傍受マニアの艦これ   作:三和

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取り敢えず俺たちはさっきまで居た部屋に戻って来ていた…

 

「ん…じゃあ聞かせて貰う前にだ…」

 

「どうしたの?」

 

俺は後ろに振り向き、ドアを見詰める…

 

「…お前…幽霊だけ有って、他の霊の動きは分かるみてぇだが…人間の事は分かんねぇみたいだな…」

 

「え?」

 

…とは言え、他の奴の事が分かる辺り…ある意味そこはこいつも龍田なんだな、とも思う…俺の知るあいつも冷静になるとマジで鋭いからな…

 

「……そこに誰か居るの?」

 

「ああ。」

 

俺は断言した…ちなみに誰なのかも分かっている…

 

「…いつまでそこに突っ立ってる気だ?良いから入って来な。」

 

それなりにデカい声で言ってやった…まぁ、そこまで厚いドアじゃねぇし…そうでなくてもどうせドアに耳着けての盗み聞きだろうけどな…

 

「さすがですね…ここまで綺麗にバレたのは初めてです…」

 

ドアが僅かに開き、そんな声が聞こえた。

 

「けっ…ワザとバレる様に後付けてた癖に良く言うぜ、良いからとっとと入って来な…赤城。」

 

中に入って来たそいつは赤城だった…

 

「つっても気付いたのは途中からだけどな…いつから…付けてやがった?」

 

「んー…」

 

そこで言葉を濁す…ん?いや、まさかこいつ…

 

「テメェ…俺が最初にここに入って来た時からもう付けてやがったな?」

 

「あれ?分かります?」

 

要するにこいつは…俺と一緒にここに入って来た訳だ…執務室の方で寝てた時のアレはたぬきかよ…マジでとんでもねぇ女だ…ん?

 

「……てかじゃあ、お前アレか?ずっとここに隠れてやがったのか?」

 

「え?どう言う事?」

 

「龍田、お前俺を起こしに来たよな?こいつに会ったか?」

 

「……会ってないわ…え…じゃあ…」

 

「こいつ、この暗闇の中…ずっと寮のどっかに一人で隠れてたんだよ…」

 

マジで何なんだこいつ…怖くねぇのか…?

 

「えっと…正直私ですらここ怖いんだけど…」

 

「……龍田の身体借りたのはそれがメインの理由か?」

 

「その…ごめんなさい…どうしても私、ここを出たくて…一時的にここを離れる事は出来るけど、しばらくしたら何故かここに戻って来ちゃうの…そうでなくても普段はこうやって自分の意識を保ってる事も出来無いし…今日久しぶりに外に出られて…そしたらこの子が居るじゃない?同個体だから相性も良さそうだし、もしかしたら…この子を経由したら外に出られないかと思って…」

 

幽霊は基本、自分の死んだ場所に縛られると聞く…こいつは多分寮で死んで、元の艦娘寮は物理的に消滅してるからここに縛られたのかねぇ…つっても龍田は普通にここの所属で、天龍もここに居る以上今の所『外』に出る理由も無い筈なんだが…『龍田』の記憶が読めてる癖にどうしたらその結論に行き着くんだか…まぁ、それだけ切羽詰まってたって事か…

 

「謝罪なら俺じゃなくて『龍田』にするんだな「あの…私、どうしたら良いんですかね?」さっき入って来いって言ったろ…良いから早く入れ…龍田、こいつに聞かれても良いよな?」

 

「ええ…別に構わないけど…」

 

「ちなみに、お前にとってもメリットが有ると思うぞ?」

 

「え…?どうして…?」

 

「お前はウチを内偵してたんだろ?ただ、最期は直属の上司にすら何も伝えられずに死んだ…違うか?」

 

「ええ…そうよ…」

 

「なら、多分それがお前の未練だ。自分が最期に見たものを一人でも多くの奴に伝える事でお前は満足して成仏する…要はこっから出られるって事だ…」

 

「そうなのかしら「ああ」……」

 

もちろん、それが理由じゃない可能性は有る…ただこいつは明らかに何が自分の未練なのか気付いてる様子がねぇ…幽霊が成仏出来無い原因は大抵は場所よりも自分の未練のせいらしいとは良く言われる…で、だったらその未練をどうにか出来れば良い訳だ…

 

…とは言え、それくらい今の龍田並に自意識が残ってるなら分かる筈だ…にも関わらずここに囚われたままなのは…その未練を物理的に晴らす方法が無いか、未練の理由そのものが分からないかのどちらかだろう…そしてこいつの場合、やはり後者の様に思える…

 

わざわざそれを探してやる義理はさすがに無いし、幽霊ってのは本人にその気が無くても居るだけでそれ相応の悪影響が有るものだ…正直さっさと消えて貰いたい…居着かれて悪霊化なんてされるのは以ての外だしな…

 

だから、言いくるめちまえば話は早いって訳だ……罪悪感は有るがな…

 

「じゃ、話して貰おうか…赤城、何で俺を付けてたのかは知らねぇが…ここまで来て帰れるなんて思ってねぇよな?」

 

「……仕方無いですね、分かりました…」

 

……まぁ、どうせこいつは俺にちょっかいを出しに来たんだろうとは思うけどな…多分、いざやろうとしたら龍田がやって来て慌てて隠れたとかそんな所だろう…ホントに訳分かんねぇ奴だぜ…

 

 

 

 

 

「おい!叢雲!」

 

「叢雲ちゃん!起きて!」

 

「叢雲!返事をして!」

 

「……」

 

現在三人が声を掛けてるが叢雲が起きて来る様子は無し…やれやれ…傍から見ると滑稽な光景だな…

 

「なぁ?」

 

「「「何(だよ)?」」」

 

「正直、こんな事続けても無駄な気がするんだが?」

 

「貴方がやれって「いや、提案したのはお前じゃねぇか…龍田」そうだけど…」

 

「てか、忘れてた俺が言うのもなんだけどよ…龍田?」

 

「何かしら?」

 

「…槍、出せるだろ?」

 

「あ…」

 

声を掛けて起きて来ない以上、身体に何らかの刺激を加えるべきだ…とは言え、叢雲の身体が有る所まで物理的に距離が有るせいでそれは出来無い筈だった…ただ、身体に触れるだけで良いなら実はちゃんと方法が有ったのだ…

 

「お前の槍ならあの隙間から伸ばせば叢雲まで届く…石突きの部分で叢雲の身体を突け…石突きならそれ程怪我はしない筈だぜ?」

 

「…それ、もっと早く言えなかったわけ?」

 

まぁ、文句言いたい気持ちは分からなくも無い…さっき時計確認したらあれから既に一時間が経過してたからな(俺の時計が正確なら、の話にはなるが…)

 

「忘れてたんだから仕方ねぇだろ…何にしても、帰らねぇんならやって貰うぞ。」

 

「……すっかり乗せられてたけど、そもそも私と天龍ちゃんの部屋はここに有るのよね。」

 

チッ…気付かれたか…

 

「まぁ、この状況で部屋に戻っても仕方無いわね…」

 

「分かってんじゃねぇか。」

 

実際、今の状況だと明らかにここに居る方が危険だからな…さっさと鎮守府に行った方が良い…とは言え、ここまで来て叢雲を放置なんてしたくねぇ…最も、それは龍田には関係の無い話にはなる…

 

「ハァ…そんな顔しなくても今更あの子放置して行かないわよ…」

 

「ん?」

 

「起こせば良いんでしょう、起こせば…」

 

「ああ、頼むわ。」

 

溜め息を吐きつつも龍田は艤装を展開…槍をドアの隙間に差し込んで行く…

 

「…って、見えないとさすがに無理よ…誰か中照らしてくれない?」

 

「ああ、オレがやる。」

 

天龍が中をロウソクで照らす…

 

「ありがとう…んー…あ、届いたわ。」

 

龍田が何度か槍を動かして叢雲の身体をつつく…

 

「叢雲ちゃん!」

 

「叢雲!おい!」

 

この作業…二人居れば問題無い、と言うよりそもそも俺と加賀に出来る事が何も無い…

 

「ああもう!全然起きてこないわ!」

 

「あー…焦んなって…良く見ろ、お前が突くのに合わせて…叢雲がちゃんと反応してるぞ。」

 

「うー…分かったわよ、もう少し続けてみる…」

 

「手持ち無沙汰ね…」

 

「待つしかねぇだろ…てか、ここは俺が見てるから…お前、後ろ気にしてくんねぇか?」

 

「後ろ?」

 

「忘れたのか、ここの後ろはトイレだぞ?」

 

「あ…」

 

正直天龍と龍田ですら忘れてるみたいだが…マジでさっきから俺は怖くて仕方ねぇ…あのトイレに背を向けてる事がな…

 

「何か変化が有ったら言え。」

 

「ええ…分かったわ。」

 

まぁ、仮に何か起こった所で俺はここから離れるつもりはねぇけどな…叢雲を放って逃げるつもりはねぇ。

 

「……ねぇ?」

 

「何だ…?」

 

「貴方はあの子の事…ずっと見て来たわよね…?」

 

「そうだな…つってもお前の方が付き合いは長いんじゃねぇのか?」

 

俺は向こうを向いた加賀に背を向けて会話を続ける…

 

「そうなんだけど…」

 

「歯切れが悪いな…何か有ったのか?」

 

「ちょっと…こっちを見てくれないかしら…?」

 

「どうし……あん?」

 

加賀が指差した先…それはトイレのドアの小窓…風呂にすら窓がねぇのに何でここには窓を付けてるのか謎なそれ…その向こうの空間…暗闇の中、薄らと何かが見える…ロウソクは今天龍が持ってるな…予備は…いや、ライターの火を点けた方が早いか…ポケットを探る…

 

「有った…ん…なっ…」

 

「やっぱり…」

 

ライターの火にトイレの中が照らされ、床に倒れている叢雲の姿が見えた…馬鹿な…じゃあ後ろに居る叢雲は誰だ…?

 

「待ちなさい…まだあっちが偽物とは決まってないわ…」

 

「っ…それもそうだな…」

 

今見てるのが偽物と言う可能性は当然有る訳だ…取り敢えず俺は一旦ライターの火を消した。

 

「中に入って…確認するしかねぇよな…」

 

「そうね…私が「いや、俺が行く」何言って…」

 

「何か有った時、お前なら俺を助けられる…」

 

「……分かったわ…気を付けて…」

 

俺は前に向かって歩く…そしてドアに手を掛けた…

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