「さて…あいつが戻って来たら、さっさとこっから出……ハァ、またか…」
俺は取り敢えず龍田を床に寝かせ、入り口のドアに向かう…足を止め、ドアに向かって声を掛けた。
「あのな…分かるって言ってんだろ。」
まぁ、今回もわざと分かる様にしてるんだろうけどな…
「…あはは…いやぁ、このまま気付かれなかったらホントどうしようかと…」
ドアが向こうから開けられ、そこには赤城が…って…
「テメェ…それ俺のタバコじゃねぇか…」
「あ、あはは…い、良いじゃないですか…一本くらい…」
その口元にはタバコが一本…そして、その手に持ってる箱を見るにどう見ても俺の…
「つか、鎮守府まで戻ったにしてはいくら何でも早すぎるな…あ、お前…初めから一箱くすねてやがったな…?」
「…いやぁ、バレました?」
「このクソ女…だったら持ってるって言えよ…」
「だっ、だって…聞かれなかったですしぃ…」
クソが…初めからコイツが持ってるって言ってれば、素面であんな話しなくて済んだのによ…!
「ハァ…まぁ良い…おら、寄越せ…違う、箱だ…お前の吸ってるやつは要らん…とにかく、とっとと返せ。」
「……その反応はさすがに傷付きますよ?」
赤城が口から自分の吸ってるタバコを引っこ抜いたのを見て、すぐに意図を悟る…やれやれ…赤城が箱を投げ渡して来たのをキャッチ…一本抜いて咥え、火を着ける…
「ふぅ……で、どうせ話聞いてたんだろ?」
「…まぁ、途中からだったりはしますけどね…」
「?…ま、良いわ…なら、状況は分かってるだろ?龍田を運んでくれよ。」
「……まぁ、それぐらいは…やっても良いですけどぉ…」
赤城の歯切れが悪い……何故か、ものすご~く…嫌な予感がする…
「見返りが欲しいって訳じゃ無さそうだな…」
「…まぁ、この状況で私もそんな事言いません…と言うか、こっちからあからさまに色々要求した事無い筈なんですけど…貴方、一体私の事…どんな奴だと思ってるんですか?」
「さぁな……で、何が問題だ?言ってみろ?」
「…じゃ、言いますけど…その…ここから出られません…」
「あ?」
「だから…この寮の入り口のドアが開かないんです…それで、どうしようかお二人と相談しようかと思って戻って来たら…取り込み中の様だったので外で待ってたんですよ…」
……正直、赤城の言ってる事が理解しきれない…
「開かないって…あのドアには鍵も付いてねぇし、さっきは普通に開いたんだぞ?」
「ま、それは私も分かってるんですけどね…でも、本当に開かないんですよ。」
……この寮に関して良い思い出はハッキリ言って無い…とは言え、経験が有るお陰か…俺は特に狼狽えたりはとかせず、頭もフル回転して行く……そして。
「…最悪だ、よりにもよってお前と二人きりの時に閉じ込められるなんてな…」
思わず天を仰ぐポーズを取る…嫌だ、コイツと二人きりでここに居るのはマジで嫌だ…
「ちょ……本当に酷くないですか…?」
「そう言う事は、普段の行い改めてから言いな。」
ハァ…ま、こいつも一応艦娘…役には立つか…
「俺も暇じゃねぇ…夜明けまでには外に出るぞ……手を貸せ。」
「…ふぅ…私も、明日には戻らないといけないですから…もちろん協力しますよ。」
「じゃ、貸し借りは無しって事で良いな?」
「そこまで念押しします?」
「お前に借り作りたくねぇんだよ。」
ハァ…何でこいつと一緒……いや…
「…龍田を起こすか…今回こいつにとっては完全にとばっちりだが、こいつにも動いて貰わないとなんねぇ。」
「じゃ、私が起こしますよ。」
「……寝惚けて抱き着いて来るかも知れないから、気を付けろよ?」
「え?」
「こいつの最後の記憶は多分…天龍の寝てる部屋で床に就いた所で止まってるからな…」
正確には…そう思い込んでる可能性が高い、だ…
「……あの二人って、そんな仲なんですか?」
「いや…龍田が一方的に絡んでるだけだよ……つか、早く起こしてくれ…」
「え~…そんなの聞いたら普通に嫌なんですけど…」
「俺がやったら、最悪そのまま背骨へし折られるからな…」
「うへぇ…このまま寝かしておくんじゃ駄目ですか?」
「駄目だ…早く起こせ。」
「ハァ…抱き着いて来たら何とか止めてくださいよ?私だって、そんな力で抱き着かれたら最悪死んじゃいますからね?」
「……ま、善処はするさ。…ほら、さっさと起こせ。」
「貧乏くじですよ、もう…」
赤城が龍田の所まで来たのを確認してから、俺は入れ違いに部屋のドアの方まで向かう…
「あの…逃げようとしてません?」
「気の所為だ、良いから早く起こせ。」
「……ちゃんと居てくださいよ?」
赤城が龍田の身体を揺さぶる…もう、ドアノブに手は掛けてる…
「龍田さん、起きて「天龍ちゃん!」ぎゃああああ!?」
後ろで赤城の悲鳴が聞こえた瞬間、俺は部屋の外に出た…そのまま後ろ手にドアを閉める…
『ちょ!?助け…ぎぇぇぇぇ!?』
「…ふぅ……ま、あいつも艦娘だ…そう簡単には死なねぇだろ…」
そもそも、寝惚けて全力で抱き着いてる艦娘を落ち着かせるなんて人間の俺には出来ねぇっての。……ドアの向こうからとても女の口から出てるとは思えない悲鳴を聞きつつ…俺は息を吸い、吐く…ふぅ……さて、こいつを吸い終わったら中に入るかね…さすがに、その頃ならあいつも目覚ましてんだろ…