傍受マニアの艦これ   作:三和

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空き瓶をゴミ袋に詰め、執務室の部屋の隅に置き中身の残ってる瓶と封の切って無い瓶を戸棚に戻し机の引き出しから出した書類を眺める……急ぎの書類は、別に無さそうだな…(仮に有っても、離島と化してるここは…本土から補給艦が来ない限り現状書類の提出は出来無いがな)

 

書類を纏めて引き出しに仕舞うと俺は席を立ち…執務室のドアを開けて廊下に出た。

 

 

 

……先の注意をちゃんと聞いたのか、それとももう寝たのかは知らんが廊下は先程と違い静まり返っている。…俺はタバコの箱をポケットから取り出した……最後の一本か。執務室に入ればストックがまだ有るが、わざわざ取りに戻るのも面倒臭い…今日はもう寝るだけだし、良いだろう…そんな事を考えながらタバコに火を着けた。

 

…修繕されたにも関わらず、来た頃何度も嗅いだ血を彷彿させる鉄臭い匂いと、タバコとは違う焦げ臭い匂いが今も漂っている気がして顔を顰める(まぁさっきは感じなかったから気の所為だろうがな)

 

…そう言や、あの頃元帥の計らいで配属された最初の艦娘の何人かは幽霊を見たと騒いでいた事も有ったな……艦娘との距離が縮む切っ掛けになった事柄の一つでは有るが、はっきり言って最後を除けば決して楽しい話じゃなかった…

 

発端は…そうだ、ちょうどさっき話した駆逐艦…電が執務室に来た事だったか…

 

「……幽霊?」

 

「はいなのです…」

 

「……見たのか?」

 

「はい、電も見たのです…」

 

「……どんな姿だったんだ?」

 

「…信じて、くれるのですか?」

 

「…お前一人なら見間違いかも知れんが、他の奴も見たんだろ?ま、もちろん見たのがそれぞれ違う奴とかなら話は別になるがな…」

 

「皆、見たのは同じ幽霊さんなのです…」

 

当時俺は後から来た艦娘の多くとまともな会話が出来ていなかった…駆逐艦なんて近寄りもしなかったな…こういう時でも無けりゃ朝っぱらから電がこの部屋まで来る事も無かっただろう。

 

「…じゃ、信憑性は有るって訳だ…仮に幽霊では無かったとしても見る原因は間違い無く有る。…で、そいつの特徴は?」

 

「…長い黒髪の…その、顔は分からないのです…後ろ姿でした…」

 

「他の奴も全員、後ろ姿しか見てねぇのか?」

 

「はい…」

 

「見たのは何処だ?」

 

「…寮と、ここなのです…」

 

新築の艦娘寮はともかく…"ここ"、ね…何で夜中に用の無い筈のこっちに来たのかは知らんが、取り敢えず今回は聞かないでおくか。

 

「…成程な、話は分かった。今夜から俺と叢雲で寮の見回りをしてやる。」

 

「え…?本当ですか…?」

 

「こんな事で嘘なんて言わねぇよ。…話はそれだけか?」

 

「はい。」

 

「そうか。なら部屋に戻ってな…残念ながら今日もまだ任務はねぇ。」

 

「はい…その、司令官さん?」

 

「何だ?」

 

「ありがとうなのです!」

 

「…礼は解決してから言え、そもそも俺は霊能力者じゃねぇんだ…あんま期待はすんなよ?」

 

「はい!」

 

 

 

「随分安請け合いするじゃない?」

 

「不満か?」

 

「別に?ただ妙に親切だなって思っただけよ。」

 

「邪な気持ちはねぇよ。労働環境整えるのも上司の仕事だろ?」

 

「あの子たちに割り振る、肝心の仕事が無いけどね…」

 

「書類仕事回すにしてもな…ちと面倒な案件が来やがるからな、ここは…」

 

「アンタのせいでしょ?」

 

「けっ。文句ならあのジジイに言えっての。」

 

そもそも何で何も知らなそうな連中を回して来るんだかな…

 

「…で、聞いても良いか?」

 

「どうぞ。」

 

「…例の幽霊、心当たりはあんのか?」

 

「そもそもアンタ…信じるの?」

 

「…姿は見た事ねぇが、幽霊の仕業としか思えねぇ状況に遭遇した事なら…二度程な。」

 

「……何があったの?」

 

「脱線するから、また今度な。」

 

……ま、結局今に至るまで話してはいないがな。

 

「…で、心当たりは?」

 

「……有るわよ…有り過ぎて吐き気がする位にね…」

 

「……聞かねぇ方が良いのか?」

 

「この状況で話さない訳に行かないでしょ…」

 

「…お前の考える幽霊の正体…そいつは誰だ?」

 

「…私と同じ吹雪型…あの日、私の誤射で死なせてしまったあの子…」

 

「そいつは?」

 

「…三番艦の…初雪よ。」

 

「…成程な。で、どうする?」

 

「どうするって何がよ…」

 

「今夜からの見回りだ…お前は外れるか?」

 

「冗談でしょ?仕事だから…サボらないわ。」

 

「…本音は、一人でここにいる方が怖い…か?」

 

俺がそう言うと普段俺に憎まれ口を良く叩く叢雲にしては素直に頷きを返して来る…成程、本当に怖い訳か。

 

「…でも、それ以上に「ん?」あの子に会えるなら…もう一度会いたいのよ…」

 

「会って、どうするんだ?」

 

「どうするって?」

 

「謝罪がしたいのか、それとも…そいつに取り殺されでもしたいのか?」

 

「……分からないわ…でも、会いたいの…」

 

「…仮に本当にそいつが幽霊として今もこの世をさまよっていたとして…お前の前に現れてくれるかは分かんねぇがな…」

 

「何でよ…」

 

「忘れたか?ここ…鎮守府内でも目撃されてるんだぜ?だが夜に寮では無く、ここで過ごす事の多いお前の前に出て来た事は一度も無い。」

 

「っ…」

 

「会いたくない程恨まれてるのかも知れねぇな…で、どうするんだ?」

 

あるいは、俺と一緒だから会いたくねぇのかも知れねぇがな…

 

「見回りには参加する…それで…あの子にもう一度会うの。」

 

「そうかい…なら、俺からはもう何も言わねぇよ。」

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