「ん、そうだ…ああ…早めに頼むわ。」
俺は通信を切った。
「終わったの?」
「ああ…ん、サンキュー。」
叢雲が持って来た湯呑みに口を着けて中の茶を啜る…ふぅ。
「…と言うか…あんた民間の人にも敬語使わないのね…」
「…ここの通信機で連絡出来る時点で全くの一般人な訳ねぇだろ…まぁ軍属では無さそうだったけどな…」
昨夜加賀に言われた通り、俺は件の業者に連絡する事にしたわけだが…俺は専属の業者について昨日知った訳で、そこへの連絡先は残念ながら加賀も知らされてないし、何ならここには電話が無い…まぁ完全な離島と化してる上…無人になったここに電話を置く理由が無いのだが…
しゃあないので朝一で爺さんの方に通信を繋ぎ、相談をした所…元々俺の所に来てるのは爺さんの伝手で派遣されている業者との事で取り敢えずそのまま周波数を教えて貰った。
『いやー…伝えるのを忘れておったわい…スマンスマン…』
…と、笑いながら宣う爺さんにイラッとはしたが…そもそも俺や艦娘たちが最低限生活出来る様に上と交渉するのは本来俺の役目で有った筈であり…提督としての役割全てを実質爺さんに押し付けている状態に有る俺から文句が言える筈も無かった…
…そして…結局上の言いなりになってる俺の最近の主な仕事は…
「…そう急がなくても良いんじゃない?」
「スタンプを押すだけだからな、直ぐに終わる…」
ほぼ白紙同然の紙の指定された場所に提督の判を押す……コレだけだ…恐らく後から内容を印字するのだろう…ヤベェ事に加担させられている予感は有るが、今の俺に従う以外の道は無い……最も、何をさせられてるかも分からなかったこの頃と…しっかりヤバい内容を印字した書類を回される現状…どっちが良いのか聞かれたら何とも言えねぇがな…多少胸糞悪くなっても…余程の内容で無ければ結局俺は判を押すしな…
「……月一でしかも余裕を持ってこの量全部終わるってバレたら…この紙、枚数は倍に増えるんじゃない?」
「…あ。」
…まぁ…当時の俺がとにかく考え無しだったのは否定しない。
「…んで?取り敢えず艦娘たちの要望はコレで全部か?」
「ええ。」
艦娘たちからのここの現状についての不満を聞いた加賀からの話を纏めて行く…これが俺のもう一つの仕事だ……後はこれしか無いがな。
「毎日毎日…良くもまぁこう色々文句が出るな…」
「当然でしょ?最低限訓練は出来ても遠征は出来ず基本的に待機…外に娯楽施設は無いのに島からは一切出られない…何かで遊ぼうにもそう言う道具もまだまだ少ないわ…」
……これから先、仮にここの頭数が増えたら更に物が足りなくなるんだろうな…
「トランプは有るんだ…全員でババ抜きでもやってろよ「良くても一人分の枚数少なくなるけど?」…じゃあ神経衰弱「飽きるし、個人差が出るわね」…そう言われてもな…」
一般人が引き上げている為に見る影も無いが、この島にはちゃんと店が有った形跡が有るのだ…最低限娯楽施設さえ生きていたならこうも頭悩ませる事も無かったんだろうけどな…
「ここは元々軍事施設だ…艦娘たちの特性的に任務任務だともたないのは分かるが、遊べないのが普通なんだぜ?」
艦娘は多くが一定の年齢の女の見た目をしていて、性格もそれに準ずる……要は子供だって事だ。
「大体、その任務も無いじゃない…」
「それを俺に言われてもな…取り敢えず娯楽物資は追加申請する…それで良いか?」
「ええ…それと、例の貼り紙の件だけど…皆に聞いてみたわ…」
「どうだった?」
「……該当者はゼロよ。聞いた限りでは、ね…」
「…怒られると思ったから黙ってるのか、それとも本当に誰もやってないのか…分からねぇな…」
「取り敢えず犯人を名乗り出た子はいなかった…それが事実よ。」
「ん、了解。んで今夜からの見回りについてだが…」
「待ち合わせはここ…私がここに来るわ…何時頃が良いかしら?」
「11時には来てくれれば良い…間違っても早めに来るなよ?幽霊ってのは遅い時間と相場が決まってる。」
「…それならもっと遅くても良いんじゃ…?」
自信無さげに叢雲がそう意見する…
「余り遅いと俺らが寝坊しちまう…何が有るか分からないのに寝坊は出来ねぇだろ…」
「成程ね…それで見回りのローテーションは?」
「余り決める意味が無いな…昨夜と同じ状況なら何度も寮内を駆けずり回る羽目になる…」
「じゃあ流れで…で良いかしら?」
「…それで良い…さて、後は用が無いなら下がって良い…そろそろ昼だぞ。」
「そうね…じゃあ…叢雲、貴女も来る?」
「良いわ、ここで食べるから…」
「そう、分かったわ…」
加賀が執務室を出て行く……叢雲が他の艦娘と上手く行って無いのは俺ももう知ってる訳だが、俺からそれについて意見するつもりは今の所無い。
「…今日は何味にするんだ?」
「じゃあ、醤油でお願い。」
「……昨日も醤油じゃなかったか?」
「良いの。今日もそう言う気分だから…」
「そうかい。」
俺は執務室の隅に避けた瓦礫の横に置いてある段ボール箱からカップ麺を二個取り出し、台所へ向かった…