているが、足の片方は後ろの扉へ向けている。

 あそこから主人公が突入してくるからだ。

 

 俺は、死にたくはない。

 そして眼前の被造物でしか有り得ない理想の美しさを持つ少女を殺したくもない。

 

 しかしジョニー・ロッドは違った。

 コイツはまず両親を【異能】によって殺され、残された弟を養おうと若くして必死に働くも、その弟は国の研究に巻き込まれて殺された。

 二度も耐えかねない絶望を叩きつけられたのだ。

 そして同じように絶望した奴らを目にした。

 

 作中ではこんな重苦しいストーリーは書かれていなかった。

 もしも書かれていたならば、ただのエロゲではなく鬱エロゲとして記憶しているはずだからだ。間違いない。

 

 なんならこの手のバックストーリーや要素はよく目立つものだ。

 なにも考えずにプレイする奴でも分からないはずがないだろう。

 

 つまりだ、俺の見てきた異能バトル学園ADとは、【魔法】も【異能】も両方兼ね備えた主人公やヒロイン、その他登場人物が織りなすエロゲでだったんだ。

 その半分すら持ち得ない俺らに出る幕などない、と。

 

 思えば、作中後々登場してきた敵の中で【魔法】の存在に対してどうこう言う奴はいなかったな。

 

 ああ、そういえば【異能】だけでなく【魔法】も持たない者が集った組織は俺らのところ以外に聞いたことがない。

 もう淘汰される寸前だったか。

 そりゃテロも起こすわ。

 

「……た、確かに私たちは生まれつき【異能】を持っていますけど、でもそれだけだと、思うんです……一つ違いがあるだけで話し合いはできるし触れ合えるし、そんな些細なことでしかない、はずです」

 

 ……うーん?

 ああ、俺分かっちゃった!

 

 あれだ、この子俺たちのことを『【異能】を使えないテロリスト』だと勘違いしているんだ。

 さっきまでの小隊長の会話では「持つ者、持たざる者」の話をしていたからな。

 

 それにこの世界の常識では、人間は【魔法】を使える存在、となっていたか?

 場合によっちゃ俺らみたいな存在を知らない奴もいるんだろうな。

 知らないって、幸せだね。

 

「俺らは【異能】だけでなく【魔法】も持ち得ないのだが?」

「え……」

 

 何言ってるか分からない、と顔に書いたヒロイン。

 エロゲとは違うセリフで主人公の登場するタイミングを完璧に読むことはできなくなってしまったが、それでももう十秒程度だろう。

 

「動くな」

 

 重圧な声が背後からした。仲間のものだ。

 

 ヒロインから意識を外し、周りの空気を感じ取ってみると、どうも反抗的なものになっている気がする。

 先ほどの俺の発言を聞いて、あるいは自分でも勝てるのではと勢い付かせてしまったか。失態だな。

 

「おい、そこの。今ソイツから物を盗ろうとしたな、なんのつもりだ」

 

 今度は小隊長が指摘した。俺の背後の生徒にだ。

 俺は小銃を肩にかけ、右太ももにかけていた拳銃を取り出し、そして生徒の頭に突きつけた。

 そして何もない左手で生徒の首根っこを掴み、強引に立たせてやる。

 肉盾の完成だ。

 

「ーーあっ、ダメッ!!」

 

 ヒロインの悲鳴、それは合図だ。

 及び腰で生徒の脇から扉に向けて腕を、銃を突き出した。

 

 ーー瞬間、扉が消滅し、黒髪の冴えなさそうな少年が教室に突撃してきた。

消化不良とのお声をいただきましたが、続き要ります? (個人的にはこれ以上書くと復讐劇みたいになるのでオススメはしませんが、続きに繋げられる部分もあるにはあるので一応書けます) 7:3の割合以上で書こうと思います。

  • 続けて、どうぞ
  • もうやめてくれよ…
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