天龍と一緒に執務室に戻り、叢雲と加賀と合流……思いの外時間を使った事も有りさっさと寮へ向かう。
道中二人に先程天龍にした説明をそっくりそのまま話して加賀が警戒した表情になり、叢雲が分かりやすいくらい怯えるのを横で感じながら俺は加賀に一つ質問をする。
「そういや加賀?」
「何?」
「…どうして天龍を呼んだ?」
「そりゃオレじゃ不満って意味かい、提督?」
「…そうは言ってねぇよ…ただ、気になっただけさ…」
結果的に先程の天龍の機転で俺は助けられたのだ…さすがの俺でも感謝はしてるし、来た事自体にも当然文句は無い。
「…貴方も身を持って知ったと思うけど…この子結構度胸も有るし、落ち着いてる方だからね…こう言う案件なら持って来いかなって思ったのよ。」
「…そんなにオレを褒めても何も出ないぜ、加賀さん?」
「大丈夫、こっちは仕事をしてくれれば良いだけだから。」
「…まぁそう言う事なら…つっても幽霊相手の見回りねぇ…別にオレ霊能力者とかじゃないし、見える訳でも無いんだけどなぁ…今回の話だって加賀さんに言われるまで何も知らなかったし…」
「安心しな、元々ここに居る全員素人だ…俺と加賀が前にたまたまそういう事に遭遇した事がある程度だ……まぁ今回の幽霊についてはまだ会った事無いけどな…」
「…何か鎮守府来る時にチラッと加賀さんに聞いたけど…目撃証言についてはもう大体加賀さんが纏めて有るんだって?」
……ん?
「加賀、先に話してなかったのか?」
「……この子が待ち合わせに遅れて来たからね…」
「悪かったよ…龍田の奴が離れてくんなくてさぁ…つか提督…割とあんたのせいでも有るんだぜ?」
「あん?俺の?何でだ?」
「…あんたの素性が分からないからだよ…今回の見回りの話だって、あんたが居るって知った途端俺にしがみついて離れなくなってさぁ…挙句には「どうしても行きたいなら私を倒してから行きなさい…!」とか言って薙刀構えやがるし…」
「そいつぁ悪かったな…ちなみにそう言われて、お前はどうしたんだ?」
「……普通に隙を見て、背後に回って首筋に手刀叩き込んで昏倒させた…申し訳無いけど縛ってもおいたよ。」
……えげつねぇな…
「お前ら確か姉妹だろ?毎回そんな事してんのか?」
「…あんた何か勘違いしてるみたいだけどさぁ…オレ、あの龍田に会ったのここに来た日が初めてだぜ?」
つまりウチに配属されて初めて会ったのか…とは言え…
「…同じ所の生まれじゃない…それでも割と姉妹艦同士は仲が良いって聞いた記憶有るんだが…」
正確には聞いたじゃなく読んだ、だけどな…
「…オレが可笑しいんかね~…オレは別に龍田を姉や妹と意識した事無いんだよなぁ…もちろん嫌いじゃないけどオレは基本的に他の艦娘たちと同じ感覚で接してるよ。…最も、龍田は異常なくらいオレに構うけどな…」
割とドライなんだな、コイツ…資料には天龍は情に熱い奴って書かれてた記憶も有るんだが…
「てか話逸れてるぜ?オレは纏めた目撃証言について聞きたかっんだけど?」
「ああ、そうだったな…加賀…」
「…目撃証言は基本的に一つ…セーラ服を着た黒髪で、ストレートの長い髪の小柄な少女よ…しかも全員後ろ姿しか見ていない…」
「初雪だな…」
電から聞いたそのままだな……ん?
「待て。基本的にだと?要は違う目撃証言も有るって事か?」
「そうよ…だから昼間会った時に、先に内容聞かなくて良いのって聞いたじゃない…」
ああ…新情報が有ったから先に聞かなくて良いのか聞いたのか…まさかそこまで進展が有ると思わなかったから、目撃証言については見回りに行く時で良いって言っちまったぜ…
「悪かった、それは俺の落ち度だ…で…他の目撃証言ってのは?」
「…目撃者は二人…敢えて名前は伏せるけど…彼女たちは逆に例の少女は見た事が無くて、その別の幽霊しか見た事が無いそうよ…」
「…で、そいつはどんな姿だったんだ?」
「怖くてろくに姿を見れなかったそうだけど、頭に丸い電探パーツが付いてたのは記憶に有るそうよ…そうね、丁度動物を少女に擬人化した時に頭に付ける耳のようにね…」
……特徴が特徴だからか、すぐに俺はその艦娘の名前が浮かび…思わず口に出していた。
「「雪風…」」
示し合わせた訳でもねぇのに横の叢雲と声が重なる…叢雲が名前を出すって事は…
「…昔ここにいたのか、雪風は?」
「ええ。確かに所属していたわ…叢雲、貴女は確か仲が良かったんじゃないかしら?」
「その…別にそこまで良いって程じゃあ…他の艦娘たちと特に変わらない態度で接してた筈よ…」
「まぁそもそも当時の艦娘はお前ら以外は全員死んでる筈だろ?じゃあいた奴であれば誰が出て来ても可笑しくはねぇよな…」
「う~ん…特徴分かったところで何だけど、一つ聞いても良いか?」
「何だ天龍?」
「そもそも探してどうするんだ?オレたちに何か出来る訳じゃないだろ?」
「そこなんだよな…まぁ叢雲は初雪には会いたいらしいけどよ…」
「彼女をあの日殺したのは…私だから…許しても貰えないかも知れないけど…せめて一言謝りたいのよ…」
「…まぁその辺の話を詳しく聞く気は無いけどさ…そもそも何の為の見回りなんだ?」
「何の為?」
「昼間私が言ったでしょう?一応不審者の可能性が「いや、だからさ…出て来る様になってそれなりに時間が経ってるんだろ?それでも目撃されるだけで実害無いんじゃオレたちがどうにかする話じゃねぇじゃん…大体、仮に不審者だったとして…捕まえてどうするんだ?」それは…」
「提督、オレたちにそいつをどうにかする権限有んのか?」
「……恐らくだが、無いな。」
多分上に報告し、その後来た迎えに引き渡してそれで終わりだ…
「えー…さすがにやる気無くなって来たんだけど…」
「仕事は仕事よ…それに、実害が無い訳じゃないのよ?」
「何か有んの?」
「その…皆が怖がって「出て来るだけで、特に何もして来ない幽霊が怖くて深海棲艦と闘える訳無いとオレは思うんだけど」むぅ…」
「寧ろ下手に触らない方が良いんじゃねぇ?さっきだって提督が襲われかけたじゃん?」
「…要はアレは警告だったと言いてぇのか?」
「それまで被害は何も無かったんだろ?なのに今日になってあそこまではっきり攻撃して来たのは…探して欲しく無いからじゃね?」
「でも私は「あのさ叢雲…そもそもそいつが初雪の保証無いの忘れてねぇ?」え?」
「怖くてまともに見れなかったとしたら…服装を見間違えた可能性は有るだろ?仮に後ろ姿だったのは間違い無いにしても、服装が違ったなら結局特徴は黒髪で長いってだけになる…そうなると結構候補は居るぜ?…例えばさっき言った雪風と同じ陽炎型の親潮とか、後は…睦月型の三日月とかな。」
「……」
色々言われて、俯いて黙り込む叢雲がさすがに哀れに見えたので助け舟を出す事にした。
「…で、結局お前は行きたくないって話か?」
「んまぁ…正直に言うならオレだって怖いからさぁ…でもまぁ暇でも有ったし、行けって言うなら行くさ。」
「なら最初からグダグダ言う必要無かっただろ?」
「だって…せっかく会えても仮に人違いだったら凹むのは叢雲だぜ?」
「…まぁ確かにそうだけどよ。」
「後でぬか喜びするくらいなら…最初からその可能性も考慮に入れた方が良いじゃん?」
「…良いわ、私は当時ここの秘書艦でも有った…私にも彼女たちを死なせた責任は有る…なら、初雪じゃなくても会う理由は有る…」
顔を上げた叢雲の目には決意が見える…やれやれ…しゃあねぇな…
「…まぁ乗りかかった船だ。今は俺がお前の上官だし、付き合ってやるよ。」
「私も当時所属していた艦娘よ…恨むのなら…のうのうと一人だけ生きてた私にもソレを向けられるのが当然でしょう?」
「その、ありがとう…」
「……何かオレが悪いみたいな空気になって来たな。」
「あんたは…私が気負わない様にああ言ってくれたんでしょう?」
「…そんなにオレは善人じゃないぜ。基本、思った事を好きな様に口に出してるだけだからさ…まぁ言った責任ならオレにも有るし、オレも行くよ。」
そこで俺はふと思った。
「俺と叢雲はともかく…お前らは結局、今から普段寝泊まりしてる場所に戻るだけじゃねぇのか?」
そう言うと前に向き直った二人がこっちを向いた……俺にジト目を向けている…
「貴方はもう…本当に…」
「そこはさぁ…空気読む所じゃねぇ?」
「事実だろうがよ。」
俺は何も間違った事を言った覚えはねぇっての。