「クソっ!何処に行ったってんだ…!?」
「焦んなって…全く、あんたが落ち着かねぇでどうすんだよ。」
結局一階の空き部屋には加賀も叢雲も居らず…俺は二階のラスト一部屋の空き部屋でつい叫んじまった…天龍に諭されて取り敢えず深呼吸する…
「…ふぅ。すまねぇ…」
「良いって良いって。…つか、オレとしては上から聞いてたよりあんたがまともな人柄で安心してるよ。」
部下が突然居なくなって取り乱して喚く上官…そんな姿を見て、残った部下は逆に安堵する…ますます上層部の連中が俺の事をどんな風に言ってやがるのか気になっては来たがだからこそ聞きたくないと複雑な気持ちになりながら俺は天龍に聞く…
「天龍…先達のお前に聞く…こういう時、俺はどうすれば良い…?」
自分でも情けないとは思う…だが、そんなプライドなんて犬にでも食わせときゃ良い…チッ…何だかんだ言っても俺は…あの二人の事をそれなりに大切にしているらしい…
「……そうだな…先ずは上の指示を仰ぐのが普通だな…最も、今連絡しても恐らく無駄だけど。」
「無駄、ってのは?」
「仮に連絡しても鎮守府の一部下の失踪程度じゃ後に回される…まぁそれに今連絡してもまともに取り合って貰えない、するにしても朝一番で無いと話は聞いてくんねぇよ。」
「どう考えても緊急事態なのにか?」
「……戦時下の今、軍で言う"緊急事態"ってのは…鎮守府が壊滅したか、既に壊滅寸前まで追い詰められてる状況ってのを言う…部下の失踪程度じゃすぐには話にも上んねぇよ…上の方で捜索隊出してくれるとしても…早くたって決定が出るまで一週間はかかるだろうな…」
「人手不足なのに捜索は二の次…ふざけた話だな…」
「提督になれる人材は希少だけど艦娘は代わりは利く。…まぁそれも昔に比べて資材の手に入りにくくなった今じゃ時代遅れの感覚だけど…上はそれが染み付いてるからな、仕方ねぇよ。」
「とにかく今はこっちだけで探すしかねぇ訳か…」
「ま、恐らくまだ寮の中には居るだろうし何とかなるんじゃね?」
「根拠は?」
「オレの勘。」
「…本気で言ってんのか?」
「ここぞって時にはマジで当たるかんな、オレの勘は……ま、本当に必要な時は仕事してくんないんだけど。」
「……」
「それより、駄弁って無いでさっさと二人を探そうぜ?」
「そうだな…あ、一応確認してくれ。」
俺は腕を天龍に見せる…
「ああ……ん?」
「どうした?」
「…2時半だ。」
「あ?」
「だから…2時半…あんたの時計は2時30分を指してる。」
「んな馬鹿な…さっきお前が見た時も2時半って言ってただろうに…火近づけな、俺も見る。」
「ん。」
天龍の差し出して来たロウソクに腕を近づけ、時計が照らされる…短針が2、長針が6をそれぞれ指している……確かに2時半らしいな…
「壊れたか?」
「いや…秒針は動いてる…」
「……んじゃあ壊れてねぇって事か?」
「どっちかと言うと、あんま無い壊れ方だと思うぜ?」
「壊れてねぇのに時間が進まないってのか?」
「オレたちの今居るここが…そういう空間になってんだろ…下手すると、このまま夜は明けないかもしんねぇ…」
「…マジか。」
朝になったらこの異常は消えて無くなるんだろうな、とは…俺も何となく分かる…つまり相手は俺たちを逃がす気が無いらしい…さて。
「まぁ良い。向こうから仕掛て来てんなら好都合だ、このまま二人を探して…この異常の元凶も見付けてカタを着ける。」
「…やっぱ最高だよ、あんたは…」
「言ってろ。とにかく次はまた三階だ…こうなったら徹底的に探す。」
「あいよ、あんたが諦めない限りは付き合ってやるさ。」