傍受マニアの艦これ   作:三和

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「そのね、話す前にね…」

 

「ああ。」

 

「貴方が何処まで分かってるのか、そこを聞きたいんだけど…」

 

「「道理だな(ですね)」」

 

横の赤城と言葉がハモる…まぁ、こいつは俺の事を知ってるからな…

 

「仮にも内定調査をしてた奴だ、死んでその立場も関係無くなっても慎重になるのは当然だな…」

 

「それでその「赤城の事か?多分こいつもある程度知ってるから大丈夫だぞ?寧ろ『内側』に居た分、俺より詳しい筈だ」そうなの?」

 

「ええまぁ…最も、全て知ってる訳じゃないですけどね…」

 

……嘘付け、どうせ俺以上に色々掴んでるだろうに…とは、この場では当然言わない…こいつの立場上あまり自分の情報を口に出来無いのはさすがに分かるからな…

 

「…で、俺の知る事だったか?そうだな…俺はあの日…お前らの無線通信やら、色々聞く事が出来た…と言えば分かるか?」

 

「色々って…?」

 

「当時お前も仕掛けてただろう、盗聴器の音声含めてほぼ全部だ…てか、どうせ『龍田』の記憶からそこまで読み取れてるんだろう?」

 

「そうね…彼女の情報網について、私の口からは語れないけど…」

 

「言わなくても良い…仮に必要になったら、本人に直接聞くからな。」

 

「後「まだ何か前置きが有るのか?」その…私の上官についても…」

 

「あー…それも別に良い…」

 

どうせそいつは爺さんのお眼鏡に適って、今もまだ"上"に居るんだろうな…『どっち側』かは別にして…

 

「じゃ、私の知る事だったわね…と言っても、私は調査しろと言われただけで…具体的に何が起きてたかは分からないのよ…」

 

「盗聴器仕掛けておいてか?」

 

「そもそも気になってたんだけど、私たち以外にも調べてた人が居たの…?」

 

「『龍田』は知ってる筈だがな。成程…『龍田』もそこに確信は持てて無いのか…じゃあ俺からは詳しくは言えねぇ…ただ、居たとは言っておく…お前らと違ってここに居る赤城の様に『内側』で調べてた奴がな…」

 

「つまり…所属してたと…じゃあ「おっと…お前はもう死んでるとは言え、それ以上はやめろ…『龍田』の方にお前の記憶が残ったら面倒だ…」そうね…ごめんなさい…」

 

「良い、取り敢えずお前の知る事…いや、やっぱり初日の行動から聞くべきか…」

 

「あの…私あんまり時間が「お前の話一通り聞かないと俺も何とも言えない…聞きたいんだろ、俺の意見を?」そうね…」

 

ま、俺もこいつが自分の情報一通り語っただけで満足するとはさすがに思ってねぇ…ウチで何が起きてたのか、知りたい筈だ…

 

「細かい所は端折って良い、重要だと思う事だけ話せ。」

 

「分かったわ…えっと…」

 

 

 

 

 

改めて入ったトイレの中は何処か独特の空気だった…俺は一応振り向きドアを押す…特に問題無く開いた。俺は先ずは相変わらず騒いでいる二人に視線をやり、次にこっちを心配そうに見詰める加賀に頷いて見せる…

 

『頼むぞ?』

 

『ええ…気を付けてね?』

 

……別に俺は読心術の能力が有る訳じゃないが、あの時は不思議と加賀の言いたい事が伝わったし、恐らくこっちの考えも向こうに伝わってた筈だ…

 

「……」

 

ドアを閉め、加賀に背を向けてライターの火を点ける…その火に照らされて、トイレの真ん中にあっちと同じくうつ伏せに倒れている叢雲の姿が見える……やっぱり見てるだけじゃ判断出来ねぇな…

 

「行くか…」

 

敢えて口に出す…そうでもしないとこのまま足を動かすのも難しい…くそっ…マジで怖ぇ…

 

「叢雲…」

 

歩きながら声を掛ける…あの二人の騒ぐ声はかなり小さく響いて来る…俺の方は喉に負担を掛けちまったからあまりデカい声は出せねぇが、この分だと叢雲にもちゃんと届く筈だ…

 

「お前なのか…?」

 

ビビっちまってるせいか歩みは遅い…高々数メートルも無い距離が中々詰められない…

 

「頼む…返事をしてくれ…!」

 

声に焦りが乗る…いや、ビビってるせいかも知れないが…

 

「……」

 

歩幅は狭くなっちまってるが…それでもせいぜい後三歩程度…それで…俺は叢雲に触れられる…!

 

「叢雲…」

 

倒れた叢雲を見下ろす…もう俺の真下だ…このまま屈むだけで、俺はこいつの顔の確認が出来る…まぁ、顔を見ただけで分かるとも思えないんだがな…ここまで本人と変わらないレベルだと、当然顔も同じと考えるべきだ…

 

 

……そんな事を考えながらもその場に座る…うつ伏せは不味いし、顔を見るならこいつをひっくり返さないとならねぇ…しゃがんだ状態じゃ、力が入らん…叢雲の肩に触れる…!

 

「っ…」

 

思ったより冷たい肩に一度手を引っ込める…俺の印象から言えば、基本的に艦娘は人間とほとんど変わらん…増してや毎回の様に俺の布団に入って来る叢雲の体温がどれくらいかは分かる…最も、ここは寒い…多少冷えていても、それが偽物の証拠にはならねぇ…俺はもう一度肩に触れる…冷えてはいるが、取り敢えず人間のソレだ…触れていた肩に少し力を込め、俺はソイツをひっくり返す…

 

「っ…叢雲…」

 

そこに有ったのは見慣れてしまった寝顔…こいつは俺と一緒に居ようと毎回の様に魘される…だから、デフォルトでこんな顰め顔で寝ている…今、ハッキリと分かった…こいつは叢雲だ…俺の知る…

 

「叢雲!」

 

俺は叢雲の身体を揺さぶった…もうあっちの事なんてどうでも良かった…叢雲はここに居る…!

 

「っ…」

 

「!…反応した…!」

 

叢雲の息遣いが変わる…身体も少し小刻みに震えた…

 

「こんな所で寝るんじゃねぇ!早く目を覚ませ!」

 

……今思うとコレは俺の黒歴史だったりする…とは言え、叢雲からは何度も感謝されたし…コレが俺に好意を抱く切っ掛けになったとか言われたら…もう何も言えねぇよな…

 

「ん…」

 

「っ…取り敢えずここを出るぞ…」

 

俺は叢雲を抱き、立ち上がる…思わず怒鳴っちまったが、何もわざわざここで起こす必要も無い…叢雲の体温は明らかに下がってるし、衰弱も有りそうだ…このまま鎮守府へ向かう…

 

「開けろ加賀!こいつは叢雲だ!」

 

俺は振り向き、その場でもう一度叫んだ…加賀が慌ててこっちに向かって走って来る…とにかくもうこんな所からはおさらばだ…ん?

 

「安心した顔しやがって…」

 

ふと下を見れば、顰め顔だった叢雲の顔は穏やかになっている…ハァ…ホントに何処までも手の掛かるお姫様だな…

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