「待たせたわね。」
「いや、良い…んじゃ、行くぞ。」
加賀が一緒に居るせいか、叢雲は先程までに比べて落ち着いており、階段もスムーズに上る事が出来た(相変わらず俺の手は離してくれないけどな…)
「ここね…?」
「ああ…」
例のドアの前に来ると後ろにいた加賀は前に出て来た……ノックする…
「…特に、返事は返って来ないわね「その…加賀さん、さっきは」ああ、大丈夫…信じてない訳じゃないから。」
「え?」
「さっきの話し合いでそれなりに時間を使ったからな、逃げてない方がそもそも不自然なんだよ。」
加賀が耳をドアに着ける…
「……特に音はしないわね、多分もう誰も居ないと思うけど…一応確認する?」
「そうだな、ドアの前に居ないだけでクローゼットに隠れてる可能性も有る。」
「了解。」
中に入りクローゼットを開けたり、ベッドの下を覗き込んだりしたが…結局人が居た痕跡は見つからなかった…
「…加賀、空き部屋と風呂…トイレ以外に人の隠れられる場所はどっか有んのか?」
「…無いわ、ここはあくまで艦娘の休息の為に建てられた建物で、特に娯楽の為の場所は用意されてないし…人の隠れられそうなデッドスペースは無いわ。」
「そうか…」
ふむ、振り出しに戻ったか…
「…空き部屋全部見ても良いけど、取り敢えず例の「初雪」の下駄箱まで案内してくれる?」
「ああ。」
「…確かに「初雪」と書かれているわね。」
俺が渡した懐中電灯を持った加賀がそう言って蓋を開ける…直後に中に手を突っ込んだ…指を中に滑らせてるのがこちらからでも見える…
「…少しだけど埃が積もってるわ。つまり、一応最低限掃除はされていたけど正式に使われた事は無いと言う事でしょうね…」
加賀が蓋を閉じる…
「…んじゃ、やっぱここは元々誰も使ってなかった事になるな。」
「本来なら紙も当然貼られてない筈でしょうね…」
そう言って加賀が下駄箱に貼られた紙を剥がし始めた。
「加賀さん!?何をしてるの!?」
「コレをやったのはどう考えても幽霊じゃないわ、人間よ。ここの艦娘たちが容疑者になるわね…」
「聞いて回る気か?」
「…答えるかは分からないけど、それが一番手っ取り早いもの。明日にでも聞いてみるわ。」
「成程な、犯人が分かったらこっちにも報告してくれ。」
「処罰するつもり?」
「信賞必罰は基本だろ?まぁそう大事にはしねぇよ、ここは人手不足だからクビになんか出来ねぇし…やった奴だってそんなに大騒ぎする話だと思ってねぇだろうしな…」
何せ、ここに居る加賀ですら「初雪」の死んだ理由は知らなかったんだからな…
「一応、単なるイタズラと思わず理由も聞いといてくれ。」
「…イタズラ以外にコレ、やる理由有るのかしら…」
横の叢雲がそう言う…
「…必ずしもイタズラ目的って事も無いだろ、例えばここに来る前に初雪と仲の良かった奴とかなら…ここに来る事を願って願掛けのつもりでやった可能性も無くは無いからな…」
「願掛けって…ここは「ここは軍事施設の位置付けでは有るが、あくまで寮だ。自分の家の様に生活してるからそこら辺頭から抜けちまっても仕方ねぇ…お前と初雪の事情は知らなかったのは確かだろうしな」……」
「まぁとにかく…犯人が分かったら貴方に報告すれば良いのね…?」
「一応先に俺に伝える事は言っておけよ?もちろん、正直に告白するなら内容次第にはなるが基本、怒らねぇともな。」
最も、俺に注意されて反省するかは分からねぇがな…
「了解。」
「そう言や加賀?」
「何かしら?」
一階の空き部屋を調べてる最中…俺は加賀に声を掛けた。
「ここに来てから気になってたんだが、ここの部屋の振り分けってどうなってんだ…?三階は一部屋しか空きがねぇのに二階は数部屋空いてやがるし、ここ…一階に至ってもそれなりに空きが有るよな?」
「…ああ、それね…個人の好みなのよ。特に部屋分けのルールは決めてないの…何なら二人で一部屋使ってる子たちも居るし…」
「成程な。」
妙な振り分けだな、と思ってたが…まさか艦娘たちの好みだったとはな…
「…さて、ここもハズレか…一階の空き部屋はコレで最後だったか?」
「ええ。」
「となると、後は二階か…」
最も一度は二階に移ったが、俺たちの居ない間に三階に戻った可能性も……いや、それだと本当に相手は何をやってるのか分からねぇな…何の為に隠れてる?
「どうしたの…?」
叢雲が声を掛けて来て、俺は答えの出ない考えを打ち切る。
「いや、何でもねぇ。さっさと二階を調べるぞ。」
そうだ、俺が理由なんて考える必要はねぇ…相手を捕まえて聞きだしゃ、それで済む筈だ…