「んじゃ、行くか。」
「……」
俺の言葉に叢雲が頷き、席を立って部屋を出ようとした俺に音も無く近付き自分の手を俺に触れさせる……溜め息を吐きたくなるのを堪え、俺は叢雲の手を軽く握った。
……海軍上層部の解体の為に行われた会議、あの後に一部の提督から「叢雲が大人しい…羨ましい!」みたいな事を言われた(何人かは俺と同じく秘書艦で且つ、例のケッコンカッコカリとやらを済ませているらしい…)
確かに会議に秘書艦として着いて来た他の鎮守府の『叢雲』はガンガン意見するし、何なら声もデカくて吐く毒も普通の一般企業の会議なら間違い無く場の空気が死ぬレベルの絶好調っぷりだった(とは言えアレでも他の口の悪い艦娘の中ではマシらしいが、今回毒を吐くのは『叢雲』だけなので非常に目立っていた)
そんな中でこっちの叢雲は他の鎮守府の提督にお茶を入れてみたり(何でウチが議場で、主催もウチになってるんだか…元帥殿の所で主導するのが筋だろうに)仮に意見するとしても、かなり控え目な部類では有ったと言える…(相当ヒートアップしてたのか、最早指されてもいないのに発言してたからな『叢雲』共は…)
もちろん、余所行きと言うか…猫を被っているので叢雲もアレが素では無いがな(そう思っても実際『叢雲』の口調はそれなりにキツい…)
…で、意見自体は一理有るもののやはりそれぞれ同じ『叢雲』と言う艦で有っても、考え方は異なるらしく見事に会議そのものは紛糾(主に騒いでたのは『叢雲』含む秘書艦の連中だったがな…)結局次の会議からは給仕する叢雲と元帥のジイさんの補佐をする赤城と夕立以外の艦娘は全員締め出しされた…
そんな状況で、確かにこっちの叢雲は飛び抜けて大人しかった…最もあの頃にはだいぶマシになり始めていたとは言えまだまだ不安定だし、当時初めて会った頃の叢雲を知ってる俺としては内心溜め息吐きたくなったし…そんなに羨ましい、と思うなら代わってくれと思っていた…最も意味無く叢雲の株を落とす程、俺もクズでは無いし…当人の心情を思えばあの場に叢雲がいなくても真実を話そうとは思わなかったが。
……結局何を言いたいかと言えば、この幽霊騒ぎの頃の叢雲は情緒不安定通り越して、俺がいないと最早奇行に走りかねないレベルだったと言う訳だ(後から聞けば、ウチの艦娘には俺たちは単純に仲が良く見えていたらしい…)
「……これから行くのは寮だから、最悪他の艦娘に見られるが…良いのか?」
ほとんど泣き出す一歩手前みたいな不安気な顔をして、繋がれた俺の手を力を込めて握る叢雲に問いを投げる(痛てぇ…)
「……別に…良いわ…」
最早どうでも良いと言ってる様にすら聞こえる投げやりな答えにまた溜め息を吐きたくなる…
「…そうかい…別に離れる気はないから、もう少し力緩めてくれねぇか?」
そう言うと軋み音が聞こえそうな程俺の手に込められていた力が少し弱まる…(正直まだちょっと痛いんだが、これ以上言っても無駄そうだな…)
「…行くぞ。」
俺は執務室のドアを開けながら、明日は訳知りの加賀にも声をかけようと考えた(毎日コレだと俺がもたん…)