傍受マニアの艦これ   作:三和

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「……なぁ、これどう見てもドアじゃねぇだろ?」

 

「そうね、壁だわ…」

 

「だが、風呂場は確かにここだった筈だ…つまり、この壁の向こうが風呂場なんじゃねぇのか?」

 

初日、ここに来た時…壁と同じく木製だが、ここに有ったのは確かにドアだった……だが、今そこに有るのはどう見ても壁だ…徐に天龍が壁に耳を着ける…

 

「何か聞こえるか?」

 

「いや、何も…ん…」

 

天龍がその壁を叩き、そこから歩いて…離れた場所に有る壁も叩く…戻って来た。

 

「音に変化がねぇ…つまりこの壁の向こうに空間はねぇって考えるべきじゃねぇかな…」

 

「……」

 

俺は壁に触れる…手の位置を変えてあちこち触れてみたが…途中で違和感を感じた…そこに立てた人差し指を近付け、つつこうと…!

 

「おい、ここ空洞有るぞ。」

 

俺の指は壁の中に沈んだ…指は第一関節を越えた辺りで何かに当たって止まったが、それでも…壁に指が何の抵抗も見せずに埋まってるその光景は明らかに不自然だった…

 

「うわ…何だこれ、どうなってんだ…?」

 

「……成程、そう言う事か。」

 

「何か分かったの?」

 

「風呂場のドアは確か引き戸だった筈だ。多分、今俺の指が入ってるのはそれを開ける為に有る穴だ…」

 

「じゃあこれは…」

 

「要するに、こいつは壁に見えるドアだって事だ…ふんっ!」

 

俺は残り三本の指も差し込み、横に力一杯引っ張る…くそっ…ビクともしねぇ…

 

「加賀、手伝え。」

 

「どうするの?」

 

「開けるんだよ、このドアを…俺の腹に腕回せ、んで…思いっ切り引っ張ってくれれば良い。」

 

普通この手のドアは、開ける為の穴に一人分の指しか入らんからな…つか、傍から見たら何とも間抜けな光景に見えるんだろうな…こっちは必死なんだが。

 

「じゃ、オレは反対側か…んー…おっ、ここか。」

 

天龍も俺の正面に立ってドアを引いた。

 

 

 

 

「あー…手が痛ぇ…全然開かねぇな…」

 

結局二枚扉のどちらも開かず三人で床にへたり込む…やれやれ…俺は立ち上がった…そして天龍の引っ張っていたドアを掴む…!

 

「おい、こいつは開くかも知んねぇぞ?」

 

どうにも俺が引っ張った方より抵抗が少ない様に感じる…

 

「んじゃあ今度は三人でやるか「いや、四人だ」……は?」

 

「龍田を起こして四人でやる。」

 

「……オレは反対だ、こいつが真面目に話を聞く訳がねぇ。つか、まだ三人で開くか試してねぇだろ?」

 

「そうね、私も…やめた方が良いと思う。」

 

「ま、そうだな…じゃあ三人でやるか。」

 

最も、この時俺は予感が有った…どうせ三人でやっても開かねぇだろうと…

 

 

 

 

「くそっ…!本当に開かねぇのかよ…」

 

やはり俺の予想通りドアは開かなかった…

 

「だから言ったろ、四人でやりゃ良いのさ…」

 

俺はまた床に寝かされた龍田に視線を向ける…つか、こいつ…一体いつまでこのまま寝腐ってる気なんだ…

 

「つってもこいつが真面目に話を聞く訳が「俺だってそう思う…けどやるしかねぇだろ」って言ってもなぁ…」

 

「じゃあお前らに一つ頼む「何を(かしら)?」」

 

「龍田の説得は俺がやる…こいつが俺に向かって来たらお前ら二人で抑えてくれ。」

 

「オレは構わねぇけど…ホントに出来んのか?」

 

「さぁな「いや、さあって」こいつが応じるとははなから思ってねぇよ「なら」けどな、やらねぇよりマシだろ?」

 

 

 

 

「今思えば、私が貴方を信じてみようって思った理由がそれなのよね…口調こそ悪かったけど、あの時の貴方は私に真っ直ぐ向き合おうとしてたから…」

 

「人の目見て話すってのは当たり前の話だろ。」

 

「徹頭徹尾、私たちを人として扱うって言うのも割と珍しいタイプだったりするのよね…」

 

「俺にはお前らが兵器には見えないし、女の見た目したヒトモドキとも思えねぇんだよ。」

 

「でもその癖、その生真面目さが叢雲ちゃんにとっては障害になるのよね…ねぇ、いい加減応えてあげたら?貴方だって満更でも無いんでしょ?」

 

「さぁな…つか、何だ?急におしゃべりになりやがって…さっきのしおらしさはどうした?」

 

「だって…何となく貴方に怖がってる姿見せてるの癪なんですもの。」

 

「ふ~ん…まぁ良い…ほれ、着いたぞ。今は鎮守府の風呂場もまともに稼働してるしな…ずっとここには入ってねぇんだろ?」

 

俺たちの視線の先…そこには壁では無く、ちゃんと木製の引き戸が有る…

 

「そうね……で、本当に開ける気?」

 

「それともトイレの方に入りたいか?」

 

「それ実質選択肢無い様な物じゃ「ちなみにお前来る前に俺はトイレの方は入ってるぞ?」……使ってる人は居ないにしても、貴方躊躇無く婦人用トイレに入るのね…」

 

「勘違いすんな…俺だって普段はやらねぇよ。」

 

「それで?わざわざ話すって事は何か有ったの?」

 

「……ああ。」

 

気の所為だと思っても、実際に起こった出来事は変えられない…今はこの場に龍田が居るから良いが、俺だって正直に言えば怖い…せめてこいつにでも話して、楽になりたくも有る…

 

「え…本当に?」

 

「ああ、有ったよ…」

 

「何が有ったの?」

 

「奥の個室のドアにノックした…もちろん反応は無かったが、帰り際…ドアを叩く様な音が聞こえた…」

 

「聞き違いとかじゃなくて?」

 

「ああ…残念ながらハッキリ聞こえた。で、トイレの方に行くか?」

 

「……お風呂場にしましょう。」

 

「だよな……お前がそう言ってくれて安心した。」

 

「……何で、怖いのにこんな所に来たの?」

 

「んー…幽霊ってのはよ、自分の噂されると本当にそいつの所に出て来るって習性が有るらしいんだよな…」

 

「……それで?」

 

「結局あの幽霊騒動は謎を残したまま終わったからな…ケリを着けたいのさ…だから、付き合え。」

 

「……良いわ。私もあの時の当事者の一人だものね…」

 

「そう来なくちゃな…ま、どうせ何も起こらねぇとは思うけどな。」

 

あれからそれなりに時間も経った…今更何かが起こるとも思えねぇ…

 

「龍田、お前は反対側だ……良し、開けるぞ?」

 

「ええ…いつでも良いわよ?」

 

二人してドアを引く…あの時と違い、ドアは特に抵抗無く開いて行った…

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