「そもそも納得行かない事が有るんだけど…」
「何だ?」
「…深海棲艦化したからって、いきなり敵味方ひっくり返るものかしら…?」
…こいつ…真実を知ってるって言っても、実際にその状況を見た訳じゃねぇのか…
「先ず…鎮守府にいた面子は大半が幼児退行して…あるいは、普通に記憶障害も起こしてそうだな……何が原因だと思う?」
「それは…当然、深海棲艦化した事じゃないの…?」
「…要するにだな、深海棲艦化すると…記憶に齟齬が発生すると思ってるのさ…つか、表面上周囲には分からなくても…自分がバケモノに変わると分かってしまったら…そりゃまともじゃいられねぇわな?」
「遠回し過ぎるわ…結局、何が起こったって言うの…?」
「全員、深海棲艦化する可能性は有った…ただ、全員その理解を拒み、且つ…現実を否定した…その結果が、お前の見た普通の子供にしか見えない艦娘って訳だ……見た目、駆逐艦なのが幸いだったな…大半がパッと見は子供だから、そこまで悲惨な状況じゃなかっただろうよ…」
「……」
「怒るなよ、これでお前の様な巡洋艦や…それこそ空母に戦艦なんて事になったら…それこそ地獄の光景だった筈だぜ?」
「…そうね、確かに私たちみたいのが子供の様に振舞ってたら「いや、もっと最悪だよ」え?」
「元が精神が子供に近い駆逐艦だから…まだ幼児退行程度で済んだと俺は思ってる…それに、さっきも言ったろ…まだ御しやすい、ってな。」
「分からないわ、何が言いたいの?」
「お前らの方が軍人としての意識は間違い無く強い…だが、自分が敵で有る深海棲艦に成ってしまうなんて現実は例え、お前らでも受け入れ難いだろ?」
「…そうね、事実としては知ってたけど…確かに実際に自分の身体がそうなり始めたら…普通ではいられないかもね…」
「自傷とかならまだ可愛いもんだ…と言うか、言い方は悪いが…どうせ戻る方法が無いなら、そこの提督としては…いっそ自分で死んでくれた方がまだ楽…そう考えた方がそいつの気持ちも落ち着くさ…ただ、問題は…その理不尽と言える状況に対しての不満を自分では無く…他者にぶつける場合だ…」
「他者に…」
「自分が危機に追い込まれた時…その不満を自分自身だけで収められる奴ってのは、そう多くねぇ筈だ…この場合は、他の艦娘に危害を加えたり…何なら、作戦を立案した提督を殺しに掛かるんじゃねぇか?」
「…でも、私たちは基本的に人間に攻撃は「それは理性が正常に働いてる場合だ、そうでないなら…そんな縛りは有って無い様なものだと思わねぇか?」……そうかもね…」
「…てか脱線したな…ま、要は…全員まともじゃねぇんだ…つまり、ついさっき談笑してた相手だとしてもいきなり殺しに掛かる可能性は有るって事だ…どっちが先に手を出したかは別にしてな。」
「……」
「納得しろとは言わねぇ…これが真実じゃねぇ可能性も有るかんな…」
「……そう願いたいわね…」
「俺も寧ろ外れて欲しいと思うぜ…で、もう良いか?」
「そうね…取り敢えず、この子の身体は返すわ…あ、一つ言わせてくれる?」
「何だ?」
「……私が出たら、そのままここを出た方が良いわ…」
「…忠告感謝するぜ。」
ま、さすがに赤城が戻るまで出る気はねぇがな…
「それじゃあ、ありがとう…後、ごめんなさい…」
「良いからさっさと行きな。」
「ええ…じゃあね?」
「おう……と。たくっ…」
意識を失い、支えを失った様に急に倒れ込む『龍田』を受け止める…やれやれ…取り敢えず赤城が戻って来たら鎮守府に運んで貰うか…