「異常無し、か…」
部屋の中には特に人の居た形跡は…
「提督、コレ見てみろよ。」
「ん?こいつは…」
クローゼットの下 …天龍が照らしたそこにはスリッパが有った…一応クローゼットの中も見たが中には誰も居ない…完全にスリッパだけがそこにある…そしてスリッパには…
「…加賀って…書いてあるな。」
「つー事は加賀さんに関してはここに来ている事になるな…」
「何か有ったのは確定したな…スリッパだけ残してわざわざ出て行く意味がねぇ。」
「だな…たくっ、何が起きてんのかさっぱり分かんねぇ…」
そう言って頭を掻きながら立ち上がった天龍の足が目に入る……ん?
「天龍、お前…スリッパは?」
「ん?…あ、さっきのトイレに置いて来たかもしんね…まぁ今気にする事じゃねぇだろ。」
「まぁそうだな…」
「とにかく急ごうぜ、さっさと二人を探さないとヤバいかも知んねぇぞ?」
「ああ。」
「…あ…提督、ロウソクの予備くれ。そろそろ限界だ…」
「ん?ああ…」
天龍の持つ皿の上のロウソクは既にかなり小さくなっている…そろそろ継ぎ足さないと消えちまいそうだ…
「ほら……気を付けろよ?」
「ああ…あちち…」
天龍がロウソクの火元に今俺が渡したロウソクを近付け火を点け…小さくなったロウソクを上から押し付けグリグリと回す…
「良し、くっ付いたぜ。」
「天龍、時計照らしてくれ…」
俺は腕を前に出した。
「ん…ちょうど2時半だぜ。」
「もう30分も経ったのか…」
「焦るなよ…確かに叢雲だけだと心配だけど、加賀さんも居るんだぜ?何とかなるって。」
「お前は寧ろ何でそんなに楽観的なんだよ…」
俺がそう言うと天龍が溜め息を吐く…
「何だよ…」
「なぁ提督…気持ちは分かるが少し落ち着けって…あんたあの二人と長い付き合いなんだろ?少しは信じてやれって。」
「お前が俺たちの何を知ってる?不安になるなって方が可笑しな話だろうが。」
俺自身こうして先程から厄介な事に見舞われているせいか、つい天龍に棘の有る言葉を返す……チッ、これじゃ八つ当たりじゃねぇか…
「あんたらの事は分かんねぇけど…上に立つ人間としてすべき事なら分かるさ。」
「何だと?」
「…オレ、ここに来る前に一年くらい…臨時で提督代行してた事有るから。」
「艦娘が提督だと?」
「別にそこまで可笑しな話じゃねぇよ?人手不足だからな…たまにはそう言う事もあんのさ。…ちなみに俺の場合は鎮守府で建造された時から提督が結構年配でさ…あの人は後継者も既に決めてたけど…育つ前にある日肺炎で逝っちまったんだ…で、代わりを回すまで時間が掛かるってんでさ…一応古参で秘書艦経験も有るオレが代理で提督やってた訳…ま、お役御免になると同時に…オレは鎮守府から追い出されたけど。」
「何だ…そのふざけた話は…」
「ククッ…オレの為に怒ってくれんのかい?ま、オレとしては割と当然だと思ってるんだよな…何せオレの立てた作戦が……大切な仲間を何人も死なせちまったんだから…」
「…お前のその話も割と衝撃だが、爺さんが何も言わずに回して来たのが気に入らねぇ…」
「…そんな事言われてもな…オレは本来なら解体される所を突然呼び戻されてあんたの下に着けって上の奴に言われただけだ…その爺さんってのが誰なのかも知らねぇ…ただ、あんた少し覚悟決めた方が良いぞ?」
「何?」
「…ウチに居るのは…オレみたいに皆何かしら色々抱えてる奴らって事だよ…オレの口から誰がどうとかは語る気ねぇけど。」
「…まぁ良い、言いたい事は分かったよ…」
「ん?」
「提督だって言うなら…有事の時こそ部下を信じてどっしり構えてろ…そう言う事だろ?」
「…分かってんじゃねぇか…ま、死んじまったなら残念ながらそん時はそん時だ…」
改めて思う…道理でコイツがドライだった筈だと…仲間では無く、上官として艦娘と付き合う期間が有ったならそう言う考え方になったのもそこまで不思議な話じゃない。
「ま、とにかく…次は何処を探す?三階の空き部屋はここだけだろ?」
「…二階はさっき俺たちで見たからな…やっぱり一階を見に行くしかねぇか…」
「一階か…たくっ…何で龍田が見付けられなかったのか…不思議でなんねぇよ…」
「言ってもしゃあねぇよ…出て来た俺たちですら何処にいるのか分からなかったんだからな…」
「ま、とにかく一階だな?何が起きるか分かんねぇ…オレから離れんなよ、提督。」
「ああ。」