湯呑みに入った茶を啜る…
「ふぅ…安物でも美味く感じるな。」
「それは寒いからじゃなくて?」
「それも有る「ねぇ、やっぱり戻らない?話には付き合うから」断る。」
「何で、ここで話さないと「ここが現場だからな、気分出るだろ」……雰囲気有り過ぎて嫌よ。」
普段余裕の有る女を装ってる、こいつのこう言う弱々しい姿は見てて気分は悪くない……いやまぁ、普段から天龍絡みで醜態を晒してる気もするが。
「…でだ、さっきの夢だと天龍がお前を背負って、俺が違和感を感じた所で起こされたんだよ。」
「じゃあ私、まだ気絶してる時じゃない…そこ私の出番無いから、話さなくても「その後起こしただろ?」…そうだけど、大体前にも話したのに…何で今更…」
「それなんだけどな、さっき茶の用意してる時に思い出したんだ…」
「何を?」
俺はまた茶を啜る…
「ふぅ…実は今日が初雪の命日なんだよ。」
正確には…さっき日付が変わってそうなった、だがな。
「あー…でもそれなら、尚更その…叢雲ちゃんでも呼んだ方が…」
「良いだろ、寝てるし…あいつにはあんま愉快な話じゃねぇしな…話すなら、お前か天龍が最適なんだよ…加賀も初雪と交流有ったんだろうから、あんま気分の良い話じゃねぇだろうしな… 」
「それはまぁ、分かるけど…ハァ…で、その時は…何故か貴方だけが違和感に気付いたんだったわよね…?」
「ああ。」
「違和感?」
「俺たちはまだ探して無い場所が有る筈なんだ…と言うか多分…初日以外何故か一度も行ってねぇ……くそっ…!後少しの所まで出かかってるんだが…!」
「そんな場所、有るか?」
「そうね、多分見回りの時に大体見てると思うけど…」
「いや、多分お前らも見てねぇよ。」
「何故そう言い切れるのかしら?」
「簡単だ、多分ドアが無くなってる…」
「場所が分からないのに、ドアが無いのは分かったって…今聞いても不思議な話よね…」
「ま、普通そうなんだろうがな…俺が何故かそう言う記憶の仕方をしてた様でな…」
「そう言う記憶の仕方?」
「場所の名前、何をする場所…とかじゃなくて空間そのものの認識をしてたって言ったら良いのかね…どうにも説明がしづらいんだよな…」
「まぁ、私もその説明じゃ良く分からないけど…それって結構特殊な能力なんじゃない?」
「そもそもお前…は、気絶してたから知らねぇ訳だが…普通艦娘が存在忘れる様な場所じゃねぇんだよな?」
「…ええ。私たちには皆艦船や空母だったり、駆逐艦だったり…はたまた潜水艦だったり色々有るけど…大抵は皆当時の乗組員の記憶を受け継いでる…で、その頃は戦時下だったから娯楽も少ない…それでも数少ない娯楽施設で、大抵の乗組員は皆一日の終わりに艦内のそこを利用した筈…何より、私たちは女性としての意識が強いから普通はそこの存在を絶対に忘れない…」
「ドアが無いって、それどう言う事だよ?」
「場所が分からないんだ、それ以上説明出来ねぇよ…ただ、ドアがねぇのは確かなんだ…」
「勘違いとかじゃなくて?」
「ああ、間違いねぇ…クッ…どうしたら思い出せ「だったら初日の行動を思い出したら良いんじゃねぇか?初日は確か、あんたと叢雲だけでここの見回りやったんだろ?」あー…そうだな、思い出してみる…」
「…って、全部事細かに覚えてるのも凄いわよね…」
「さすがに全部は覚えてねぇよ、要点押さえてるだけだっつの。」
「それでも十分凄いと思うけどね…」
「!…そうか、何で忘れてたんだ…!」
「何処だよ、そこは…?」
「お前ら今日…って、これももう昨日か…多分利用してる筈だぜ?」
「利用してる…?……駄目だ、分かんねぇ…何処だよ?」
「私も…分からないわ。」
「マジで分かんねぇのか?風呂場だよ、俺たちは今日…いや、もう昨日になるか…とにかくここに入ってから風呂場を見てねぇ。」
「「あ!」」
既に廊下の半分くらいまで歩いて来ていた俺たちは後ろに振り向く…ついさっきまで居たその場所…トイレの反対側に有った筈の、本来風呂場のドアの有る筈の壁を…
「ちょうど茶も切れたか…せっかくだ、行こうぜ?」
「大体分かるけど、何処に?」
「決まってるさ、風呂場にだよ。」