龍田が歩き出し、取り敢えず俺も動こうとしたが…赤城がその場でしゃがみ込む…
「おい、そんな所に座るな。」
「…酷くないですか…?私の事、そんなに信用出来ませんか…?」
赤城が自分の膝に顔を埋めてブツブツと呟く……いくら胡散臭い奴とは言っても、ここまで落ち込んだ姿見せられると胃がキリキリと痛む様な気がして来る…
…ま、そうは言ってもだ…
「……」
「ッ…ヒッ!?…ちょ、何するんですか!?」
正直鬱陶しいのが本音だ…俺はさっさと復帰させる為に赤城の頭に向かって蹴りを入れる…反応はしたが、さすがにいきなり動けはしない様で…赤城は後ろに倒れ込む様に尻もちを着いた。
「ハァ…うっせ、こんな所でグダグダやってる場合じゃないのはお前だって分かってんだろ?」
「むっ…そりゃ分かりますけど、もう少し気にしてくれたって…」
まぁ、俺もさすがに本来なら…目の前で落ち込んでる女に向かってこんな事はしない。原因の一端は俺にも有るし、それなりに気も使って接するだろう…ただ…
「お前な、全く嘘でもないんだろうが…半分くらいは演技なんだろ?」
「…ありゃ、分かります?」
「腐れ縁とは言え、付き合いも長いからな…」
「…そうですか、でも…半分は傷付いてますからね?」
「…謝らねぇぞ。そうやって疑われるのはお前の日頃の行いのせいだからな?」
「…まぁ、分かりますけど…」
「理解したなら早く立て…ケツ濡れるぞ。」
「え…あ!?ちょっと!びしょ濡れじゃないですか!」
「知るか、お前が勝手に尻もち着いたんだろ?」
「貴方のせいじゃないですか!」
「ハァ…何を揉めてるのか知らないけど、赤城さん…先ずは早く立ったら?お尻、冷たいでしょ?」
「う…はい…あ~あ…」
立ち上がった赤城がお尻を押さえる…まぁ、笑えない事になってるだろうな…
「結構勢い良く行ったしな、背中も濡れてるんじゃないか?」
「ハァ…最悪です。」
「…ま、お前のお陰で床の水が無害だって分かったし…無駄な犠牲じゃねぇぞ。」
まぁ、時間が経ってから何か起きる可能性は有るが。
「ちょ、まさか…その為にあんな事を…?」
「さぁな。」
「ちょっと!答えてくださいよ!?」
「うっせえ、良いからとっとと行くぞ。」
…もちろん、さすがにそんな意図は無かったがな…正直、この場でわざわざ否定するのも面倒臭い。
「…で、お尻の方はどうなの?爛れたりとか、してない?」
「…取り敢えず、現状は冷たいだけで済んでます…一応無害では有った様で…まぁ…今は、かも知れませんけど…」
「……」
「…ンだよ。」
龍田がジト目を向けて来る…
「いや、この人がアレなのは分かったけど…さすがに女性に対してコレは無いんじゃないかと思ってね…」
「……ハァ…赤城、悪かった…」
前言を撤回する…何とも情けない話だが、こう言う時…男は女には勝てないと相場が決まってるからな…
「いえ、良いですけど…」
「何だ?」
「…いえ、貴方が私に謝るなんてどう言う風の吹き回しかと…」
「……」
正直…普通にその一言が出て来たコイツにイラッと来たが、この場では黙る事にする…
「着いたわね…」
「ああ…」
無駄に時間を使ったが、取り敢えずボイラー室らしきドアの前に辿り着いた…龍田がドアノブを掴む…
「鍵は?」
「…そもそも付いてる形跡そのものが無いわね…このままドアノブを回して、引っ張ればそのまま開きそうよ。」
「…良し、俺が開ける…」
龍田が横にズレ、俺はドアの前に立つ…
「…大丈夫よね「知らん」…いや、知らん、って…」
「中に入りもしないで危険かどうかの判断なんざ出来るかよ。」
「ま、確かにそうですね…」
俺はドアノブを掴んだ……特に抵抗は感じない。龍田の言う通り、このまま引けば開くだろう。
「…さっき確認した通りだ、中に入ったらドアを押さえておいてくれ……あ、忘れてた…ロウソク、寄越しな。」
「はい。」
龍田からロウソクを受け取る…確実に中は真っ暗だ…コイツが無いと中を調べられない……まぁ、俺のライター使う手も有るが…確実に心許無いしな…実際、ほんの僅かに見えれば良い方って所だろう。
「ッ…」
思いの外ビビってるのか、いつの間にか手に汗をかいており…少し手がヌメって、ドアノブから手が離れる…やれやれ…
「ホントに大丈夫…?」
「…ああ。」
ここまで来て怖いから嫌だなんて言うつもりは無い…俺は今度こそドアノブをしっかり掴み、引っ張る…先の予想通り何の抵抗も無く、ドアは開いて行った…