「お前か?ここの提督は?」
「何だ爺さん?…見ての通り俺は忙しい…何か用が有るなら後に…!…ようこそ…執務室にご案内しますよ…」
あの日…あの爺さんは突然やって来た…
「荒れておるの…」
「申し訳ありません…生憎人手が足りないもので…」
「…早く人員を回すよう伝えておこう…」
そう言うと爺さんは近くに転がっていた椅子を起こすと埃を払い、腰掛けた…
「…お前も早く座らんか。」
「はい…それで…この様な場所にどう言ったご用件で…?」
「無理をしておるな…敬語を使いづらいなら言葉を崩して構わん。」
「…そうすか。で、こんな汚い所に何の用なんだ、元帥の爺さん?…さっきも言った通り俺は忙しいんだ…手短に話してくれ。」
「…何故元民間人のお前が儂を知って…いや、言わずとも分かる…まだ出回っておったのか…全て回収した筈なのじゃがな…」
「…現物ではなくデジタル化したモンの上に全部は聞けてないがな…俺らの様な奴の間でアンタの事を知らない奴は居ない。アンタは生きた伝説だ…」
…深海棲艦がこの世界に突如出現し、まだ艦娘が現れる前…その頃はまだ人間は当然自分達が前線に出て戦っていた…深海棲艦に既存兵器はほとんど効果が無く、大量の犠牲が出た…当時の彼ないし、彼女は皆今現在も英霊として祀られている…そして…
「…陸軍出身でありながら後に海軍に転属。…既存兵器は効かないと言われる中、既存兵器で確かに結果を出し、且つ今も生存し、軍に所属してるなんて化け物はアンタだけだ…」
俺はこの爺さんを知っている…大戦時の音声データや映像データは最初の敗戦の最中大半が外部に流れた…その中の一部を俺は閲覧する機会が有った…
「俺は個人的にアンタのファンでもある…出来ればこの機会にゆっくり話をしたい所だが…さっきも言った通り俺は非常に忙しい…海軍が俺にこんな壊滅した鎮守府の提督業を僅かの人員と共に押し付けたせいでな。」
「…早急に人員を回す…後何か欲しいものはあるか?…物資以外でな。」
……人を増やす以上、必要物資が増えるのは分かってるから言わなくて良いと言う意味か。
「…なら、海軍が俺の所から押収した無線機材だ。アレをこっちに戻せ。」
「…アレはどうやら最新の機材では無い様だったが…本当にアレで良いのか?」
「余程古い物で無い限り扱い慣れた物の方が実戦では最良だろ?」
「…フン…若造が一端の口を利きおる…分かった。それも儂の方で何とかしておく…後はあるか?」
「今は無い。」
「…では、儂は帰るとしよう…落ち着いた頃にまた来る…」
「次に来る時は連絡しろ。酒を用意しておく…退屈はさせない…アンタの話なら一晩中話しても語り尽くせない自信があるからな。」
「……楽しみにしておこう。…囲碁は出来るか?」
「…出来なくはないが…アンタとは現実の戦争の話をしたいね…。」
「…フッ…じゃあな…」