「はい。」
「ああ…」
叢雲から出された茶を啜り、椅子に背を預けながら何となく部屋を見渡す……壁には廊下が良く見えるデカい穴が開き…天井に至っては亀裂が走っている…軍の施設だけ有って元々それなりに頑丈には作られてるんだろうが…それでもぶっちゃけ原型が残ってるのが不思議な位だ…
「……何見てるのよ?」
「ん?…いや、クソみてぇな職場だなと思ってな…」
突然部屋に踏み込んで来た憲兵共…頭を警棒でぶん殴られて、気が付けば鉄格子の嵌った牢屋の中…ろくに睡眠も取らせて貰えないまま尋問を受け、それが終われば望んでもいないのに与えられた軍属…それもとっくに壊滅した鎮守府でのお飾りの提督としての肩書き…しかも元の身分は剥奪され、クビには絶対にならないが…これから先市井に戻れる保証は無い…
と言うか…俺は自由に使える給料なんて物は一切貰えてない…まぁ払われても、俺はここから出られないんだけどな…外に出ても店の一つも無いが。
「いや、悪い…忘れてくれ。」
「…聞いて欲しくないなら聞かないわ。」
物思いに耽るなんてのは俺らしくない…せめて忙しいなら余計な事を考えないで済むんだけどな…
「……」
体勢を戻してきちんと座り直し、また湯呑みに口を着ける……元々の上司だった指揮官の好みか知らんが叢雲の入れる茶は毎回少し苦味が強い…まぁ入れてもらってる身で文句なんて言うつもりは無いが。
「…で、何か用か?…電。」
昼飯を食い終わった辺りで客が来る…誰かと思えば電だった。
「その…結局どうなったのか…聞きたかったのです…」
……雰囲気から察するに誰かから聞きに行かされた、だな…普通に考えてこの状況で電が聞きに来るのは可笑しい…よくよく考えてみれば、寮の管理をしてる加賀に幽霊騒動について一切話が伝わってなかったのも不自然だ…
……艦娘たちの間で派閥でも出来てるのか?
「…いや、悪いが今の所収穫は特に無い…もちろん、見回りはちゃんと行ってるから安心してくれ。」
「はい、分かりました…」
電が部屋を出て行く…艦娘たちの間で何か起こっていてもそれは今の俺にどうこう出来る話じゃない……と言うか、それ以上に気になる事も有るしな…
「様子が可笑しかったわね…」
「そうか?普通だろ。」
「……あんた、分かってて言ってるでしょ。」
「さて。何を言ってるのか俺には分かんねぇな。」
異常に気付いていてもどうにかする術がないならそれで話は終わりだ…今回の場合他に優先すべき事も有るしな……今気付いた別の違和感についても然りだ…可笑しくは有っても当然口に出す理由すら無い…気付いた所で手に負える訳じゃないしな、流すに限る。