「大丈夫?火で炙ったみたいになってるわよ?」
「ああ、何とかな…」
現在、俺の右手はほんの一瞬…ライターの熱に晒されただけとは思えない程に酷い火傷を負っている…まぁ、それでも幸い大きめの水膨れと赤い爛れが少しある程度だからな…薬塗っとけばどうにかなるか、跡はしばらく残りそうだがな…
「全く、何だかんだ慣れてて助かったぜ…廊下は明かりが無くても歩けるからな…」
「…そもそもお風呂に窓が一枚も無いのもどうかとは思うけどね…」
「この建物に使われてるのは元の艦娘寮に使われていた廃材が主だからな…足りなくなっても仕方ねぇ…つっても外から覗かれるよりは良かっただろ。」
まぁ、新たに外で伐採した木の分も含んでるせいで徹底して建物が全体的に木製なんだがな…さすがに廃材だけでこんな寮は建てれるわけねぇ…
「……この島に男は貴方しか居なかったけどね。」
「どっちにしろ覗かねぇけどな。」
俺も男だ、もちろん見たくないと言えば嘘にはなる…ただ、相手は艦娘だ…わざわざ命懸けで覗きなんかしたくもねぇ。
「…と言うか、部屋にロウソクや懐中電灯常備してるのに何で持って来なかったの?」
確かにここはとにかく停電が多い…それでも宿泊施設として開放する以上、空き部屋にもちゃんとロウソクや懐中電灯を置いてる。ただ…
「忘れてたんだから仕方ねぇだろ…大体、お前だって言わなかったじゃねぇか。」
「まぁ、そうだけど…」
そこで龍田が口を閉じる…下らない話を続けてたのは怖いからだ…先程からずっと感じてる、違和感の確認をしないのもそうだ…
二人して無言のまま歩いていたら、漸く暗闇の中に寮の入り口のドアが見えて来た…
「ふぅ…やっと着いたわね…」
「ああ…」
慣れているとは言っても、やはり暗闇の中では歩みは遅くなる…どうしても時間は掛かるな…何より、行きより帰りの方が怖いから尚更だ…
そうして龍田がドアに手を掛ける…
「なぁ?」
「何?」
「……俺はな、一度違和感を感じたらそのままにするのは気持ち悪くなるタイプなんだ…」
「…知ってるわよ。いよいよ付き合いも長くなって来たし…」
「…で、ちょうど今…俺は酷く違和感を感じてる…さっきから不快で仕方ねぇんだ…」
「その話…ここを出てからじゃ出来無いの?」
「無理だな。」
「どうして?」
「……多分、お前はここを出られないからな。」
「どう言う意味かしら?」
「言葉通りの意味さ。龍田…いや、お前…誰だ?」
「何を言ってるのか、分からないわね…」
「俺の知る『龍田』って艦娘はな、基本的に天龍が最優先なんだよ。」
「……」
「確かに今の龍田は昔と違い、天龍以外の奴にも目を向ける様になった……だがな、龍田はここの艦娘を信用はしていても信頼はしてねぇんだよ。」
「……それで?」
「そんなお前が…部屋で寝ている天龍を放置して、こんな所まで俺の様子を見に来る訳ねぇんだよ…ここから鎮守府まで距離が有るんだからな…」
「……」
「お前が俺に危害を加える気が無かったのは何となくだが分かった…ただ、それでもな…俺は一度可笑しいと感じたらそのままにしておきたくねぇんだわ。」
「そう…」
「もう一度聞く。答えろ、お前は誰だ?」
ここへ来たのは駄目元だったが、まさか本当に進展が有るとは思わなかった…まぁ、結局こいつが何も答えなければそれで終わりなんだけどな…