軽いハプニングは有ったが、特に大事には至らず(ま、仮にあのまま棚に手突っ込んでたところで指先を多少怪我するぐらいだろうし、そんなもんで今更ビビったりもしないが)
「……」
「イラついてるわね…」
「ハッ…やり口が一々みみっち過ぎんだよ…」
とは言え、俺の冷静さを失わせるのが目的なら効果は十分だ……少々短気過ぎるとは自分でも思うけどな。
「ま、結局お風呂場の方も異常無しですかね…」
脱衣所からドア開けて中確認しただけでは有るが…まぁ、わざわざ中に入る必要もねぇだろう…空間そのものは…中心に有る湯船が大部分を占めていて、後は周りに洗い場が有るだけ…別に露天が有る訳でもねぇから、見えてる空間に何も無ければそれ以上見る必要は……ん?
「あ…」
「今度は何…?」
「完全に忘れてたぜ…ボイラー室が有るじゃねぇか。」
「「あ…」」
至極当たり前の話になるが、普通湯を沸かさなければ風呂の意味は無い…当然、ここも一般向けの銭湯と同じく…風呂場にボイラー室が有る筈なのだ…
「思ったんだけど…ボイラー室を確認するのって初めてじゃない?」
「え…以前の見回りの時には見てないんですか…?」
「……俺の記憶通りなら…間違い無く、初めてだな。」
これまた当たり前だが、入浴時にボイラー室は誰かが必ず入る事になる筈だ…ただ、以前の見回りの時に入った事は確実に無い。
「…行くしかねぇな。」
「本気…?」
「忘れてたならしゃあねぇが、思い出しちまったんだから行くしかねぇだろ…」
「あの…靴履いてないんですけど…」
「玄関に有るスリッパでも借りれば良いだろ…てか、使ってないんだから濡れてる訳でも…チッ…面倒臭ぇ、俺が「ハイハイ、さっさと玄関行きましょうか」ケッ…」
龍田が手を掴もうとするのを腕を引っ込めて躱す……たくっ、ガキじゃねぇっての。
さっきも言ったが、ここは記録上はまだ数人の艦娘が住んでいる事になっている……まぁ、最近は鎮守府の誰かの部屋に泊まるみたいだからほとんど使用してねぇだろうが。
更に言えば、今はここを宿泊施設として解放している為…来客用のスリッパも充実している…
「つか、半ば自宅感覚で使ってる俺はまだしも…何でお前らスリッパ履いてねぇんだよ?」
「私はそもそもここ泊まった事無いんですから、ここのスリッパ使って良いのかも分かりませんよ…」
「龍田「私はほら…今日ここに来た時はその、私じゃなかったし」…そうだったな。」
「大体、自分用のスリッパはもうあっちに持って行ってるし…今更私が来客用のスリッパ使うのも変じゃない?」
「まぁ、確かに「と言うか、一つ気になる発言が有ったんですけど」…あん?」
「こんな危険な場所を、自宅感覚で使ってるってどう言う事ですか?」
「…良く分かんねぇが、何か落ち着くんだよなぁ…」
執務室の方に有る寝室だと…最近は頻度も減ったが…それでも未だに叢雲が何も言わずに人の布団入って来たりする時も有るから、どうにも落ち着かねぇんだよなぁ…
「まぁ、今はここを使ってる子もほとんど居ないし…本来なら貴方の勝手だけどね…」
「今は宿泊施設として解放してる上、使われてる私室には入ってねぇんだから別に良いだろ。」
「…いや、命と天秤に掛けてまでそこ優先するんですか?」
「そもそも良く夜に一人で入れるわよね…」
「…正直に言えば、今回も入った当初は特に怖いとは感じなかったんだよな…」
まぁ、確かに良く良く考えれば妙な話では有る…あれだけの騒ぎに巻き込まれた上、幽霊の目撃談こそ無くなっても…絶えず事故の起きてるこの場所に何で俺は通ってたんだかな……いや、今更だな…
「…今はどうでも良いだろ。」
「まぁ、そうですね…」
こんなのは今更議論しても仕方が無…いや、キリが無い…と言うか、この場でこれ以上考えるのはこっちの精神衛生上も悪い…
「ま、スリッパも履いた事だし…さっさと行こうぜ。」
取り敢えず今すべきなのはボイラー室の確認だ…後の事はそれが終わってからで良い…