傍受マニアの艦これ   作:三和

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「…おい、さすがに階段は無理だ…いい加減自分で歩け。」

 

「……」

 

駆逐艦の艦娘だけ有り、比較的小柄と言って差支えの無い叢雲…艤装を展開してる訳でも無し…なので重いと言う訳でも無いが、動く気の無いこいつを引っ張って階段を上がるのはさすがに無理が有る…

 

俺が手を引くのに合わせて緩慢に足を動かして階段を上って行く叢雲……だから行きたくないなら帰れ、とはもう口に出さない……俺の手がもたないからな…

 

 

 

階段を何とか上り切り、付近一帯を照らして空き部屋を探す……とは言え、見えている範囲に空き部屋は見当たらない…

 

「……」

 

取り敢えず左に曲がり、廊下の端まで歩く……こちら側に空き部屋は無い様だ。俺は踵を返し、反対側に向かって歩き出した。

 

 

 

「…ここだけか。」

 

「っ!」

 

叢雲が俺の手に力を篭める……一応こっちも端まで歩いてみたが、結局三階には空き部屋は一部屋しか無い様だ……二階には何部屋か空いている部屋があった気がするんだが、一体どう言う基準で部屋を振り分けてるんだ…?

 

「…あ…開けないの…?」

 

「……」

 

俺はそこで動きを止めてしまう…三階に他に空き部屋が無い以上、ここに居る可能性は高い……そう意識してしまうと身体はピクリとも動こうとしなかった。自分でも幽霊は半信半疑だったが…いざ居るかもしれない状況に遭遇すると、俺はこんなにもブルっちまうのか…

 

「…あんたも…怖いの…?」

 

「…ん?」

 

「私の手に…あんたの手の震えが伝わって来たから…」

 

「……ああ、怖いね…さっきも…そう言ったろ…」

 

「…わ、私が開ける…?」

 

「……そんなに震えた声で言われてもな…良い、俺が開ける…」

 

ここまで来て開けない訳にはいかん…さっきも言ったが、不審者の可能性が有る以上…このままにして帰る訳には行かない…俺はその場で深呼吸して気持ちを落ち着かせながら考える……

 

先程からほとんど何の音も聞こえない辺り、さっきの音の主がここに居る可能性は高い…逃げようとしていればさすがに音で分かるだろう…袋の鼠って奴だ……追い詰められてるのは、実は俺たちかも知れないがな…

 

「……」

 

俺はドアノブに懐中電灯を持った手を伸ばし…一旦手を止めてから、伸ばした手をドアの真ん中くらいまで持って行ってそのままドアをノックした。

 

「……何してるの…?」

 

「最後のチャンスって奴だよ。」

 

お互いにな…っ!

 

「……ノックが返って来た…!?」

 

「これでハッキリしたな…中には間違いなく、誰かが居る…」

 

自分の部屋が有るにも関わらず夜遅く…それもこんな暗闇の中空き部屋に入る理由も無い……つまりウチの艦娘じゃねぇって事だ…

 

「…で、でも誰かのイタズラ…かも…」

 

まぁ本来ならそうじゃないとは確かに言い切れねぇかもな…けどな…

 

「さっきその可能性はねぇって言っただろ。つか、イタズラのつもりならさすがにやり過ぎだ。」

 

俺はドアに耳を着けてみる……っ!

 

「どうしたの…?」

 

「微かだが、中から音が聞こえる…」

 

それはちょうど…ドアの前で息を潜めていればこんな音がするんじゃねぇかって感じの極僅かな音だ…

 

「やっぱりイタズラじゃ「それならそれに越したことは無いんだがな…どうも違う気がすんだよな」…え?」

 

俺はドアから離れた。

 

「叢雲、一つ聞く……仮にコレがイタズラだとしてだ…あくまで例え話にはなるが、お前も仕掛け人だったとして…こんな暗闇の中、誰も居ない部屋で一人で息を潜めて隠れるなんて出来るか?」

 

「……ちょっと、厳しいかも。」

 

「だよな。」

 

高々人をちょっと驚かそうとかその程度の感覚でここまでやる奴は中々居ない。

 

「イタズラだとしたら、この状況で一人で隠れてるのはちと無理が有る……仮に他の部屋に隠れてる奴が居るとしてもな…」

 

「つまり?」

 

「この部屋には恐らく一人しか居ない…そんな可能性はちょっと低いんじゃねぇか?」

 

ジャンケンで負けたとかそんな理由にしても、一人で生活感の無い部屋に息を潜めて隠れるなんて状況は誰でも嫌がる筈だ……そういう奴こそ"本物"に遭ってしまうのは良く有る話だしな…

 

「じゃあやっぱり…!」

 

「最も、イタズラじゃねぇって可能性が高いだけで、実際は呆れるくらい手の込んだ事をしてる可能性も有る。」

 

正直、電は嘘をついてる様には見えなかったけどな…

 

「…おい、そこに居るのは誰だ?…ウチの艦娘か?今なら怒らねぇでいてやる…もしそうなら…出て来い。」

 

相手にはもちろん、俺たちにも最後の警告となる言葉を発してみる……相変わらず、言葉による返事は無しか。もう一度ドアに耳を着けてみる…っ!…おいおい…

 

「…やっぱり居るのは間違いねぇ、つか今度は確かに呼吸音が聞こえた…」

 

まるで相手は隠すのを止めたかの様な…何がしたい?

 

「もう警告はしたぞ。」

 

相手に聞かせる様で…実際は自分に言い聞かせながらドアノブを掴む…!

 

「開けるの…!?」

 

「開けるしかねぇ。仮に不審者だった場合、寝ていたらいくら艦娘でも対処出来ねぇだろ。」

 

トイレのドアと違い、いわゆるレバータイプのドアノブを斜め下に下ろし…ドアを引こうとした時…!

 

「…足音…!?」

 

「今度は下からかよ…」

 

下方向から静まり返ってるせいか、今度は確かにハッキリと足音の様な音が聞こえた…いや、可笑しい…どう言うつもりだ?さっきはほとんど音を立てない様に進んでやがったのに…

 

「…どうするの?」

 

「あん?」

 

「だから…こっちを先に確認するのか向こうを見に行くのか、よ…」

 

「……」

 

俺は少し考える…まだ足音は聞こえやがんな……俺はドアノブから手を離した。

 

「…向こうを先に見に行く。」

 

「こっちは良いの?」

 

心做しか少し安心した様な響きを感じる叢雲の言葉に答える…

 

「…動いてる奴を捕まえるのが先決だ。二階は空き部屋が多かったしな、そっちに逃げられると見つけるのが厄介になる…」

 

「でも…私たちだけで捕まえられるかどうか…」

 

「最悪艦娘たちを起こすさ。不審者って事なら人海戦術使ってでも捕まえねぇと…面倒な事になるからな…」

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