廊下の中間くらいの所にある階段の前で足を止める……今は何も聞こえない。
「…音、しなくなったわね…」
「ここでウダウダ言ってても仕方ねぇ、とっとと上るぞ。」
「…ホントに…行くの…?」
「嫌なら鎮守府に帰……分かった、俺が悪かった…だから手に力入れんな…」
帰れと言おうとしたら、泣きそうな顔した叢雲から俺の手を力一杯握る…と言う返事が返って来た…マジで勘弁してくれ…
動きの鈍い叢雲を引っ張って何と上がり切った先はほぼ同じ構造の廊下…案内をして貰おうかと横の叢雲の方を見れば…
「…ごめんなさい、分からないわ…」
聞けば俺は気付かなかったが、加賀が住んでるのは一階で、二階以降には上がった事が無いと言う…ただ…
「お風呂とトイレは…一階にしか無い筈よ。」
「確かか?」
「加賀さん、ここの纏め役だから…確かよ…」
微妙に言葉足らずだが、つまり…ここの管理人に近い加賀がそう言っていたと言う事か…なら、確かだな…
廊下を照らしながら歩くが…特に異常は無い。
「…三階に行く…?」
「いや…」
良く見ると紙の貼られてないドアがいくつか有る…要は空き部屋が有るのだ。…その内の一つの前に立った。
「…開けるぞ。」
「……いや…あんたがここを女子寮だって…」
「階段上っていたのはほぼ間違いねぇんだ…咄嗟に隠れるとしたら人の居る部屋より、先ずは空き部屋を選ぶだろ。」
ドアノブに手を掛ける…鍵はかかっていない。俺はドアを開けた。
懐中電灯に照らされた部屋の中には…最低限の家財道具が有るくらいで、特別何か有る感じは無い…中に入る…後ろでドアが閉まった。
「ヒィッ!」
「落ち着けよ、手を離したから閉まったんだろ?」
過剰に反応する叢雲の手を引いて、ちゃんとドアが開く事を確認する…もちろん廊下には誰も居ない。
「…な?」
「……ごめんなさい、取り乱して…」
「気にするな。」
今更気にしなくても…そんなのでお前の評価は下がらねぇよ。
ベッドの下、クローゼットの中…机の下も見たが人が隠れている様子は無い。
「…次の部屋だな…」
「空き部屋、全部見る気…?」
「当然だろ。」
俺はドアに手を掛けた…!
「…また足音…?」
「……」
ドアをそっと開ける…外の見える範囲に誰も居ないのを確認してドアを一気に開けた…暗闇の広がる廊下には誰一人居ない…が、物音は聞こえる…
「……上だな、この上が最上階だったか?」
「…そうよ、屋上は無いから上なら…そこしか無いわ…」
部屋から出て、階段へ向かう…後ろからドアの閉まる音が聞こえた。
「っ!」
「だから一々過剰に反応すんな。」
完全に動きの止まった叢雲をほとんど引きずるようにして歩く…やれやれ…マジでビビってる場合じゃねぇな…