「ところで、さっきから思ってたんですけど「今度は何だ?」……」
つい、赤城の言葉を遮る様に声を出してしまったが…思ったより低い声が出て、俺の方も少し困惑する…
「……えっと、何か気に障ったなら…取り敢えずやめますけど…?」
……チッ、何にしても…これはさすがに俺が悪いか…
「…いや、すまん…気になる気になる事が有るならどんどん言ってくれや…こっちもこの状況を打破出来る可能性有るならどんな事でも歓迎するぜ?」
「……」
「いや、口に出しといて黙んなよ「そりゃ黙るでしょ?」あん?」
「貴方がこの人に苦手意識を持っているのは、普段この人とどんな付き合いをしてるか知らない私の目から見ても明らかよ…今、貴方は素直に謝った…確かにさっきの貴方の態度は良くなかったと思う…でも、ここまでの貴方の対応見てたら有り得ない行動よ?」
「…で?」
「少し休みましょう…自分では気付いてないみたいだけど…貴方は多分、焦ってるのよ。」
「……別に俺は疲れちゃいね「私は疲れてるなんて一言も言ってないわ…ただ焦ってる、と…言っただけなんだけど?」チッ…」
だから俺はこいつらと一緒に居るのは嫌なんだ…大抵、俺のペースが乱される…
「ハァ…分かったよ…休憩だ、休憩…」
俺はその場に座り込んだ…
ポケットから取り出したタバコの箱から一本引っこ抜…!
「…おいテメェら、無言で抜くんじゃねぇよ…」
俺が抜いた直後…横から伸びて来た二本の手が、それぞれ勝手に一本ずつ抜いていく…
「そんなケチケチしなくても良いじゃないですか。」
「そうそう…それぐらい広い心で許しなさいよ。」
「ふぅ…チッ…別に吸うなとは言ってねぇだろ…せめて何か一言ぐらい言えって、言ってんだよ。」
これしか箱が無いとは言え、吸う事に文句はねぇ…少なくとも今この場では水分は元より、糖分も一切摂れないのだ…何とか気紛らわせないと、さっきの俺みたいに煮詰まってイラついちまうのは確実なんだ…だから、そこに文句はねぇ……ただ、何も言わずに抜いて行くのは少しカチンと来るものは有る…
「ハァ……まぁ良い…あー…で?さっき何言おうとしたんだ、赤城?」
「え?……あー…そうでしたね…聞こうと思ってたんですよ…何故貴方が先頭に居るんですか?」
「あ?」
「そうね…私も気になってたのよ、何か起きても対応出来無い癖に…どうして貴方が前を歩くのかしら?」
「……あ。」
「その反応…まさか無意識だったんですか?」
「まぁ、そうだな…」
「馬鹿ね「うっせ。結局今の所何も起きてないんだから、良いだろうが」それは結果論でしょ…」
「取り敢えず次からは龍田さんを先頭にして、私が後ろの方が良いですね……いや、何ですかその顔…」
「龍田が横に居るなら良いが龍田一人を前にしてお前が俺の後ろ歩いてるのは身の危険を感じるから普通に嫌だ。」
「……早口且つ、ほとんどノンブレスで言い切ったわね…」
「一体どれだけ信用無いんですか、私…」
「自分の行い鑑みてから言えよな。」
「…と言うか仮に、本当に私が貴方に何かするとしても…普通に前に居る龍田さんに助けを求めれば良いのでは?横に居る時とそんなに変わらないと思いますけど…」
「そもそもお前が後ろって言うのが既にもう嫌なんだよ。」
「……いや、私って…この人に信用出来ないってハッキリ言われてるのにここまで頼りにされるって…貴女、本当にこの人に何したの?」
「…正直、私もここまで嫌われる心当たり無いんですが…だって……初対面の時の賭けの話が尾を引いてるとかじゃないですよね…?」
「気にしてねぇと言えば嘘にはなる……ただ、そこはメインの理由じゃねぇよ。」
「…じゃあ、何故…?」
「お前がとにかく胡散臭いからだな。」
「……え?…ちょっと待ってください…たったそれだけの理由で、私こんなに嫌われてるんですか!?」
「あー…納得したわ。」
「え!?」
「ふぅ……あのな、胡散臭いってのはここに居る龍田も同じだけどよ…コイツの場合はお前に比べるとまだ信頼は出来るんだよ。だが、お前に関しては信用も信頼も正直出来ねぇよ。」
「…いや、胡散臭いって言われて私が貴方を信頼する理由無いんだけど「過去の行動思い返してから言いな」…まぁ、分かるけど…」
「えっと…結局龍田さんと私の何が違うんですか…?」
「コイツの行動理念はハッキリしてる…コイツは、あくまで天龍の存在が全てにおいて優先される…だからこの状況で信頼出来るのさ…ここを出られないと天龍には会えない…そして、そもそも俺に何か有ったら最悪天龍から引き離されるからな……だから、コイツはこの場では俺を守らざるを得ない。」
「ま、そうね…私もこの場ではそれに専念するわ。」
「…で、赤城…お前は基本、面白ければ良いと思ってるだろ?そんな奴、どうやって信用しろと?テメェは恐らく、その方が面白いと思ったら土壇場で普通に俺たちを見捨てる……違うか?」
「……そんな事無いですよ?」
「思いっ切り間が有ったわね…」
「もうちょい隠す努力しろよな…」
「いやまぁ、性分なもんで…はい。」
コイツを後ろに立たせるのはマジで不安だし、本当は嫌だ…とは言え、面子が少ないから仕方ねぇ…ハァ…マジでこの場に天龍が居ればな…少しは安心出来んだが。
「ま、理由は分かりましたよ…ところで、もう一つ聞いても?」
「何だ?」
「……先程から、貴方は包帯を巻いてる右手を使おうとしてませんね?ロウソクは左手に持ち、ライターも左で着けてました…範囲が広かろうと貴方はさっき症状は軽いと言ってましたし、薬も塗ってこうして包帯を巻いた…それでも使わないのは、何故ですか?」
「俺の勝手「へぇ…じゃ、その包帯一度外して貰えませんか?」……何が言いてぇ?」
「どう言う意味ですか?…私はただ、良い機会なので…念の為、傷の具合を一度確認したいとそう言っただけなんですが?」
「そうね、万が一の場合は有るし……で、何でそんなに躊躇してるのかしら?」
「うるせぇよ…」
「痛むんですね?」
「……さぁな。」
症状そのものは、さっき見た時は確かに軽かった筈だ…素人目でもそれくらいは判断出来た…で、薬塗って包帯巻いたから空気に触れなくなったせいかその時は確かに痛みは消えた……少なくとも、龍田と赤城が目を覚まして部屋を出るまではそうだった…
「見せなさい「断る」…何故かしら?」
「そんなの気にしてる場合じゃねぇだろ。」
「それでは、何の為に休憩の時間取ったのか分かりませんよ?」
「…あのな…仮に悪化してたとしてもだ、火傷じゃ病院でも行かないとどうにもならねぇんだから確認したって無駄だろうが。」
これ以上の処置は不可能…そもそもガチな方の火傷なら皮膚移植しないといけないレベルになる…結局、この場ではどうしようも無いのだ…
「強情ね…」
「無駄な事を無駄と言って何が悪い……ふぅ…そろそろ行こうぜ?これ以上ダラダラしてても仕方ねぇ。」
俺は置いていたロウソクを掴んで床から立ち上がり、部屋のドアまで向か…っ…
「…何だ?」
龍田に手首を掴まれた事で、俺の歩みは止まった。
「だから…さっき言ったばかりなのに何故貴方が前なのかしら?」
「チッ…俺の勝手だ。」
「……色々言ってますけど、結局私を全く信用してない訳じゃないんですよね。」
「そうね。」
「あ?」
「…信用出来無い相手なら普通後ろには起きたくない…寧ろこの場合は…龍田さんを前にして、私が真ん中…そして、貴方が後ろに立つのが自然では?」
「危険度は多少高いかも知れないけど、それが一番妥当ね…後ろからなら見張れるし、背中から撃たれる事も無いもの。味方として信用出来無い相手と行動しないとならないなら結局、そうするものだと思うけど?」
「何が言いてぇんだ?」
「無意識か、確信的にか知らないけど…貴方は、寧ろ私たちを守ろうとしてるわね?」
「……そんなにお人好しじゃねぇよ。」
ただ、何となく気に入らないだけだ…つか…
「うるせぇよ…結局全部、お前らが軍人に見えねぇのが悪いんじゃねぇか。」
「「は?」」
「…若い女を前に出して、その後ろにただ隠れてる男とかクソだろうが。」
「「……」」
「何だよ?」
「……赤城さん、貴方が先頭でも良いかしら?」
「私はあまり信用されてないみたいだし、仕方有りませんね…結局二階と構造そのものは一緒なんですよね?なら、大丈夫です。」
「おい、何を勝手に決めて「今貴方に死なれたら困るのよ…天龍ちゃんに会えなくなっちゃうわ」あ?」
「私は貴方が簡単にこの世から居なくなったらつまらないんで…じゃ、行きましょうか?」
「おい!話聞け…おい!?」
持っていたロウソクが龍田に取り上げられ…赤城から空いた左手を掴まれ、そのまま引っ張られて歩く…クソッ、こいつら…ガキじゃねぇんだぞ俺は…