傍受マニアの艦これ   作:三和

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鎮守府を出て、宵闇の中を歩く…そう言や外に出るなんてのも久々だな…ここに来て気付けば半年…監視の目を気にしていたから外に出ようなんて考えもしなかった…(今になってみれば…当時俺を監視していたのは実は加賀しかおらず…俺をここに押し込んだ奴らよりは比較的俺寄りで、そうでなくても加賀は気分転換に外に出たくらいで一々雇い主に報告自体しないだろうって事位は分かるんだかな…)

 

半年ぶりの外の空気を肌で感じながら、海が近い為漂って来る潮の匂いを嗅ぎ取る…そんな事をしながら艦娘たちが自作した寮に辿り着いた。

 

「…ここよ。」

 

鎮守府を出て、先程よりは安定して来たのか暗闇の中迷う事無く俺を先導していた叢雲が足を止めた(相変わらず俺の手は力強く握り締められたままだがな…)

 

「へー…木造みてぇだが、中々洒落てんじゃねぇか。」

 

俺がそう言うと辛うじてお互いの表情は分かるレベルの暗闇の中、叢雲が微妙な顔を向けて来る…

 

「…何だよ「いや、司令官なのに部下の寮に一度も顔を出した事も無いって言うのが妙な話だと思っただけよ」…何言ってんだ、お前?」

 

世間との感性のズレなのか、それとも「艦娘」としてはそれが普通なのか知らんが…俺は叢雲の言った事に呆れの声を上げた。

 

「え?」

 

「艦娘ってのは女だろ?上司だろうが上官だろうが…"女子寮"に肩書きを盾に用も無くやって来る男ってのは…単にヤベェ奴じゃねぇのか?」

 

「…それも、そうね…」

 

俺の言った事に若干戸惑った雰囲気が伝わって来たものの…言われた事自体は飲み込めたのか肯定の返事が返って来る。…全く、何が悲しくて呼ばれもしない女子寮に普段行く必要が有るんだかな(そうでなくても、ウチに現状所属してるほとんどの艦娘からあからさまに敵意や不信感を向けられてる俺が出向いて、歓迎される訳も無いけどな)

 

「…んじゃ、案内を頼むぜ…お前は顔出した事有るんだろ?」

 

「…一応…ね。」

 

歯切れの悪い叢雲の言葉に一気に不安になったが、気を取り直して寮の入り口まで向かった。

 

 

 

建ってそれ程間も無いのと、手入れはきちんとされてるのか木製扉特有の煩い軋み音とかは鳴らず引き戸のドア自体はスムーズに開いた…一応そっとやった訳だが、そこまで気を使う必要も無かったな…

 

開けた先の空間は何も見えない…暗闇が広がっている…目を凝らして見ていると慣れて来たのか、先は見えないが数戸のドアが並ぶ廊下の輪郭が僅かに見えて来た…取り敢えずポケットから執務室に備え付けられていて、念の為持って来ていた懐中電灯を取り出す(置いてあったスペースを見るに本来二本有る筈が、実際は一本しか残ってなかった…)

 

「変ね…」

 

スイッチを入れようとした所で横で叢雲がそう口にした。

 

「…違和感が有るなら、取り敢えず言ってみろ。」

 

既に厄介事の予感を感じながら灯りの点った懐中電灯を天井に向け、蛍光灯が並んでいるのとまぁまぁ広い廊下で有る事を確認しながら俺はそう口にした。

 

「…この寮、一階の廊下の蛍光灯のスイッチは入り口にしか無いのよ…」

 

「…成程、そいつは妙だな…」

 

俺の目の前にはそれなりに広い廊下が広がっている…別に俺は寮の建築事情に詳しい訳じゃないが、一般的な常識としてこういう寮を建てる場合は大抵共同便所は廊下の端に造るのが普通の筈だ…この状態だと、例えば夜中にトイレに起きた時入り口から離れた部屋に住んでいる奴は…この暗闇の中トイレに向かう事になる…

 

「……」

 

一旦叢雲に手を離してもらい、土間で靴を脱いで…取り敢えず大量に並んでいるスリッパを跨いで上がり框状になっている板敷きの廊下に上がる……溜め息を吐きながら適当に脱ぎ捨てた俺の靴と自分の靴を几帳面に揃えようとしている叢雲を見つつ、さっき見つけた蛍光灯のスイッチらしき物に手を伸ばし触れてみる…

 

「……停電?」

 

「その様だな…」

 

カチカチと音を立てながら何度もスイッチを押してみるが蛍光灯に反応は無い…ウチの鎮守府は同じ島内に有る無人の発電所から電力を供給してるから恐らく、ここもそうなんだろう…

 

「大して明るくも無いが、一応鎮守府の方には電気が点いていた…」

 

「…つまり、ここ限定で停電中…?」

 

「そういう事だな…」

 

さすがにこの寮だけピンポイントにトラブルが起きるとは考えにくいので、施設側の方に問題が有る可能性は低いと言えるだろうな…

 

「行くぞ…」

 

思っていたより面倒な状況で有る事に溜め息を吐きたくなりながらも(俺が促した途端、再び俺の手を力一杯掴む叢雲も原因だが…)俺は懐中電灯の頼りない灯りに照らされた廊下に目を向けた。

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