「……ん?」
「何、どうかしたの?」
俺が声を漏らしたのに反応してか、俺の前を歩いていた加賀が振り向き…声を掛けて来た。
「……いや、何でもねぇ「何でも無いって感じじゃなかったんだけど?」俺が何でもねぇって言ってんだからそれで良いだろ?」
「おい、何揉めてんだよ…」
俺たちの少し前を龍田を背負って歩いていた天龍が戻って来る…ハァ…面倒臭い。
「だから何でもねえって『ねぇ、起きなさいよ!』ん?」
「貴方、何でこんな所で寝てるの?」
目を開く…ここは例の艦娘寮…その空き部屋だ。
「ふわぁ…良いだろ、今日は誰も居ねぇみたいだしよ。」
「だからってこんな所で寝なくても「ここがそんなに怖ぇか?龍田」…ええ…怖いわ、怖いに決まってるでしょ…」
「だったら何でこんな所に来る?てか、お前は部屋に戻って寝ていたんじゃねぇのか?」
「…あれから今度はトイレに行きたくなったから起きたら…電ちゃんに会ったの。それで、貴方が外に出て行くのを見たって聞いたから…タバコ吸うにしてもさっきみたいに鎮守府前で吸ってるならまだしも、貴方居ないじゃない?部屋に戻ってる訳でも無かったし…だったら、ここしか無いだろうって思って…」
「あー…電に見られてたのか…じゃねぇ、質問に答えてねぇぞ?お前は何でここに来た?あの件の後、鎮守府を改装してからお前は真っ先に鎮守府の方に移って来ただろ?……ここが苦手になったから。」
「それはその…心配に、なったから。」
「……」
基本的に天龍第一の龍田…とは言え、今でこそあの頃程には天龍に絡まなくなった様で、二人の関係は比較的良好(今でも時折天龍にしばかれてる姿を見掛けるが)何より、他の艦娘についてもそれなりに目を向ける様になり…一番顕著なのが俺への態度だな…何せ、今では俺と普通に雑談する事も有るくらいだからな……まぁ…正直得体が知れないから、今でも俺はこいつが苦手なんだが。
「心配ね…もう幽霊の目撃情報も出て来てねぇのに、わざわざ大嫌いな場所まで俺を探しに来たのか?」
「いけない?」
「……」
こいつが特に目を掛けているのが、天龍以外だと加賀と叢雲…そして俺を含むあの時の一件に巻き込まれた面子だ…何せ、ほとんどトラウマレベルで忌避してる場所まで来る程だからな。
「ハァ…良いだろ、今日はここには誰も居ねぇんだから「だからってこんな寒い所に来なくても」…まぁ、そうだけどよ…」
幽霊の噂こそ消えたが、ここは夏場でも何故か少し寒い…その不便さも有ってここが気に入っていたと言っていた奴もさっさと鎮守府の方に移った……おまけに幽霊が出たと言う報告こそ出なかったが、ここを宿泊施設として利用した連中からもクレームは出てる…何故か何回修理しても電気が付かなくなり、暖房も壊れる…夏でさえ涼しい通り越して肌寒いからハッキリ言って良い所は何にもねぇと言える…
…まぁ、それでも人嫌いの気が有る艦娘には人気だったが…ここは鎮守府から少々とは言え遠いから、結局不便なんだよな…
「たくっ…人が懐かしい夢見てたってのに「どんな夢?」あの幽霊騒動の時の事をな。」
そう言うと龍田があからさまに渋い顔をする…あー…そんなに嫌か。
「と言うかだな、こっちはあの時お前に結構迷惑掛けられた覚えが「ごめんなさい…でもその、仕方無いじゃない…貴方の事はあの頃信用出来無かったし、何よりそんな大事になってるなんて、知らなかったから」ま、もう良いけどよ…」
「分かってくれたなら…その、戻らない?」
「暇なんだろ?ちょっと付き合え。」
「……何をしたら良いの?」
「お前が起こしたせいで目が冴えちまった…せっかくだから、あの時の事をな「帰って良い?」そう言うなって…茶くらいは出してやるよ。」
宿泊施設として解放する事も有るから、そう言った物も一応置いて有る……まぁ、残念ながらこの部屋の中にはねぇんだがな…