一階の空き部屋を回り、結局誰も居ないのを確認した後…俺たちは階段に足を向けていた。
「マジで見つかんねぇな…」
「なあ、提督…いい加減オレたちだけじゃ無理じゃね?」
「……そうだな。」
コレだけ探して見つからないのは本当に異常だ…マジで人海戦術に切り替えるべきか…
「大掛かりな捜索になるなら一応記録に残す必要が有る…オレが覚えといてやるから、取り敢えず現在時刻確認させてくんね?」
「そりゃ良いけどよ、どっちみち止まってんじゃねぇか。」
「念の為だよ、念の為……んあ?」
「どうした?」
時計を嵌めている腕を天龍に見せ、天龍がロウソクを使って時計の指す時刻を確認してすぐに妙な声を上げた…そして目をロウソクを持っていない方の腕で擦ってから再び時計を見直している…
「マジかよ「どうした?時間が進みでもしたか?」……いんや、逆だよ…戻ってる…」
「戻ってるだと?」
「オレの目が可笑しくなったのかも知んねぇ…あんた自分で確認してくんねぇか?」
そう言われ俺は自分の腕を見る…さすがに暗くて良く見えねぇが、天龍がロウソクの火を近づけて来てようやく文字盤が目に入って来た。
「……1時ちょうどだと?」
「一気に一時間半も戻った事になんな…あんたの時計が壊れたんじゃなければだけど。」
「時計の構造上…止まるとかなら分かるけどよ、さすがにこんな壊れ方は先ずねぇだろ…」
つまり、現実の時間の方が戻ったと考えるべきだ…
「……そう言や提督?」
「あん?」
「何か可笑しくね?」
「何がだ?」
「あんたさっき、鎮守府の方のトイレで色々有ったよな?」
「ああ…そうだな…」
明らかに気の所為じゃない悪寒を感じて身震いする…閉じ込められた事さえ気付いて無かったが、足が勝手にトイレの奥まで進んで行ったのは事実なんだ…アレはさすがに肝が冷えた…
「いや、ずっと違和感有ったんだ…先ず聞きたいんだけど…あんたどれくらいトイレに居たのか分かるか?」
「…良いとこ五分ってとこだな…」
「やっぱりか。」
俺の言葉を聞いて何やら納得した声を出し、頭を掻き始める天龍…
「一人で納得されても困るな…何が言いてぇ?」
「落ち着いて聞いてくれ……叢雲から聞いた話が確かなら、あんたは少なくとも一時間近くはトイレに居た…」
「……何だと?」
「あんたがトイレに行ったのは何時くらいだった?」
「…10時50分ってとこだ…何だかんだ執務室からトイレまで往復で10分以上は掛かるからな…間違い無くお前と加賀との待ち合わせ時間の11時には間に合わねぇから叢雲に伝言を頼んだ…」
天龍が一回頷いてから口を開く。
「オレは加賀さんと一応10時30分に待ち合わせてたんだ…寮から鎮守府まで歩いて15分は掛かるから、余裕を持って行ける様にな…ただ龍田があまりにもしつこくて…結局ようやく待ち合わせ場所の寮の外に出て来た時は既に11時5分くらいだったかな……加賀さんは時計持ってたからな、確かだぜ?」
「…本当か?」
「ああ…ちなみに加賀さんが遅れた事に対してオレに説教したから更に5分程遅れた…んで、急いで向かったけど…さすがに10分は掛かった筈だ……ようやく執務室に着いた時は叢雲が一人で半狂乱になっていた。」
「で、お前がトイレに向かうって提案をした訳か…」
「さすがにそろそろ戻って来るでしょう、って加賀さんは言ったけどどうも嫌な予感がしたからな…オレが言って加賀さんと一緒に様子を見に行ったのさ……そしたら、案の定ややこしい事になってた。」
「…初めから俺の時間は狂っていた…要はそう言いたいんだな?」
「ああ…と、言い出して何だけどそんな話は良いんだ…急いで三階へ行こうぜ!」
「三階?何でだ?」
「時間ねぇってのに…!だからさ、さっきオレたちが加賀さんのスリッパを見付けたのが三階だろ?オレたちが一階のトイレに閉じ込められれちまった2時より前の時点でさすがに一階の見回りは終えてるだろうし、オレたちが着いた1時半の時点で加賀さんと叢雲は三階の廊下には居なかった…んで、三階は元々空き部屋が一部屋しか無い…となるとオレたちより早く二人が着いてたら空き部屋を先に見に行く可能性が有る…今なら消えちまう前に合流出来るかも知んねぇ!」
「そうか!」
つまりあの時下に降りたのは失敗だった訳か…何でこんな簡単な事に気付かねぇんだ…!内心で自分に悪態をつきながら急いで階段を上がろうとする俺の腕を天龍が掴んだ。
「馬鹿か!?あんたが先頭でどうすんだよ!?ロウソク持ってるオレが前だろうが!」
「!…悪ぃ…」
「良いから急ぐぞ!」