いくら苦手と言っても…姉妹艦に対してあまりにもな仕打ちをした天龍に若干引きつつ俺は天龍の後ろを歩き…
「あっ!」
「どうした?」
「悪ぃ、ロウソク…忘れてたな…」
「ん?ああ…ほら。」
俺はトイレを出る時天龍が忘れて行ったロウソクの皿を天龍に渡す…暗い中でもトイレに行けるくらい慣れては居るのかも知れんが…人探してるのに暗闇の中コイツはどうするつもりだったんだろうか…
「ん。つか、考えてみたら振り出しに戻ったんだな…」
「確かにな…」
本命であるトイレは俺たちが閉じ込められただけで空振りだった…
「レーダーは復活してたりしねぇのか?」
「…いんや、駄目だ。相変わらず部屋に居る筈の艦娘の反応すら出ねぇよ…」
まぁ廊下は静まり返っており、部屋の方からも特に物音は聞こえない為本当に居るのかすら分からない状態だけどな…
「一応一階にも空き部屋は何部屋か有るが…」
「全部探すのか?」
「そこなんだよな…」
一階の空き部屋は五部屋…別に中を探るのにそれ程時間が掛かる訳でもねぇが…それでも無駄に時間を掛けたくはねぇ。
「…そもそも…一階には居ない可能性はねぇのか?」
「何?」
「いや、ちょっと思ったんだけど…さっき龍田がオレたちの所に来れたのは何でだと思う?」
「何でってそりゃ…多分…俺たちの声が聞こえて…」
「そこだ。」
「あん?」
「オレらはそこまで焦ってた訳じゃない…つまり特に騒いだりはしてない訳だ。」
「まぁそうだな…」
「ただ…あの二人…叢雲に関しては仮に閉じ込められたとかならもう少し騒ぐんじゃねぇか?」
「…そうだな。」
そうなった場合…加賀が居ても確実に狼狽えるのが目に浮かぶ…
「なら、普通龍田はそっちを先に見付けるんじゃねぇか?」
「あ…」
「オレら二人の部屋は二階にある…オレが気絶させた後、目を覚ました龍田が居なくなったオレを探す場合まず二階を探す筈だ…で、居ないから取り敢えず下に降りた…で、一階に居るオレたちの声が聞こえたからそちらに向かった…」
「つまり…一階でも二階でも無く、あいつらは龍田が探さなかった三階に居るってのか?」
「そう考えるのが自然じゃね?」
……ちなみに後で龍田に聞いたら"匂いで天龍ちゃんの居場所が分かったから真っ先にそっちに向かったわ"と答えたから、この推論は的外れだったんだけどな…
「…三階には空き部屋は一部屋しかねぇ…」
「じゃあそこだな…駄目元で行ってみようぜ?」
「そうするか…」
ま、それでも結果的にこの行動自体は間違いじゃなかったがな…
「この部屋か…どした?」
「いや、この部屋な…初日にノックしたら返って来たんだ…」
「…何か有るって事か…ちなみにその時中は確認したのか?」
「いや…下から足音がしたからそっちを先に見に行った…まぁ足音の主は一階に居た加賀だったけどな…その後加賀について来て貰って…再びノックしても返事は返って来なかった。」
「…なぁ提督?」
「ん?」
「その話…何か可笑しくね?」
「何がだ?」
「加賀さんの部屋は何階か覚えてるか?」
「一階だ…ちなみにあの時はトイレに向かって「いや、ちょっと待ってくれ」あん?」
「いやさ…可笑しいだろ?何で一階でトイレに向かうだけの足音がここまで聞こえるんだよ?」
「いや、コレだけ廊下が静かなんだから聞こえるだろ?」
「…んじゃあ百歩譲ってそこは良い…ちなみにその後加賀さんには会えたんだろ?何処で会った?」
「トイレの前で出て来る加賀に遭遇して「ほら、やっぱり可笑しい」分かんねぇな、何が言いたい?」
「初日、あんたと叢雲は三階のこの部屋の前に来た時下から足音を聞いた…で、下まで降りた…そこまでは良い…でも先ずは一階より二階を疑うだろ?何で更に下まで降りた?」
「そりゃ足音は更に下から聞こえて「だからさ…単にトイレに向かう足音を三階で聞いて、それで下に降りたら足音は更に下だと思ったからあんたらは下に降りた…可笑しいだろ?単にトイレに行くだけの足音を何であんたらは二回も聞く事になるんだ?」あ…」
「三階で聞いたのが仮に一階の加賀さんがトイレに行く足音だった場合…あんたらが二階に着く頃にはさすがに加賀さんはもうトイレの中じゃねぇのか?この暗闇だ…別に階段を駆け下りた訳じゃねぇんだろ?」
「なら、あの足音は…」
「もちろん、あんたらが二階に着いた時まだ加賀さんがトイレに着いてなかった可能性も無くはねぇさ…ただそのスピードだったらさすがに加賀さんがトイレに着く前にあんたらは出会える筈じゃねぇの?」
って、なるとやはり…
「あれは…加賀の足音じゃなかった…」
「そう考えるのが妥当だな。」
再び背筋に冷たい物が走る…
「まぁ今そこは問題じゃねぇだろ?」
「……そうだな、先ずはこの部屋の確認が先だ。」
俺は拳を作り、ドアを軽く叩いた……!
「ノックが…返って来たな…」
「叢雲たちだと思うか?」
「…閉じ込められてるんなら声を出すのが先だろ…ノックを返してなんか来ねぇだろ。」
「……どうする?」
「どうするもくそもねぇよ。開けるしかないだろ…あんたが嫌ならオレが開ける。」
そう言って天龍がレバー型のドアノブを掴み、下ろす…
「…どうやら鍵とかは掛かってねぇみたいだな…開けるぜ?」
天龍がドアノブを引き、ドアが開かれた…