傍受マニアの艦これ   作:三和

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「遅いな…」

 

階段を降り、俺たちは合流場所になる三階の廊下に立っていた…取り敢えず大分小さくなったロウソクのロウが腕に垂れない様注意しながら腕時計を見る…

 

「…どんくらい経った?」

 

「…俺たちがこの階に来てから…そろそろ30分程経つな…」

 

あの時…担当階は迷ったが、空き部屋が一部屋しか無い三階は除外して一階と二階どちらかに絞り、最後は俺が一階を見回るのを加賀が渋った事で(まぁトイレが有るからだろうな…)あいつらは一階の担当になった…俺たちが回ってた時間も考慮すれば…そろそろ戻って来ても良い筈だが…

 

「……何か有ったんじゃね?」

 

「何かって?」

 

「……さぁ?」

 

「…お前から言い出しといてそりゃねぇだろ。」

 

「んな事言ったって…オレはあんたとここに居るんだから分かるわけねぇじゃん。」

 

「そりゃまぁ…そうだけどよ…」

 

とは言え…正直このまま待ってても戻って来ないんじゃないか、そんなやべぇ予感は確かに有る…あ。

 

「お前ちょっと艤装に付いてる無線で通信してみろよ。」

 

「あ、その手が有ったな…今試してみる…取り敢えず加賀さんの方に通信してみるわ…」

 

その時ふと思った…

 

「やれって言ってなんだが…確実にウチの加賀まで繋がんのか?」

 

「ん?ああ…実は同じ個体の艦娘でも個人ごとにちゃんと周波数有るんだよ、だから周波数さえ分かってれば確実に繋がるぜ……ん?」

 

「どうした?」

 

「……繋がらねぇ。」

 

「何?」

 

「だから…加賀さんに通信が繋がらねぇんだよ…」

 

「……加賀が無線に出れない状態に有るって事か?」

 

「…ん~…何か違う気もすんだよな…」

 

「違う?」

 

「無線自体の調子が悪い…正直呼び掛け出来てんのかも分かんねぇ…」

 

何だそりゃ?

 

「分かんねぇってのはどう言う意味だ?」

 

「そう言われてもな…オレらの無線は基本的に艦娘同士ならどんな状況でもそれなりにクリアに聞こえるかんな…鎮守府に繋げない状態でも艦娘同士なら余程遠くに居ない限りは届くもんなんだ…個人周波数なら尚更な…ただ今回は変だ…妙にノイズが多い…こんなの初めてだぜ…」

 

「叢雲には繋がるか?」

 

「悪ぃ…オレ叢雲の周波数知らねぇんだ…普段ろくに会話もした事無いしな…」

 

それは…まぁ叢雲が悪いな…それで、だ…

 

「仮に、何か有ったとするなら…俺たちだけだとキツイか…?」

 

「他の奴起こせってか?んな事しなくても騒ぎになりゃ起きるだろ。取り敢えずオレらだけで一階降りてみねぇ?」

 

「そうだな。」

 

 

 

階段を踏み外さない様にゆっくりと降り、一階に着く…特に異常は無い…あ。

 

「今更だが、この停電騒ぎ…お前らにはどう言う認識になってる?」

 

「いや今聞くのかよ…加賀さんが原因不明のトラブルって皆に伝えたくらいだよ…昼間は電気点かなくてもそんなに問題ねぇし、夜は暇だから寝るだけだしな……まぁトイレとかは不便だなって感じるけどさ…」

 

「その時に異常の報告は?」

 

「…加賀さんが言った事が全てじゃね?ちなみにオレは変なもんは特に見た事ねぇな……つか、急ごうぜ…何か有ったらシャレになんねぇ。」

 

「…それもそうだな、で…どっから見る?」

 

「あんたが決めてくれて良いぜ、つっても先ず見るべき場所は決まってんだろ。」

 

「……確かにな。」

 

俺は向かって左側に顔を向ける…廊下の向こう…あそこしかねぇよな…さすがの俺も行きたくねぇが、あいつらを放置する訳にも行かねぇ…

 

「提督。」

 

「あん?」

 

「そうビビんなよ…オレが居るだろ?」

 

そう語り、自分に立てた親指を向ける天龍の顔には確かな貫禄が有った…頼もし過ぎるな…背丈は俺より低くて顔も少女と言って差し支え無いってのによ…

 

「あんたが一言命令してくれりゃあオレは…あんたをきっちり守るぜ?」

 

「……何があってもあの二人を最優先にしろ、最悪俺の事は見捨てて良い。」

 

「へー…良いねぇ、あんたみたいのが上官だとこっちも張り合いが有るよ…まぁ軍人には絶対向いてねぇけど。」

 

「悪かったな、俺も向いてねぇって思ってるさ。」

 

人間じゃなくて兵器…そう考えるべきなのかも知れんが…俺にはあいつらが人間の女にしか見えねぇんだよ。俺も我が身は可愛いが、その為にあいつら死んだら寝覚めが悪過ぎる…全く、我ながら損な性格してるな…

 

「さて…行くぞ?」

 

「あいよ。」

 

暗い廊下を小さいロウソクで照らしながら歩く……不思議だ、本来あいつらも見回りしてる筈なのに何の物音もしねぇ…やっぱり何か有ったと見るのが妥当か…

 

「天龍、レーダー出せ。」

 

「もうやってる…が、何も出ねぇな…」

 

「異常はねぇって事か?」

 

「なわけ…そもそも二人がウロウロしてたら音ぐらいするだろ…それすら聞こえないのが既に異常だ……大体、部屋で寝てる筈の他の艦娘の反応すらねぇよ。」

 

「……ヤバくないか?」

 

「滅茶苦茶ヤベェな…まぁここに来てから全然使ってないし、整備もろくに出来てねぇからこっちは壊れてるかもしんねぇけど。」

 

「ちなみにお前の無線が壊れてる可能性は?」

 

「……今更言うのもなんだけど、正直無いとは言い切れねぇな…ただ滅多に壊れる様なもんじゃない。」

 

「そんなに壊れにくいのか?」

 

「…無線がそんなに頻繁に壊れてたら…オレたちは仮に無傷でも海の藻屑になりかねねぇよ。」

 

「そりゃそうか…着いたな。」

 

俺はドアに手を掛け「待てよ。」

 

「あん?」

 

「あんたが先頭じゃ何か有った時対応出来ねぇだろ…ロウソク寄越せよ、オレが開ける…」

 

確かにそうだな…俺は天龍にロウソクの皿を渡した…

 

「落とすなよ?」

 

「落とすかよ、火事にでもなったら笑えねぇ…ん…」

 

天龍がドアを押す…特に何の抵抗も無くドアは開いた。

 

 

 

「…異常無し、か…」

 

トイレの中の個室を開けて回ったが特に何も無い…そもそも二人の人間が入れる程、個室は広くない訳だが…

 

「…居ないのがそもそも異常って気するけどな…じゃああの二人何処行ったんだ?」

 

「…一階にも空き部屋は有る…そっちを探すか。」

 

「ま、それしかねぇよな…じゃ、出るか…」

 

天龍が頭の後ろを掻きつつ、ドアまで歩く背について行く…天龍がドアに手を掛け……何故かそのまま動きを止めた。

 

「何してる?早く開けろよ?」

 

「……提督。」

 

「ん?」

 

「ドアが…開かねぇ…」

 

「……マジか?」

 

背に冷たい物が走り、ツーっと額から汗が流れる…

 

「マジ。見えねぇだろうけど今渾身の力込めてドアを押してる…けど、何かに固定されてるみてぇに動く気配がねぇ…」

 

また閉じ込められたって訳か…

 

「天龍。」

 

「あん?」

 

「砲弾有るか?」

 

「こっちに来る時貰ったストックは一応少し有っけど…本気か?」

 

「このままって訳にも行かねぇだろ…そのドアにとっとと砲弾ぶち込め。」

 

「…ククッ…あいよ、マジであんた最高だわ。んじゃ、ちょい下がってくれ…ん、その辺りで良い…一応床に伏せてくれよ?」

 

天龍がドアから離れ、艤装を展開…砲をドアに向ける。

 

「行くぞ?」

 

「いつでも良いぜ?」

 

俺は念の為手で頭を押さえ、床にうつ伏せになり…目も閉じる…次の瞬間予想以上にデカい音が鳴り響き、突風が背中を撫でて行く…

 

「チッ、マジかよ…」

 

天龍の声が聞こえて俺は目を開き、身体を起こした。

 

「どうなった?」

 

「どうもこうも…傷一つ付いてねぇよ…どうなってんだ、本当に…」

 

床に座り込む天龍の後ろ、ドアは健在だった…つか良く見たら砲弾の破片すら見当たらねぇ…

 

「天龍、照らしてくれ。」

 

俺は腕を天龍の方に差し出す。

 

「ん。」

 

ロウソクの火が近づき、腕時計を嵌めた俺の腕が照らされる…

 

「何時を指してる?」

 

「……ちょうど、2時だな…」

 

「……コレが仮にそう言う現象なら夜明けには収まるかもしれねぇな…」

 

「は?夜明け…?冗談じゃないぜ…こんなところで夜明かしかよ?」

 

「閉じ込められてんだから仕方ねぇよ…多分、加賀と叢雲には頼れねぇしな。」

 

「あん?……あー…そう言う事か。今、オレとあんたは…さっきあんたが陥ったのと同じ状態にあんのか…」

 

先程、鎮守府の女子トイレに閉じ込められた俺に加賀と天龍は呼び掛けた…しかし俺には何も聞こえなかった…異常を感じた為ドアを開けようとしたがドアは開かず、咄嗟に天龍が瓦礫を投げ付けドアの小窓を割った事で声は届き、ドアも開いた。

 

「恐らく…外からのアプローチは出来るだろうが…それは俺たちがここに居ると分かってる場合の話だ。」

 

「さっきはたまたまオレが様子を見に行こうと口にしたから来ただけ…オレたちがここに居ると分からない以上…このままだと二人がここに来る事も無いって訳か…つーか、もしかして二人に合流出来無かったのもそういう事だったりするか?」

 

「多分な…俺たちの姿が見えなかったとかならまだマシだが…あっちも足止めされてるかもしんねぇな…」

 

「マジかよ…」

 

「ま、向こうから何かアプローチして来るか…そうでなかったら、最悪俺たちは朝までここで一蓮托生だな…」

 

「…ま、しゃあねぇか。」

 

そう言って溜め息を吐いた天龍からは先程まで有った緊張は感じられない…

 

「随分落ち着いてやがんな…」

 

「さっきあんたも言ってたろ?焦ったってどうせ出れねぇんだからじたばたしても仕方ねぇじゃん?」

 

「そりゃそうだけどよ…」

 

「ま、絶えず不安定な叢雲とか…どっちかって言うと厳しめの加賀さんとかちょっと困るけど…あんたとなら二人きりってのも悪くねぇかなぁって。」

 

「妙な納得のされ方だな「何だ?じゃあこう言おうか?あんたならこう言うシチュエーション大歓迎だって」……お前、それ冗談で言ってねぇな?」

 

「…前から割とそう言うつもりで声掛けてたけど、あんたやっぱり気付いてなかったのか…うわぁ…自信無くすぜ…確かにガサツな方だとは思うけど…オレってそんなに魅力ねぇ?」

 

そう言う天龍の顔を改めて見る……いや、見直すまでもねぇんだがな…

 

「寧ろ魅力的過ぎて困るくらいなんだが…つーか、俺みたいな奴の何処が良い?」

 

「そう言われてもな…多分、あんたの前評判聞いてなかったら割とここの艦娘たちにモテてた筈だぜ?」

 

「物好き過ぎるだろ…」

 

「あんたみたいのに魅力感じたりするのさ、オレらは…何せ線の細いイケメンとかだと肝心な時に脆そうって言うか、上官にするには正直滅茶苦茶不安だし。」

 

「見た目がどうとかってより、そもそも自分の上官に惚れるのがお前らに対する刷り込みだったりしねぇのか?」

 

「否定はしねぇけど…オレらだって見た目と性格でちゃんと選ぶからな…上官としては良くても、恋愛的には全く好みじゃないって事もちゃんと有るさ。」

 

「分かんねぇな…」

 

恋愛経験が無いとは言わねぇが、特別モテたって経験はねぇ…まぁそれ以前に…

 

「勘弁してくれ…そう言うの苦手なんだよ…」

 

「マジか、確かにあんた遊んでる様には見えねぇけど。」

 

色々有って、正直俺は恋愛には臆病な方だ…しなくて済むなら…その方が良い。

 

「つか、オレは別に恋人じゃなくても構わねぇんだけど?」

 

「あ?」

 

「これでも身体には自信有る方なんだけど…」

 

「止めろ、こんな状況じゃ洒落にならねぇ…」

 

胸を突き出す様にこっちの顔を覗き込んで来る天龍から顔を背け、奴の顔の前に手を出す。

 

「俺は色々責任の取れない立場に有る…万が一襲っちまったら…最悪一緒に落ちて行く羽目になるぞ?」

 

「あんたとだったら堕ちるのも悪くねぇけどなぁ…あ、加賀さんとはそういう感じじゃねぇし…叢雲が本命だったり?」

 

多分、落ちるの字が違うんだろうな…そう考えつつ質問に答える。

 

「お前な…お前だったらあの状態のあいつ見て手出す気になんのか?」

 

「手出すって言うか、そもそも同意の上ならどんな状態でも何の問題もねぇだろ。」

 

「さっき責任取れねぇって言っただろうか。大体、あいつとはそう言う関係じゃねぇよ…多分、これから先もそうなる事はねぇな。」

 

「んな事ねぇと思うけどな…あんなに不安定な状態だとは思わなかったけど…それでも割とお似合いに見えたけどな…オレには。」

 

…後に、俺が叢雲に本気で惚れられたのを知って天龍が得意気に声を掛けて来ると言う事が有った…まぁこの時は本当に有り得ねぇと思ってたんだけどな…

 

「しっかし、何も起きる気配がねぇな…」

 

「向こうが足止めしたいだけなら閉じ込めるだけで十分だ…俺たちに危害を加える必要がねぇ。」

 

「……ってなると、加賀さんと叢雲は閉じ込められる程度で済んでねぇ事になるな。」

 

「助けに行こうにもこっから出られねぇんだ…向こうが自分でどうにかすんの祈るしかねぇだろ…ん?」

 

「どうした?」

 

「いや…外から何か聞こえねぇか?」

 

「ん?…足音だ…つってもコレ一人分だな…」

 

「遂に向こうが接触して来たってか?」

 

「いや、コイツはオレが知ってる足音だな「天龍ちゃん!?」…やっぱりか。」

 

天龍が外から聞こえた声にうんざりした声を出す…マジで嫌いみたいだな…

 

「!…あんた!やっぱり天龍ちゃんを!「落ち着けよ、龍田」天龍ちゃんそいつから早く離れ「良いから落ち着けって。取り敢えずドア開けてくんね?事情説明すっから」良いわ!今からそっち行くから待っ「良し!開いたぜ、提督!」て…え?」

 

座っていた天龍が立ち上がり、押し開けられたドアの向こうの空間に走って行くのを慌てて追い掛ける…

 

「天龍ちゃん…そんなに私に会いた「うっせぇ!寝てろ!」か…はぐっ!?」

 

「マジかよ…」

 

天龍は走っていたその勢いのまま…目の前の龍田に向かって飛び膝蹴りを顎に叩き込む…後ろの壁に激突した龍田はその場に崩れ落ちた。

 

「うし!出られたな!」

 

着地した天龍がガッツポーズをする…まぁ出れたのは良いが…

 

「おい、思いっ切り頭打ってたが…そいつちゃんと生きてんのか?」

 

「コイツはこんなもんで死なねぇよ。そんな事より早く二人を探そうぜ?」

 

「…そうだな。」

 

俺は気絶した龍田の前に屈んで口元に手を持って行き、呼吸をしているのを確認し、既に歩き出している天龍の背を追った。

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