天龍も何だかんだ焦っていたのか、俺を置いて行く勢いで階段を駆け上がって行く…何度か足を踏み外して転けそうになりながらも何とか俺も三階まで辿り着いた…三階の廊下で止まっている天龍の背中に声を掛ける…
「ハァ…!ハァ…!…居たか!?」
「いや…廊下には誰も居ねぇ。」
「となると…やっぱり中か?」
天龍の背中越しに例の空き部屋のドアを見詰める…
「かもな…取り敢えず確認しようぜ。」
「ああ。」
天龍がドアに向かって歩き出す…俺はその背を追った。
「良いか?開けるぞ?」
天龍がロウソクを持っていない方の手でレバー型のドアノブを掴みながら声を掛けて来る…
「今更躊躇してどうする?さっさと開けてくれ。」
「……警戒しとけって意味だよ、何があるか分かんねぇからな…」
「さっき言ったろ。俺の事は気にするな、叢雲と加賀を優先しろ。」
「……全く。どうしてこう、他の連中はあんたの良さが分かんねぇのかねぇ…」
「ハッ…俺みたいな奴、噂が無くても警戒して当たり前だろ。」
「…俺たちを使い捨ての兵器として扱ったり、欲望のはけ口にするクソッタレよりかは…あんたの方が魅力的だよ。」
「…人間としてはクズだろうが、そういう連中はどうせ指揮官としては優秀だろうよ…俺みたいなド素人よりずっと良い…良いからさっさと開けろ。」
「…そう言う奴の方がこっちはまだ信頼も出来んだけどなぁ…んじゃま、開けるぞ…?ヤバいと思ったら、オレたちの事を放置して逃げな。」
…さっき俺の言った事を聞いてなかったのかと言いたくなる発言だが…艦娘であるコイツにとって、何があっても提督である俺を護るのが最優先事項なのだろう…そして艦娘でありながら提督でも有ったコイツは…有事の際は同僚は元より自分も含めて駒として見るのが普通の感覚なんだろうな…
そこまで分かってしまうと所詮軍人としての意識も持てない俺に何か言える筈も無い…歯痒さを感じつつ…天龍がドアを開けるのを見守った。
「…外が妙に騒がしいと思ったら貴方たち?一体何をしてるの?」
中にはキョトンとしている加賀が居た…開けられたクローゼットの前に立っている……そう、どう見ても加賀だけがそこに居る…俺は天龍を押し退け、前に出た。
「おっ、おい「叢雲はどうした?」「え?…あら、さっきまでそこに」「お前しか居ないなら今はそれでも良い、行くぞ…」「!…ちょっと!いきなり引っ張らないで!どうしたって言うの!?」…ハァ…全くしょうがねぇな…」
既に廊下に出て、開けられたドアを念の為か手で押さえている天龍を後目に…加賀の手を引いたまま、俺は部屋から出た。