「あー…やっぱり点かないんですねぇ…」
赤城が壁のスイッチに触れて、何度かカチカチと弄っている…
「その下りはさっき、俺と龍田でやってんだよ…つか、廊下と部屋の電気が死んでるのにここだけ点いたら不自然だろ?良いからとっとと奥行けって…今度は龍田に槍でつつかせるぞ?」
「ちょっ…勘弁してくださいよ…」
「…いや、やらないからね?でも、早く奥行って貰えるかしら?唯一の明かりは今貴女が持ってるんだから、貴女が先進んでくれないとこっちは中の様子が確認出来無いのよ。」
…まぁ、俺のライター使う手も有るんだがな…
「ふぅ…分かってますよ、そんなに急かさないでください。」
赤城が奥に行き、赤城が手に持つロウソクの少々頼りない明かりに照らされて脱衣所の中が見えて来る…
「…パッと見、何も無い様ね…」
「……」
さっきと同じ、カビ臭さを感じつつ…俺は二人から離れ、取り敢えず並んでる棚の方まで向かう…棚の中から一つ、何となく目に付いたソレに向けて手を伸ばす…そのまま中に手を突っ込…!
「…何だ?」
いつの間にか横に居た龍田に手を掴まれていた…
「何だじゃないわよ…何しようとしてたの?」
「何ってそれは……ん?」
いや、俺は今何をしようとした…?ここは暗いとは言え、この棚には蓋やドアが付いてる訳でも無い…本当にただの棚で、朧気にしか見えないが…中が空なのも見れば分かった……一体何故、俺は中に手を突っ込んでまで確認しようとした…?
「棚の中を確認しようとした…まぁ、それは分かるわ…でも、見れば分かるわよね?この棚は空よ。どうして、手を入れようとしたの?」
「……分からん…」
本当に分からん…マジで、何で俺は手を突っ込もうとした…?
「えっと…大丈夫そうですか?」
声が聞こえ、そちらを見れば赤城もこっちに来ていた…
「大丈夫じゃないかも「おい、不吉な事言うんじゃねぇよ」…あのね、私…さっき貴方に声掛けたんだけど?」
「……は?」
声を掛けた…?
「どのタイミングで?」
「貴方が棚の方に向かおうとした時よ…同じ空間に居るとは言え、万が一の事が有るかも知れないから一人で行動しようとしない様に注意しようとして呼んだのに…貴方はそのまま無視して、棚の方にフラフラ歩いて行ったわ…」
「あ?」
「無視って言うか、聞こえてないって感じだったわね…貴方も声を掛けられた記憶は無いんでしょう?」
「ああ、棚に目を向けた時…お前に声を掛けられたのなんて全く気付かなかった…」
おいおい…マジかよ…
「…お二人共、ちょっとそこ退いて貰えます?」
「あ?…おう。」
理由は分からないが、取り敢えず俺と龍田は脇に退ける…赤城が俺の見ていた棚に近付き、中をロウソクで照らす…
「……龍田さん、一応この人止めて正解だったみたいですよ?」
「え?」
「その…中に画鋲が散らばってますので…」
「ちょっと待て…その棚だけか?」
「んー……ええ、少なくともこの一角だとそうみたいですね…暗かったのと、量もそう多い訳じゃないんで…照らしてみないと有るのも分からないですけど…あのまま下手に手を伸ばしてたら指に刺さってたかも知れませんねぇ…」
「……」
俺も中を覗き込むが…ロウソクに照らされた棚の中には確かに画鋲が散らばってやがる…
「チッ…ふざけやがって…見事にこっちの神経逆撫でして来やがるな…」
今こうしてタバコ吸ってなかったら、多分もっとイラついてたな…
「怒るのも良いけど…もう少し注意してくれない?こっちはヒヤヒヤものよ。」
「……悪かった。」
「まぁまぁ…この場でこの人責めても仕方無いでしょう…多分自覚の無い状態だったんでしょうし、何よりこれから先…私たち二人にも同じ様な事が起こるかも知れませんしね…」
「そうね…お互い、注意しないといけないみたいね…」
「ハァ…マジで気張ってないと駄目みたいだな。」
まぁ、あの頃は無かった変化だ…面白いと言えば面白いか……そうでも思わないとやってらんねぇな…