エロゲの世界のテロリストさん 作:メンタル豆腐だから匿名
現実のテロとは暴力でしかない。
かつて学校をテロ組織が襲撃した例はいくつもある。
実際にそれを検索してみて、目につくのは被害者やその関係者、あるいはその対処にあたった鎮圧部隊などだ。
その中でテロリストは単純な悪としか映らない。
そんな現代であるから、多くの娯楽作品に登場するテロリストは単なる悪として機能していた。
悪たらしめるテロリストが用いるは暴力だと肯定される。
さして俺もそう考えていたうちの一人である。
しかし実際にテロリストの立場に立ってみて、思ったことは『暴力』とは一種の言語であるということだった。
言葉のような可変的なものでない、古来より使われてきた明確な情報体。
それが『暴力』なのだろうと。
なぜ俺らが暴力を用いて、単なる生徒とコミュニケーションをとるのか。
それは、やはり俺らも人間であるからだろう。
暴力という言語は、その単調さ故に感情が籠らない。
普通に用いられている言語はその在り様を遺憾なく発揮し、相手に感情の入り混じった情報を伝えるが、相手がそれを正しく受け取るとは限らないものだ。
多くを望まなければ、少しの期間を経て相手の情報に差異がないよう、察するという偶像で予測をつけることもできる。
そんな関係性を長年続けても、まだ差異が出ることがあるのだ。
対して暴力はやはり単調。
相手が感じるのは苦痛で、それだけで何らかの要因で相手に攻撃されているというところにまで思考が至る。
被虐思考の壊れているような奴だって、相手の攻撃には意味を見出す。
それは幾万年経っても変わらない不変的なものと言えよう。
「マスクッ! マースクッ!!」
さて、指先一つで俺の腹をえぐることのできる【異能】。
それは言語的暴力とは真逆の意味を持つと言っても差し支えないだろう。
だが【異能】どころか【魔法】すら使えない我らとて、同じような意味を持つ手段を持っているのだ。
俺の掛け声で絶望に染まっていた仲間や廊下でヒロインに虐殺されていた味方、応援に駆け付けようとした者たちまで、その全員に意図が伝わった。
生徒たちの制御に失敗し、もはや指揮系統が崩れている現状だ。
これを好機と言わずして何と言うか。
ここを逃せば本当の絶望しか残るまい。
五体満足とは言えないテロリストたちも、自分の物と、息のない仲間のベストに掛かっている缶のピンを引き抜いた。
アイクたちもベストのポーチに入っている缶のピンを抜く。
俺は残った力を振り絞って、腰にあるマスクを顔に付けた。
そして同じように缶――神経ガスの入ったグレネードのピンを抜く。
「後退、後退ッ! 階段を死守しろ! 上の階から人員を呼び出せッ!」
息が続かない。
当たり前だ、胃が消えたから内部圧がなくなっている。
俺が死ぬのも時間の問題だろうよ。
それでも、と食道辺りに力を込めて指示した。
「ガースッ! スモークッ! 廊下の窓側に全員付けッ! 教室側に掃射、撃ッ!!」
続けざまに送る指示に困惑する様子もなくテロリストたちが動いた。
配置に着いた者からヒロインの斬撃に肉塊と化すが、それでも絶え間ない銃弾と神経ガスによって押しとどめていた。
何故、彼らは迷いなく俺の指示に従うのか。
簡単な話だ。それ以外に選択肢がないからだ。
混乱した状況下で、絶望という名の現実に叩きつけられた時、竦んだその足を動かすのは自身ではなく統制者だろう?
俺がその立場にあるというだけのこと。
別の教室から出てきた奴らや他階からの応援でさらに銃弾の飛び交いは増した。
アイクたちはその援護射撃を受けながら、俺を引っ張って階段の柱の陰に隠れる。
そして目の前のアイクは俺に応急治療を施そうとした。
仲間もまた、それに倣って止血しようと手を伸ばす。
が、それ以上に彼らの手が動くことはない。
「……ジョニー」
「ああ、わかってら……ビニール袋を腹に縫い合わせろ。幾分か延命できる」
内部圧で呼吸に障害が生じているだけではない。
血が腹の断面から流れることによって頭や足に血が回らなくなっている。
腹筋がないから、足に神経が通っていても体幹の調節もままならない。
言われた通りに袋を縫い合わせていく。
「タバコと、火はあるか?」
アイクがケツにあるポケットから一本のタバコとマッチを取り出した。
それを俺の口に加えさせ、マッチを近付ける。
その手を、俺は掴んだ。
「いい、俺がやる」
マッチを無理やり取り、タバコに火を付ける。
そして、俺は腹のビニールの端をその火で炙った。
アイクたちは驚いた表情でその光景を見ている。
が、腹の周りが壊死しているのか俺の痛覚はないに等しく、溶けたビニールは俺の腹に張り付いた。
と、そこに一人のテロリストが急いで駆け寄ってきた。
そいつは俺に無線機を差し出してくる。
「こちらチャーリー、スリーフォー。ジョニー・ロッドだ、応答せよ」
『こちらはチャーリーコマンド。そちらの最高階級は貴方でよろしいか』
「生徒の封じ込めに失敗して指揮が混乱している。階級の確認なぞできる状況にない」
『了解した。現時点より貴方にチャーリーの指揮権を与える。状況の説明を求む』
「ちょっと待て……」
視界の空気の色が薄くなってきたことを察知した俺は、全体に後退の命令を出した。
ここから裏門への道までの後退だ。
スモークはもちろんだが、ガスにも色付けが為されており、これが薄くなったということは換気でもしたか、あるいは主人公が【異能】を連発しているのだろう。
主人公の【好都合】だ。
目的のためにあらゆる都合が動くのだから、相手にとっての理不尽の極みに他ならない。
もはや神といっても差し支えないのだろう。
いや、終盤では主人公が神格を得ている描写があったはずだ。
まだ成長途中の俺らが相手どっているアレは、ようするに神の劣化版というわけだな。
本当にクソみたいなエロゲだ。
とにかく、後退を言い渡した後、アイクに背負われながら今一度無線機を手に取った。
「失礼した。我々は東校舎の三階で戦闘を行っており、ただいま後退に入った。裏門までの道は確保するが長くは維持できない。撤退の要請をする」
『……チャーリー、撤退を許可する。ただし駐屯地に撤退はするな。本部にもだ』
「では我々はどこに向かえばいい?」
『……分からない。とにかく人影のないところまで逃げろ。駐屯地は先ほど消滅し、ここももうじきミサイルで吹き飛ばされる』
「……了解した。ああ、俺も重症を負って長くは持たない。その前に指揮系統をはっきりさせたいのだが、我々はどこの下に着けばいいんだ?」
『アルファは全滅した。ブラボーは散り散りで、連絡も取れなくなっていってる。機能を維持できているのはお前たちだけだよ』
「そこの建物の稜線まで後退しろッ!! 右翼の後退を援護する、全員弾丸をまき散らせッ!!」
俺たちは建物から脱出し、裏門に通じる道まで後退した。
ジョニーの知識で判断して、そこまでのコンビネーションは完ぺきだった。
今ならアルファどころか、国の鎮圧部隊ともやり合えると豪語できるほどだ。
しかし肝心のアルファは既に全滅している。
当たり前だ。あいつらの殺害目標には死神たるヒロインがいるからだ。
まごうことなき神に勝てるはずもない。作中でも瞬殺されていたはず。
おそらくその足で誘拐などをしていたアルファの奴らも殺害して、芋づる式にブラボーも標的になったのだろう。
どのくらいしたらくるかは忘れたが、最終的には全員が主人公の下に集まっていた記憶がある。
それまでに少しでも多く逃げ出せるようにしなければならない。
だから俺は、アイクに無線機を託した。
酷い眠気の漂う俺をあいつの背中に置いておくわけにはいかないからな。
今指示を出しているのもアイクだ。
ジョニーから見ても、彼の指示は的確なようだ。酷く安心している。
《ここに来るまでと撤退が完了するまでの道の距離感覚は違う。あいつはそれを理解している》
たった数m、されど数m。
地形も兼ねて、その都度先読みして最適を導かねばならないのだ。
また味方の配置も考えて、常に戦線が崩壊しないよう調節する必要がある。
それを一身に背負うのは酷だろうよ。
「……俺は、ここを、通せんぼせにゃならん」
それを手助けするためにも、ここをヒロインやサブキャラたちが通るのを阻止しなければならない。
あれらは個がこの学園の中でも優秀な者ばかりだ。一人でも通せば大勢の味方が”倒される”。
また、この物語を進めるための駒でもある。
駒が揃わなければゲームは始まらない。
そういうものだろう。
校舎の壁を背に、日光すら当たらないこの場所に座り込むジョニー。
一心同体の俺たちは、精確に確実に足止めをするためにその知識と肉体を振り絞る。
――さァ、悪あガきを始めよウ。
消化不良とのお声をいただきましたが、続き要ります? (個人的にはこれ以上書くと復讐劇みたいになるのでオススメはしませんが、続きに繋げられる部分もあるにはあるので一応書けます) 7:3の割合以上で書こうと思います。
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続けて、どうぞ
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もうやめてくれよ…