エロゲの世界のテロリストさん   作:メンタル豆腐だから匿名

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第三話 崩壊

 そのエロゲの序盤に発生する学校襲撃イベント。

 

 主人公はヒロインたちに助けられた後、廊下にいたテロリストを倒しもう一人のヒロインを助けに向かう。

 主人公は最初に扉をその【異能】でもって消滅させ、驚異的な身体能力でヒロインの目の前にいるテロリストを倒し、続いて扉の近くにいたテロリストを肉薄。

 援護射撃しながら距離を詰める他のテロリストの弾丸を自身の【異能】でもってあらぬ方向へ飛ばし、また倒したテロリストを援護射撃していた三人の内の一人に投げ飛ばした。

 もう一人は主人公の【異能】の影響が及んだ弾丸に被弾し倒れる。

 最後のテロリストもやはり主人公の手によって直接倒された。

 

 そうして主人公はヒロインに駆け寄り、大丈夫か、と訊く。

 するとヒロインは泣きながら主人公に抱きつき、怖かったとだけ言葉を漏らすのだった。

 そこへ駆けつけたクラスメイトのヒロインが暗い笑みで主人公に話しかけ、少しばかりのコントが始まる。

 

 

 


 

 

 

 教室の後ろの扉が消滅し、主人公と思わしき少年を視界に捉えた。

 それは銃の照準が主人公に合っていることを意味する。

 

 すかさず俺はトリガーを引いた。

 

 ハンマーが動いたと思った刹那、手の甲が後ろに引っ張られる感覚を微かに覚え、轟音に俺が驚いた時には少年の服には何かが刺さったような皺が出来ていた。

 しかしスライドの引きでチェンバーから放たれた薬莢が俺の視界にまだある内に、間髪入れずさらにトリガーを引いている。

 その反動で俺の驚きは消え去った。

 

 一発目の反動に二発目の反動を重ねても、未だ腕の軸は崩れず三発、四発、五発と撃ったところで反動の力が分散する感覚を覚えた。

 やや上にぶれる感じ。

 

 これはジョニーの癖だ。いつもそこで上に少しぶれる。

 だが俺は確信していた。このぶれは主人公の【異能】による隙だろうと。

 だから俺は早々にこの構図を放棄する心構えを取る。

 

 銃を一方的に撃つ人間は目の前の制圧を強く意識する。

 だからこそ大局的なものの見方を出来ずに足を掬われるのだ、というのはジョニーが学んだ教訓であった。

 故に、臆病になれと。

 

 そして六発目、主人公の服に皺ができていないことを確認した。

 俺は即座に生徒を放棄して、小隊長のいる方へと足を向けた。

 

 仲間のテロリストたちは俺の四発目の時点で小銃を構えて、六発目で射撃を開始した。

 移動するタイミングとしては完璧だろう。

 

 俺が教室の前方に移動するのには理由がある。

 

 まず退路を確保するためだ。

 主人公の教室は既に動く武器庫と化しており、その波紋がこの校舎に広がるのはもはや時間の問題と言ってもいい。

 退避するには階段を確保する必要があるが、俺らが侵入してきた階段は主人公のクラスを挟んで向こう側にあるため、残す階段は中央階段と奥の階段の二つ。

 だが裏門まで考慮すると、主人公のクラスより向こうの階段は確実に俺らのものとしなければならない。この階は三階だが、なし崩し的に一階まで取られるとそこに接する扉から脱出できず、一気に裏門まで生徒たちの占領権が伸びてしまうからな。

 理想はこの階の主人公のクラスが接する廊下を放棄し、階段の踊り場あたりで防衛線を作り消耗戦を仕掛けることだろう。

 物量で押し通せば向こうにも損害が出て、精神力を削れる。

 向こうの集中を削げば【異能】の発動を難しくでき、【魔法】の精度も落とせるだろうよ。

 

 もう一つはアイクたちを援護するためだ。

 あと数秒かすると主人公が立て直し、アイクたち二人の即席チームを壊滅させるものと考えられる。

 また十数秒でヒロインも合流し、ここで粘っていても”倒されて”しまうのがオチだ。

 だから主人公を二方向から攻撃しつつ、廊下からヒロインが来るかも警戒して、こちらに来るよう促す。

 そこで理想なのは教室の前の扉あたりを防衛線だと思ってくれることだろう。その位置だと教室と廊下の両方を、距離を保って警戒できるからだ。

 

 さて、主人公が身を起こした。

 弾は既に横を通り抜けて、背後の壁などに弾痕を作っている。

 

 そろそろ思い出してきたな。

 確か主人公の能力は【好都合】って名称だった。

 主人公がその【異能】を発動させた時点で、一波長分の波が主人公の周りに起こるんだったか? そんなCG絵があった気がする。

 その波に触れた存在の内、因果律の高い順に影響が出やすくなるとか意味のわからない説明もあったな。

 まぁでも実際に戦闘描写を見てみると簡単なもので、ようは人間、とりわけ【異能】を使える奴に影響が出るんだな。

 

 俺がさっき咄嗟にやったのは、確か作中の終盤で敵のサブヒロインがやった対処法だ。

 【異能】を使える奴を盾にすれば波除けになる。

 

 ただそれでもやっぱり主人公の能力自体はチートみたいなもので。

 さっきみたいに「扉、邪魔だッ!!」なんて言えば扉は消滅するし、今みたいに苦痛を漏らしただけで弾が変な方向に飛んでもいく。

 例えばここで「人手が足りない」と言えば、生徒たちに反抗心が芽生えるだけでなく廊下にいるであろうヒロインや上下の階にすらも影響が出たりする。

 

 主人公に数発打ち込んでも自身の力で、運良く弾が抜け落ちて止血もなっている、という好都合も起こるだろう。

 

 元より俺らは勝てっこない状況にしか立たされていないわけだ。

 

「アイクッ!!」

 

 俺は大声で名前を呼ぶ。

 普通は生徒らに名前を知らせないためにも、やってはいけないことなのだが、現在進行形で銃を乱射しているため耳栓をしている俺ら以外にはまともに耳は機能していないはずだ。

 ちなみにこの乱射は制圧射撃というやつだ。

 小銃でやるものでもないのだが、主人公の足を一秒でも遅らせるための措置だ。仕方ない。

 

 意図を汲んでか、アイクがもう一人の仲間を引き連れて教室の前へと移動を始めた。

 生徒たちは机の下に縮こまっているが、主人公はふらつく足でゆっくりと立っている。

 それを確認した俺はリロードを挟み、再び乱射しながら左手を離してベストに持って行った。そこにある簡易なポーチから手榴弾を取り出す。

 

「グレネードァッ!!」

 

 乱射ではないものの、単発でトリガーを引きまくっていた仲間が、一瞬体を丸めた。

 

 ズガアァンッ!

 破裂音が校舎全体に響き渡る。

 

「早く来い!!」

 

 この空間でグレネードを使ったことに驚いたのか、足を止めているアイクと仲間に俺は叫ぶ。

 そして小隊長たちが小銃を構える前に俺が再び発砲を開始した。

 

 わざわざ主人公の安否など確認する必要もない。

 グレネードの周りにいた生徒が無傷なのだ。

 奴の効力のせいなのは明白だろう。つまりまだ生きている。

 

 アイクが合流する前に、俺は小隊長のところへ向かう。

 たった数歩、しかし戦争ではたったで数mさえ価値は高く、死ぬことすらあり得る。

 この場面も変わらず、攻勢一筋な今でさえ誰かが【魔法】ないし【異能】を使えば命がかった敗走にしかならないのだ。

 それをもっとも理解しているのはエロゲの知識がある俺。

 そしてそれを活用せんとするジョニー、この二人だけである。

 

 だから、状況を見誤る前に小隊長に言わねばならない。

 撤退するなら、今だと。

 

 惜しくも、その希望は目の前で絶たれた。

 

「死ね」

 

 後ろの扉あたりから聞こえてくる声。

 モニター越しであるならばスカッとするところが、今の俺には忌々しくてたまらない。

 

 小隊長と仲間の投擲兵。

 彼らの生き様を形容する顔や身体、その懐に仕舞い込んである家族の写真さえも。

 

 主人公の一言で、赤い霧と化した。

 

 人の形をした真っ赤な霧、それは俺の目に一瞬止まった後、重力に従って床に血溜まりを作るのだった。

 跡形もなく、教室の汚れた床に広がっていく。

 

「裕也様〜!!」

 

 横から聞こえる、あの白髪のヒロインの声。

 エロゲで主人公が目の前のテロリストを”倒した”時に、涙目で主人公に縋り付くシーンだったか。

 生徒たちも主人公の方を見て「強えぇ」などと呟いており、誰も心に傷を負った様子すらなかった。

 

 ジョニーはチェンバーを確認し、そしてマガジンを取り替えた。

 クラス内が歓喜に見舞われる中、絶望したアイクたちを一目見て、チャージングハンドルを一引きした。

 心地いいあの音も、生徒たちの声で聞こえない。

 それ以上にこちらを睨み続けている主人公に意識が向いていた。

 

 奴は手をこちらに向ける。

 

「死ね」

 

 勢いよく机を踏み上げ、舞い上がった机は瞬間、粉と化した。

 その反動で俺は横へと飛んでいく。

 

 一回転挟んで廊下に出た俺は、すかさず主人公に銃口を向けた。

 

 が、俺の軸がおかしかった。

 そのまま照準が主人公をズレてあらぬ方向に落ちていく。

 いや、俺が横に倒れていっている。

 

 うずくまった俺は、腹を見た。

 戦闘服の上にベストを付けていた腹に、だ。

 

 その俺の腹は、肝臓らしきものがよくみえていた。

消化不良とのお声をいただきましたが、続き要ります? (個人的にはこれ以上書くと復讐劇みたいになるのでオススメはしませんが、続きに繋げられる部分もあるにはあるので一応書けます) 7:3の割合以上で書こうと思います。

  • 続けて、どうぞ
  • もうやめてくれよ…
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