「当時私たちはここの艦娘の教導で派遣されたの…もちろん、表向きの理由だけどね…」
「…で、いざ行ってみたら…空母や戦艦は元より潜水艦すらほとんど居らず…居たのは駆逐艦ばかりだった……違うか?」
「今改めて思いましたけど、良く殺されませんでしたね貴方?」
つい龍田の言葉を先読みして言ってみたら、横から不穏過ぎる言葉が飛んで来る…ま、実際俺もそう思うが。
「無線と盗聴器…そのどちらからも子供の声ばかりが聞こえて来る時点で予想出来る話だろ…」
後は最初に叢雲に会った時、あいつから聞いた話で大体当たりを着けた…ウチにはそもそも駆逐艦以外の艦娘がほぼ居なかったんだと…
「話を続けるけど…ええ、その通りよ…私も行くまで状況まるで知らなくて…そんな任務は初めてじゃなかったんだけど…さすがに、面食らったわ…」
「子供の相手は苦手だったのか?」
「そうでも無いけど…そりゃ戸惑うわよ…まさか所属艦娘はほぼ駆逐艦のみで…おまけに彼女たちは明らかに遠征どころか、演習の経験すらほぼゼロ…どう見ても真面な実戦経験の無いただの子供…と言うか、本当にただの子供だったのよね…」
当時の状況を…俺はきちんと叢雲から説明された覚えは無い…当初それは話す必要が無いと思ってるか、あるいは俺を信用出来無いのだと思っていた…ただ、あいつと長く接して行く内に…俺はそれは違うのでは無いのかと考え始めた。即ち…言う必要が無いのでは無く、はたまた俺を信用出来無かった訳でも無い…叢雲は当時の状況に関して、記憶の欠損が有るのでは無いか…俺はそう考えていた…
「どうせ真面目な話が出来たのは加賀だけだったんだろ?」
「う~ん…叢雲ちゃんも秘書艦を任されるだけあって戦術方面についても話は出来たんだけど…何か、聞いてるんだか聞いてないんだか…とにかくどうにも頼りない印象だったのよね…かと言って、加賀さんも別の鎮守府に派遣される事になってさっさと向こうに行っちゃうし…私たち皆、途方に暮れたわ…」
そこで龍田が一息吐く…もう一回茶でも出してやるべきだったか…
「…鎮守府の内情を調べようにも居るのは子供ばかりで難しい話はほとんど通じないし、しっかりしてそうな叢雲ちゃんも時折何か、様子は可笑しくなるし…表向きの業務をこなそうにも、必然的に隊の構成の大半が駆逐艦になる…と言うか、仮にも彼女たちだって艦の生まれ変わりの筈なのに全くそんな印象が感じられない…本当に何も知らない子供たちばかり…教えようにも何を教えれば良いのか…」
叢雲に聞いても無駄なんだろうが、加賀には当時の事を聞きたくなったな…明日にでも問い質したい所だが…正直、面倒事になりそうな気がする…保留にしとくか…
「俺の前任…当時の提督の印象は?」
「……まぁ、優しい人だったんだとは思うわよ?駆逐艦の子たちにいつも囲まれてたし…ただ…」
「ただ?」
「正直、軍人としてはどうか…って感じの人だったのよね…書類仕事してる形跡は無いし、してる事と言えば電話先の上司にペコペコしてた印象しか無いわ…挙句の果てに、自分の所の子たちには堂々とした口調で話す癖に、外から来た私たちには顔色伺って話すのよ…ふぅ…そうね、軍人としてもそうだけど…人としても決して好きになれない人だったわね…」
「ふむ…と、ちょっと待て…茶でも淹れてやる…」
「あら、良いのよ?」
「違ぇよ…俺が喉乾いたんだよ「私が淹れましょうか?」…お前だと何か盛りそうだから嫌だ。」
「酷いです…」
「……正直普通にキモいから、泣き真似やめろ。」
「え~…もう少し乗って来て下さいよ~」
「えっと…仲良いのね…?」
「ハァ…ただの腐れ縁だよ…」